もしも推し(女)にそっくりな男の子が隣に引っ越してきたら?

亜瑠真白

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初心者クエスト その2

可愛い!最高!大好き!

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「ほんっと尊い!可愛い!最高!大好き!」
 言いたいことを言い切って一息つく。そして、我に返った。
 やばい。感情が爆発してしまった。いつもは1人で見ているから誰かに話せることが嬉しくて、つい。…さすがに引いちゃったかな。
 恐る恐る斗真君の方を伺う。
「ふっ…あはは。」
 斗真君は笑い出した。
「え?」
「あ、すいません。菜々子さんがあまりにも楽しそうで、僕も何だか楽しくなっちゃいました。」
「引いて…ないの?」
「引くなんて、そんな!菜々子さんが好きなものの話をしている姿、いいなって僕は思います。」
 そう言って斗真君は目を伏せた。
「僕にもそんな風に夢中になれるものが出来たらいいなぁ…」
「出来るよ!」
 私は思わずそう言った。
「絶対出来る!私が保証する!」
 斗真君っていつも少し自信がなさそうで、「そんなことないよ。もっと自信もっていいんだよ。」って励ましたくなる。
「…って根拠はないんだけどね。」
 熱くなってしまった自分が恥ずかしくて、私は頭を掻いた。
「でも、菜々子さんが言うなら何だかそんな気がします。」
 そう言って斗真君は微笑んだ。
「そう言えば、このお話に出てくる学科って他にどんなものがあるんですか?」
「えっとね、まずらむねちゃん達がいる農業科でしょ。それに、商業科、芸術科、特進科、家庭科、外国語科、それに工業科だよ。」
「僕、工学部なので工業科のアイドルってちょっと興味あります。」
「確かに!工業科のアイドルは『Ω《オーム》』っていって、2人組なんだ。アニメでも2人の息ピッタリなところが面白くてねー。確か4話だったかな…」
「観てみたいです。」
 斗真君が興味を示してくれたことが嬉しくて、私のテンションはもう一つギアが上がった。
「ほんと!?嬉しい!えっと、じゃあ、4話だけ観る?」
 本当は全部観てほしいんだけど、全部なんて長いし、そんな贅沢は言えない。
「いえ。他のグループのお話も観てみたいです。…その、菜々子さんがよければの話ですけど。」
 斗真君は私の様子をうかがうようにこちらを見た。そんなの…いいに決まってるじゃん!
「もちろんだよ!じゃあ、何かお菓子とかも用意するね!」
「あっ、ありがとうございます。」
 立ち上がったついでに時計を確認する。斗真君はああ言ってくれてるけど、さすがに未成年を日付が変わるまで引き留めておくのはよくないよね。今日はあと1、2話観て、続きは次回にしよう。
 テーブルにはお菓子とジュース。アニメ鑑賞の準備は整った。
「さあ、観よう!」

「いてて…」
 腰と首の痛みで目が覚めた。目の前のテーブルにはお菓子の空き袋と飲みかけのジュース。あれ、私またアニメ観ながら寝ちゃってた?机、片付けてからベッドで寝直そ…
 その時、右腕の重みに気が付いた。恐る恐る、そっちに目を向ける。
「…!」
 声を上げそうになるのをどうにか抑える。私の右腕には…斗真君が寄りかかって眠っていた。
 あああ!思い出した。昨日は斗真君と一緒にアイフレのアニメを観て、2話の商業科を観て、3話の家庭科をつけて…そこから記憶がない。
 そう言えば、今何時!?時計を確認すると午前2時を指していた。
 あー…悪いことしたなぁ。私は斗真君の方を見る。…そういえば、この状況ってあのシーンに似ている。
 ちょっとなら、いいかな。だって、間近であのシーンを見れるなんて、この機会を逃がしたら絶対後悔する。
 私は斗真君の顔を覗き込んだ。…あれ。
 あんなに今までそっくりだと思っていたのに。しかも同じシチュエーション。なのに、なんか違う。
 可愛くて格好いい男の子がそこにいる。
 何で。意識したら急に心臓がうるさくなる。落ち着け。この子は、彼は、違うでしょ。
「ん…、ななこさん…」
 その時、斗真君が目を覚ました。眠たそうに目をこする。ほら、アニメのらむねちゃんにそっくり。きっと寝ぼけていたんだ。よかった、さっきのは勘違いで。
「起きた?ごめんね、こんな時間まで。オートロックなんだし、私のことは放っておいて自分の部屋に帰ってもよかったのに。」
「あー、それは…」
 斗真君が困った顔で目を逸らす。
「どうしたの?」
「あの…菜々子さんが、その、僕の腕を掴んだまま寝ちゃって…その…」
 その言葉を聞いて、一気に目が覚めた。
「ご、ごめんなさいっ!」
「あ…いいんです!菜々子さんが寝ちゃった後、全学科のお話、観終わりましたし。そこまで観たところで僕も寝ちゃったんですけど。」
 斗真君は立ち上がった。
「それじゃあ、僕は帰ります。遅くまでお邪魔しました。」
「いえいえ!本当にごめんね!」
「全然大丈夫です。」
 玄関まで送り、扉に手をかけたところで斗真君が振り返った。
「…また来週、アニメの続き観てもいいですか?」
「もちろんだよ!」
「ありがとうございます。…おやすみなさい。」
「おやすみ…斗真君。」
 扉が閉まった。
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