世界防衛クラブ

亜瑠真白

文字の大きさ
39 / 40
一年前の私へ

2

しおりを挟む
 ゲームセンターを出るとさすがにお腹がもうペコペコだった。よし、ゲームセンターに行ったから、
「次はあのカフェに行こう!」
「はいはい。じゃああっちな」
 察したように朔が歩いていく。
 店に着くと朔が言った。
「この後も食べるからほどほどにしておけよ」
 蘭さんの呼び出した用件は食事だったか。
「じゃあ、少なめのやつねー……」
 メニューをめくると一際目を惹かれるページで手が止まった。
「……真希、お前さっき少なめって言ったよな」
 それはあの『アリス名物もくもくパンケーキ』のページだった。
「どこが少なめなんだ! 前回もそれで残してつるぎに食べてもらっただろ!」
「言った……言ったけど! だって美味しそうなんだもん!」
「はぁ……つるぎもなんか言ってやってくれよ」
 朔にそう言われ、つるぎは真希を見た。
「真希、それが一番食べたいんですか?」
「うん、これが一番食べたい! それに今日はほんっとにペコペコだから全部食べられると思う!」
 その答えを聞いてつるぎは朔を見た。
「真希もこう言っていますし、いいんじゃないですか」
「つるぎがそう言うならもういいよ……」
「やったぁ! すいませーん! 注文いいですかー!」
 真希はもくもくパンケーキ、朔とつるぎはアイスティーを注文した。

「おい、真希。今日は全部食べられるって言ってたよな」
「……はい。すいません」
 真希はパンケーキを六割食べたところでフォークを置いた。
「というか、前回よりも食べた量少なくないか?」
「いや……あの、空腹過ぎて逆にあんまり食べられなかったというか……すいません!」
「学習しない奴だ……」
 朔は頭を抱えた。
「つるぎぃ……」
 真希はつるぎを見る。
「残りは私が食べますよ。……まあ、こうなるとは思っていましたけどね」
「そんなぁ……」 
 つるぎにも呆れられていたのか……。そんなつるぎを朔が見る。
「ならどうして真希を止めなかったんだよ!」
「だって、せっかくだから食べたいものを食べて喜んでほしかったので」
 つるぎ……優しすぎる。
 つるぎが残りのパンケーキを食べ終わったところで朔がもういい時間だと言うので、私達は蘭さんの元へ向かった。

 朔とつるぎに連れてこられた先は、行きたくても行けなかったあのデパートだった。
「ここって……」
「ほら、行くぞ。みんなが待っている」
 下着屋はシャッターが半分降りていて、臨時休業という張り紙がしてあった。シャッターの隙間から入り、本部へと続く階段を下りる。
 すると、
「「「真希、誕生日おめでとう!」」」
  そう言ってクラッカーが鳴る。そこには蘭さんだけでなく、杏奈さん、祐太郎さん、柚葉ちゃん、寧々ちゃん、絵理さんの姿があった。
「みんな……!」
「マナン関連の仕事がようやく片付いて、みんなを集めたいと思ったんだ。ちょうど真希の誕生日が近いと知って、お祝いの会にしようと思ってな」
 そう言って蘭さんが笑った。
「ありがとうございます!」
「食べ物と飲み物を用意したから、好きに楽しんでくれ」
 本部の中は風船や花で飾り付けられていて、とても可愛らしい。それに奥のテーブルにはいろいろな料理が並べられていた。
「真希、久しぶりじゃのう」
 話しかけてきたのは杏奈さんだった。
「お久しぶりです。杏奈さんも蘭さんと一緒にテレビ出ていましたね」
「いやぁ、蘭だけで十分じゃと言ったのにマナンの研究者にも出てほしいと頼まれてのぅ。こっちはマナンの報告書をまとめるので大忙しじゃったというのに」
「確か、その報告書のおかげでマナン事件の再審が決まったんですよね。凄いです!」
「まあ、朔やつるぎの親も救えてよかったわい。……そういえば、のう、真希」
「なんですか?」
「わしと初めて会った時のこと、覚えておらんかのぅ。あれからわしはずぅっと待っておったのに」
「……何のことでしょうか」
 嫌な予感がする。杏奈さんは私の腕を引き寄せて耳元に口を寄せた。
「惚れた男の話じゃよ」
 やっぱりそういう……! 赤くなる私をよそに、杏奈さんは腕を離した。
「まあそういう話は他人がとやかく口出しするものでもないからのぅ。いい報告待っておるぞ」
 杏奈さんはひらひらと手を振って行ってしまった。なんかいつもからかわれている気がする……
「真希ちゃん。誕生日おめでとうございます」
 次に声をかけてきたのは祐太郎さんだった。
「ありがとうございます、祐太郎さん」
 祐太郎さんといえば、聞きたいことがあった。
「今日も女装して来たんですか?」
「そうそう、せっかく着替えてきたのに店がお休みになっていたので着替え損でした。まあ、帰りの手間が省けるんですけど……って、何で知っているんですか!」
 祐太郎さんは驚いたように私を見る。酔ってて覚えていなかったか。
「祐太郎さんが新潟の夜に教えてくれたんですよ。……黒髪ギャル、可愛かったです」
「やめてくださいぃ……」
 祐太郎さんは赤くなった顔を両手で押さえた。
「大丈夫ですよ。誰にも言っていませんから」
 いつか生で見せてもらいたいものだ。私は祐太郎さんと別れて歩き出した。
「真希ちゃん!」
 呼ばれて振り向くと、そこには絵理さんがいた。
「誕生日おめでとう。はい、これ! うちの商品からだけど誕生日プレゼント!」
 そう言って絵理さんは紙袋をくれた。うちの商品ってもしかして……下着ってこと!?
「あ、ありがとうございます!」
 いつも店を通りながら見ていたけど、絵理さんの店の下着って大人っぽいんだよな……
 紙袋の中を覗くとそこには可愛らしいパジャマが入っていた。
「うちのランジェリーはちょっとセクシーだからパジャマにしたの。でも、大人っぽいのに挑戦したくなったらいつでも来てね。私がおすすめ出してあげる。……その代わりと言ったらアレだけど、前に三人で着てた衣装の写真撮らせて!」
 三人で着てた衣装って、あの戦乙女のやつか!
「それはちょっと……!」
「ね! 一枚でいいから! お願い!」
「ごめんなさいー!」
 私は逃げるように絵理さんの元を去った。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...