世界防衛クラブ

亜瑠真白

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秋の嵐

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「真希、来てくれ」
 数時間後、杏奈に呼ばれて救護室に戻った。
「いやぁ、すまなかったな真希」
 蘭はベッドの上で上体を起こし、真希に手をあげた。
「蘭さん……! よかったです!」
「それじゃあ、蘭も目が覚めたところで状況を説明してもらおうかの」
「ああ。真希と喫茶店で話していたらマナンが現れたんだ。店の中には他の客もいる。DAMからの応援は待てないと思い、自分に引き付けた。あとは真希に武器を持たせ、マナンのコアに私が誘導して刺した」
「よくもまあ、そんな無茶なことをするのぅ」
 そう言って杏奈は笑った。よかった、いつもの杏奈さんに戻ったみたいだ。
「真希となら上手くできると思ったんだ」
「蘭さん……」
 そんな風に思ってくれたことが嬉しかった。
「まあ想定外といえば、刺したときの痛みとマナン融合部位からの出血くらいか」
 その言葉を聞いて、杏奈はやれやれという表情をした。
「マナンは融合したらその人物の体の一部となる可能性が高いと、前から報告しておっただろうに。まあ、マナン融合中にマナンを破壊した唯一の人物じゃ。存分に調べさせてもらうぞ」
「お気の済むまでどうぞ」
 蘭はあきらめた様子だった。杏奈が真希の手元に目を向ける。
「真希、その大きな紙袋は何じゃ?」
「あ、これは……」
 真希は困ったように蘭を見る。
「真希のために戦闘服を作ったんだ。今回は機能性も十分だぞ」
 誇ったように蘭が言う。
「やれやれ、またそんなことをやっているのか……」
「杏奈もつるぎも朔も着てくれないからな。真希だけが頼みの綱なんだ」
 え、蘭さんの手作りだったの!? というか、私も着ないですよ!
「わしは着ているじゃろうが」
「だって羊の着ぐるみしか受け取ってくれないじゃないか! 他にもいろいろ作ったのに!」
「えっ、その着ぐるみも蘭さんが作ったんですか!?」
「もちろん。世界に一着だな」
「すごい……」
「そう思うなら是非着て見せてくれないか。戦闘でも使ってほしい! 怪我人からの頼みだ……!」
「えーっと……」
 返答に困っていると杏奈さんが助け船を出してくれた。
「まあ、今日はもう遅いし、今度の機会に頼んだらどうじゃ。服はわしが預かっておこう」
「仕方ない……そうしてもらおう」
 蘭さんは残念そうだったが、了承してくれた。今回は助かったけど、本部に置いてあるってことはいつまた頼まれるか……
「そうだ、蘭さん」
 大事なことを忘れていた。私は蘭さんに教えてあげないといけない。
「何だ?」
「私は蘭さんがDAMのために力を尽くしてきたことを知っています。より長くいる人からしたらなおさらです。だから不安に思う必要はないですよ」
 蘭さんはふっと笑った。
「そうか……ありがとう、真希」
 今日はそこで解散となった。

 翌日、真希が本部に来ると、『総監督が負傷した』という話題で持ちきりだった。
「真希! お前、蘭さんと一緒にいたんだろ! 状況を説明しろ!」
 つるぎと一緒にいた朔が真希を見つけて詰め寄ってくる。真希は一連の流れを説明した。
「なるほど……そういうことだったか。それは大変だったな。」
「私は大したことをしていないけど、蘭さんの決断力が凄かったっていうか……」
 意図的に自分を襲わせるってよく決断できるよな。それに、自分の体の一部になっているマナンを刺すなんて……まあ忘れていただけかもしれないけど。
「なんだか蘭さんらしいですね」
 つるぎがそう言うのも頷ける。朔は考え込むように顎に手を当てた。
「それにしても、蘭さんの近くにマナンが現れたのは偶然だったのか? 蘭さんは本部に住んでいてデパートの外に出ることはかなり少ない。……僕が以前マナンに狙われたように、今回は蘭さんを狙っていたとしたら?」
 信じたくはないが、その可能性を否定できない。もしそうだとしたらマナンは確実にDAMに近づいてきている。
 真希が考えていると、向こうから祐太郎達がやってきた。
「真希ちゃん、昨日は大変だったそうですね。僕達は別の場所で戦闘していたので……役に立てずすいません」
「そんな! それに昨日は総監督自ら対処していたので……」
 真希は祐太郎達にも昨日の状況を説明した。
「そうだったんですね」
 その時、本部にアラームが鳴り響いた。スタッフが私達のところに駆け寄ってくる。
「今回のマナンの対応について、神谷総監督から話があるそうです。皆さん、ついてきてください」
 私達は救護室に通された。蘭さんはベッドの上で上体を起こし、私達を迎えた。
「杏奈が寝てろってうるさくてな。こんな状態で失礼する。さて、今回現れたマナンのことだが、出現場所がこのデパートの前なんだ。しかも複数のマナンが検知されている」
 そんなすぐ近くに……! 私の知る中でこんなに近い出現は今までなかった。
「デパートの周辺は人が多い。すぐにでもマナンを破壊してもらいたいところだが、人混みの中で戦闘するとなるとかなり危険が伴う。スタッフに確認してもらったところ、マナンに誘導されて暴走しているような人物はいないみたいだ。それにしても一刻を争う事態だ。みんなの意見が聞きたい」
「つまり、人目につかないところにマナンを誘導できればいいってことですよね」
 祐太郎が言った。
「ああ。でも、今日は街主催のイベントをやっていて、このあたりに人が集まっているみたいなんだ。近場で人目のつかない場所を探すのは骨が折れるかもしれない」
「そうですか……」
 みんなが頭を悩ませる中、真希が手をあげた。
 これなら何とかなるかもしれない。
「神谷総監督、提案があります」

「なるほど……武器の効果でマナンを引き付けてこの本部に誘導する、か。ここまでマナンを引き込むことが出来れば一般人に被害を出す心配なく、戦闘に集中できる。しかし、マナンを倒すことが出来ずにDAMメンバーの誰かに融合でもしたら大きな被害を生むかもしれない。ハイリスク・ハイリターンの作戦だな。……うん、面白い」 
 蘭さんは私の提案に乗ってくれた。だけど朔は不安そうだった。
「しかし、剣を持って大勢の人の前に出て大丈夫でしょうか。通報されて止められる可能性もあります」
「そのことも考えています」
 そう言って真希は蘭に目配せした。蘭は真希の考えを察した。
「心配いらない。要するに、武器が違和感なく持てればいいのだろう。準備は出来ている」
 蘭にそう言われて朔は引き下がった。
「小野班はマナン襲来に備えて非戦闘員に避難の誘導を! 朔とつるぎは真希に同行しろ」
「ええ! 朔達も来るんですか!?」
 それはちょっと、恥ずかしいというか……
「当たり前だろ。真希は僕が近くにいないとマナンが見えないんだから。それにもしものことがあった時、つるぎがいたほうが安心だろ」
「そうだぞ、真希。真希は先に準備を、朔とつるぎは総監督室の棚から白い紙袋を持ってきてそれに着替えてくれ」
「……着替える?」
 朔、いまさら気づいても遅いぞ。作戦はもう実行されるのだから。

 昨日もらった戦乙女風衣装に着替え、朔とつるぎを待った。祐太郎達はスタッフ達に声をかけて避難を促している。
 この格好ならコスプレだと思って剣を持っていても怪しまれないんじゃないかなって思ったんだけど……知らない人に見られるのはまだいいとしても、朔やつるぎに見られるのは恥ずかしい!
 向こうから朔とつるぎがやってきた。つるぎは私と似たような戦乙女風の衣装。一方で朔は、
「あ、あんまりこっち見るな……」
 白いマントを羽織った騎士のような衣装だった。朔が恥ずかしがっている様子を見ると落ち着いてくるな。
「ほら! 早くいかないと!」
「分かってる!」
 そう言って朔は私の頭をグイっと引き寄せた。そして額を合わせる。
「大月班、行くぞ!」
 朔の合図で私達は走った。
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