相棒と世界最強

だんちょー

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5話 未来の想像

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「何してんだろう…」

 本当にかっこわるい。

 あんなこと言うつもりじゃなかったのに。

 ただただ色々な後悔が蘇る。

「もう…やめようかな…」

 根本から折れてしまった木剣を見る。

 ……前ほど剣を振りたい気持ちがなくなっていた。

「ぅ……うぅ……っ…」

 涙が止まらなかった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 響くのはバチャバチャと、水たまりを歩く音と、雨の降る音。
 その2人に会話はなかった。

「……」

「……」

 しばらく歩いて、ゼロが沈黙を破った。

「んー?私のこと幻滅しちゃったかな?」

 少年の未来を奪ったこと。そのやり方。そして
 メリルを村から引っ張ってきたこと。
 我に還れば、ちょっとは酷いことをしてるんじゃないかと思っていた。

(まぁいっか。もう2度と会わないだろうしね)

「ゼロはものすごく嫌な人。でも強さだけは本物。私が強くなるための近道だから…これからもついていくけど……いつか一発斬らせて」

 メリルは静かに怒っていた。
 ゼロのやり方に。
 それに自分が何も考えずに加担したこと。

 そして

 エクスに嫌われたこと。
 これが一番心にきていた。
 
 特段、村で仲が良かったわけじゃない。
 話したことだって数回しかない。
 
 でも
 私の剣の始まりに嫌われた。
 いつか一緒に戦いたいと思ってたのに。


 絶対許さない。

 いつかゼロをぶっ飛ばして、もう一度エクスに会いに行こう。
 そしたら謝って、また剣を交えよう。

 それで…私が剣を教えてあげるんだ。
 


ーーー偽物じゃなく、本物になれるようにーーー



「♪」

 少し変わった少女の歪んだ気持ちを誰も知るものはいない。

「こわっ」

 ゼロはこの少女に自分と似た何かを見た気がして少し自重しようと思った。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 あれから何日過ぎただろうか。
 何回夜が来たのかもわからない。

 僕は、剣を握っていない。

 ずっと家に閉じこもっている。

 お腹が減った時だけそこらへんに転がってる腐りかけの芋を食べる毎日。

 元々体の線は細かったけど、今は骨が浮かぶほど痩せてしまっている。

「何か…しないと…」

 だけど何もする気が起きない。

 また、

 失敗するだけだ。


 ゴゴゴゴゴッ!!


 突然、家が、辺りが揺れ始め、僕は外に出た。

 何日かぶりの外。

 目に入ったのは、澄んだ青空と…顔を真っ赤にした隣のおじいちゃんだった。

「…ば……」

「…ば?」

「…バッっっカモンガァ!!!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 おじいちゃんが杖を振った瞬間、僕の家が木っ端微塵に吹き飛んだ。

 え?

 え????

 ……ええええええぇぇぇ!?!?

「うぇぇええええ!?!?!何してんだ!!うんこジジイ!!」

 僕の家はおろか、木剣すら木っ端微塵になり、宙を舞って風に吹かれて消えた。



「どうして立ち止まる必要があるッ!!」



 それは心からの声。

「!?!」

「一度、二度失敗したからと、諦めるのか!」

「…!!」

「もう一度挑もうとは思わんのか!!」

 それはジジイの激励だった。
 僕のことを心配してくれたのだろう。

 だけど、もう……。

 …考えたんだよ。
 もう一回挑んで勝てればって…。
 でも、世の中そんなに簡単なことじゃないって思い知らされた。

 何よりも

 ーーー僕は偽物だか「ふんっ!!!!」

 ぶへぇえっ!!!

 杖で殴られ、体が宙を舞う。

「本物偽物がたがたうるさいわい!!…人の可能性は無限大じゃ!! 未来は自身で切り開くもの!! 周りに惑わされるな!!! お前の道を、進め!!」

 大仰に両手を広げて叫ぶその姿を、
その瞳に宿った闘志を、少しかっこいいと思ってしまった。


 だけど…そんな……理想が…現実になるわけ…


 どしゃっ。

 僕の意識はここで途絶えた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 う…うぅ…

 頭が痛い。

 ここはどこだろうか。
 たしか、じじいにぶん殴られて……

 じじいの家だろうか?頭痛で目を開けられないが、この固い床は幼い頃に過ごしたじじいの家とそっくりだ。

 たぶん倒れた僕を運んで看病してくれたんだろう。

 あとでお礼を……いや。

 そもそもジジイのせいでこうなったんだ。
 お礼も何もないじゃないか。

「……」

 とても静かだった。
 風で木の葉が靡く音が妙に心地いい。

 (てか…じじい魔法使いだったんだ)

 魔法使い。
 それは奇跡を行使する者。
 無から有を作る者。
 実際には大気、体の魔力を使って行使するらしいがその存在はとても珍しい。

「魔法が使えれば……」

 いや

 僕は魔法も使いたい。だけど剣士になりたいんだ。
 魔法だけで勝ったって何も嬉しくなかっただろう。

 ・・・あれ?

 剣士になりたい…???

 どうしてまたそう思っているのだろうか。
 あれだけ酷い目にあって、それでもまだ剣士になりたいのか。

『本物偽物がたがたうるさいわい!!…人の可能性は無限大じゃ!!未来は自身で切り開くもの!!周りに惑わされるな!!!お前の道を、進め!!』

 一言一句覚えている。

 どうしてもこの言葉、じじいの姿が頭から離れない。

 想像するのは未来の自分。

 誰よりも高く、誰よりも強い自分。

 どんな者をも貫く最強の矛。

 惑わされることのない、揺るぎのない信念。

 最強を打ち滅ぼす新たなる最強。

 僕は、


 ーーーそんな剣士になりたいんだーーー


「決めたよジジイ」

 もう一度



 ーーー剣を取ってみるよーーー



 手を空に伸ばし目を開ける。

 綺麗な星々が目に映った。
 もう迷いはなかった。

 必ず自分の手で掴み取るために再び立ちあがろう。

「……じじい……普通に外じゃん…」

 ただ放置されていたのが妙に悲しかった。

 その光景を、木の影から伺っていたジジイは目に手を当て、溢れる涙を拭った。



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