冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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お熱いですね

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 「おい、悪魔!お前がエリーゼをたぶらかしたのだろう?!」
 『「はい?/ ナニヲ イッテイル!」』
 「誤魔化しても無駄だ。お前がエリーゼを騙し夜な夜な家に呼び、生贄という口実でここにエリーゼを誘い込んだのは分かっている!泳がしておいて正解だったぞ!」
  
 そう強く断言するガロン様だがその推測は大外れ過ぎている。正直あんなにも上手くあの王宮を抜け出せるなんておかしいとは思っていた。ただその犯人捜しのために泳がせるなんてなんと姑息なことをする人なのだろう。

 「もしエリーゼが心から添い遂げたいと思っている男なら見逃そうとすら思っていた。私にはエリーゼは勿体ないからな。だがしかし!お前のような悪魔だとは思わなかった。」
 「何の話でしょうか?」
 「エリーゼ、お前はこいつを愛しているのか?」
 「いや、全く。」
 「では俺と悪魔ならどちらと婚約したい?」
 
 こんな場面で突然何を言い出しているのだろうか。確かにこの悪魔思ったより話が出来るから面白いなとは思っていた。しかし悪魔と結婚というのは気が引ける。正直なところガロン様も嫌ではあるが、今の状態であるならきっと愛してはくれるであろう...

 「ガ、ガロン様ですかね?」
 「えっ。」
 
 ガロン様は突然顔をリンゴのように真っ赤にしていった。そしてこの場に似つかわしくないくらいにやけ顔を晒していた。

 (もしかして、照れたの?)

 そう思うと何故だか私も恥ずかしかった。ただ二択を迫られたから選んだだけなのに。きっと心こもってないのを分かっているだろうに。こんな些細な事でここまで喜んでくれるのは少し嬉しくあった。

 「ゴホン!エリーゼが愛していないならお前を殺す!」
 『ノゾム トコロダ!』
 「ストーーーップ!!!」

 私はこの世界に来て一番大きな声を出した。その声に驚いたのか悪魔もガロン様も攻撃の態勢が崩れていた。

 「私が事の経緯をお伝えするので二人とも落ち着いてください!」

 椅子に紐でぐるぐる巻きにされながらも事の経緯を伝えた。
 ガロン様の記憶を取り戻すべく動いていたこと。そのための材料を手に入れるために闇市場に赴いたこと。そしてこの後に協力人が助けに来る手筈だったこと。そして悪魔は危ないことは何一つしていないこと。
 伝えられるものは全て伝えた。

 『ワタシハ アブナイコトヲ シテイタ ヨウダナ。』
 「仕方ないですよ、悪魔の世界とこちらでは違いますし。」
 「エリーゼ、俺のために頑張ってくれていたんだな。」
 「私のためですけどね。」

 お互い納得してくれたようで争いは静まっていった。

 悪魔はここでは悪魔の世界の草花をあげるだけで大儲けするから人間界に居座っていたらしい。人間界の高価な宝石は悪魔の世界で高く高く売れるらしく、それを渡す代わりに人間界から去ってもらうことになった。話が分かる悪魔で助かった。
 私はガロン様にぐるぐるにされていた紐を解いて頂いた。

 「エリーゼ、会いたかった。」
 「そ、そうですか。」

 先ほどの赤面を見たからか少し意識してしまっている私がいた。今までは義務のように愛を伝えられていたがあのように表情に出ると本当に愛されているのではと錯覚してしまう。

 「今すぐエリーゼを抱きしめたいが、そんなことをしたら余計に嫌われてしまうだろうな。」
 「…いいですよ。」
 「え?」
 「私のせいで迷惑をかけたのです。それくらいいいです。でも今回だけで...!」

 今回だけですよ、と言い切る前にガロン様の大きな身体で抱きしめられた。鍛えられたその身体はとてもたくましかったが私を抱きしめる腕はまるで彫刻品を扱っているかのように優しかった。ガロン様からは血生臭い匂いがしてくる。しかしこれは私のためであると意識すると不思議と不快感がない。最近寝不足だからか、その大きく温かい腕に抱きしめられているとだんだんと眠くなっていった。

 (このままじゃ、寝ちゃう、かも。)

 うとうとしていると突然声が聞こえてきた。

 「おや、エリーゼさんとガロンじゃないですか。とてもお熱いですね♪」

 その声の主は私たちのすぐ近くまで来ていた。ガロン様は咄嗟に私を片腕に抱きしめ剣を抜いて声の主を見た。

 「お前は...!」
 「やぁ久しぶりガロン!あとエリーゼさんお疲れさまでした。」

 そこには私の協力者であり、私とガロン様の加害者であるウェン様が微笑みながら立っていた。
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