もしも推し(女)にそっくりな男の子が隣に引っ越してきたら?

亜瑠真白

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友達に、なりたいな

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 僕は悩んでいた。授業で初めて隣の席になったクラスメイトに声をかけるかどうかを。
 今回の授業ではペアワークがあって、隣の彼と少し話した。人当たりが良くて、彼となら仲良くなれるんじゃないかって思った。といっても、授業に関することだけで個人的な話は何も。
 もう少しで授業が終わる。声をかけるチャンスは彼が支度をして席を離れるまでのわずかな時間。仲良くなりたい。そしてボッチ飯を回避したい…!
 授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
 勇気を出せ!先週、菜々子さんに特訓してもらったじゃないか!
「あの…!」
 僕が声をかけると隣の彼は振り向いた。
「何?」
 あ、だめだ。声がかけることばっかりに集中して何を話すか考えてなかった。
「えーっと…」
 菜々子さんはなんて言ってたっけ?先生の顔…?だめだ、緊張して何も浮かばない…
「おーい、飯食いに行こうぜー!」 
 その時、別のクラスメイトが彼に声をかけた。
「おう。」
 これ以上、彼を引き留めるのは悪いな。
「ごめん、何でもなかった…」
「そっか…またな。」
 彼はそう言って教室を出て行った。
 またなって言ってくれた。やっぱり彼はいい人だ。だめなのは上手くできない僕の方だ。
「はぁ…」
 自己嫌悪で沈んだ気持ちの中、一人で学食へ向かう。お昼時のため、席の大半が埋まっていた。
 どうしよう…購買でおにぎりでも買って外のベンチで食べようかな…いや、落ち込んだ時こそ好きなものを食べて元気を出した方がいい。よし、ちょっと奮発してカツカレーを食べよう。1人だから空いた席も見つけやすいし…なんて、寂しいけど。
 カツカレーを持って席を見渡すと、長机の角の席が1つ空いていた。そこに腰掛ける。
「いただきます。」
 カツカレーを一口。うん、美味しい。1人暮らしだと揚げ物を食べる機会が少ないから貴重だ。
 周りはガヤガヤといろんな声が混ざってにぎやかだ。みんなは何の話をしているんだろう。…楽しそうだな。僕だけが、一人だ。
「隣の席、いいですか?」
 声の方を向くと、料理のトレーを持った男子生徒がいた。いつの間にか僕の隣の席が空いていたらしい。
「ど、どうぞどうぞ!」
 僕がすすめると彼は隣の席に腰掛けた。彼も一人みたいだ。
「いただきます。」
 彼は両手を合わせた後、持ってきたラーメンを食べ始めた。
 誰かと一緒の時じゃなくても、いただきますって手を合わせる人って、なんかいいな。
 友達に、なりたいな。
「あの!」
「ん?」
 彼が振り向いた。
「いつも一人で食べていますか?」
 あー!何でそんなこと聞くの!?失礼でしょ!菜々子さんにも『最初はプライベートに踏み込むな』って言われてたのに!
「いやー、今日はたまたま友達が用事あって。」
「そ、そうですか…」
 ほらぁ、変な感じになっちゃったよ…彼とももう終わりだ。そう思った。
「俺、1年の佐藤亮介さとうりょうすけ。名前は?」
「僕も…!1年の、倉橋斗真、です。」
 嬉しい。嬉しくて緊張してうまく話せない自分が悔しい。
「同じ1年なんだしタメ口でいいよ。カツカレー、好きなの?」
「う、うん!ここの学食のメニューの中で一番好き!」
「そっか。俺選ぶのめんどくさくていっつもラーメンにしちゃうから今度食べてみよ。」
 そう言って亮介君はラーメンをすする。ラーメン好きなのかな。もしかしたら他の麺類も好きかも。
「もし麺類が好きなら、かき揚げうどんもおすすめ。頼んだら揚げたてのかき揚げ、出してくれるから。」
「おう、そうなんだ。サンキューな。」
 亮介君は僕に笑いかけた。
「ううん…」
「なあ、斗真。」
「なに?」
「お前、いつも一人で食べてるの?」
「う、うん…」
「じゃあ、明日も俺と一緒に食べるか。」
「え?」
 いいの?って言いかけたけど、別の考えがよぎった。
「その…いつも友達と食べてるんじゃないの?」
 彼は大きく手を振った。
「あー、いいんだ。あいつらは部活が一緒だからいつでも話せるし。斗真はどうしたいんだ?」
 そっか、そうなんだ…なら、僕は…
「一緒に食べたい!」
「よし、じゃあ決まりだな。」
 僕たちは食器を片付け、学食を出た。
「そろそろ教室戻るか。」
 そう言って亮介君は大きく伸びをした。
「そうだね。じゃあ…」
「「あっち(だな)。」」
 僕たちは真逆の方向を指さした。
「あれ!?亮介君…工学部じゃないの?」
「おう、俺は農学部だけど。クラスじゃ見たことない顔だと思ったら、学部が違ったのか。」
「そんな…」
 教室でも話せるかなってちょっと期待してたから残念。
「まあ、また明日。ここで待ち合わせな。」
「うん!」
 でもいいんだ。今日は嬉しい日。大学で初めて友達が出来た日だから。
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