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7話 決着
しおりを挟むオークの振り下ろす大きな拳。
それは当たったら死ぬほどの脅威。
迫ってくるそれに両手を添えて、全力でいなす。
「ッッお…もて…ぇ…ッ!!」
だけど成果はあった。
力の方向がずれて拳は何もない地面へと激突した。
「…まじかよ」
自分の数倍もある体格から繰り出される拳をいなせるやつなんてそういない。
そもそもその発想になることがおかしい。
目の前のやつは能無しなのに…
身体的補正も何も無しにやってのけたのだ。
それからさらに驚くべきことが起こる。
怒ったオークの突進も、拳も、蹴りも全てをいなし、躱しはじめた。
「おいおいおいおいッ!なんだ…!?なんなんだあいつは…!?」
目の前の光景が信じられなかった。
俺はランクIで…あいつよりも強い。
強いはずなんだ。
なのに命懸けで戦っているのは白髪の少年。
立場がおかしかった。
本当なら、そっちにいるのは俺のはずだ。
どうしてこっちにいるんだ?
ーーーそんなの…おかしいだろぉが…ッ!!
ルークは剣を抜き、死闘を繰り広げる強者の元へと一歩を踏み出した。
ーーー力及ばない者が立ち上がる時、妖精はそれを見ている
ーーー力及ばない者が手にする時、妖精はそれを祝福する
ーーー強者が勝利を手にする時、妖精はそれを綴る。
ルークにとって、この出来事は人生を変えるほどの幸運。
白髪の少年と出会ったことで、
ルークの眠れし才気が解放された。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
…やばい…ッ!!
もう…腕が……ッ!!
一度距離を取る。
何度も何度もいなして、いなせないのは躱してを繰り返し、エクスの意識は極限状態だった。
そして手も、至る所から出血し、変色しているところもあるほど、重傷だった。
過去にないほど集中し、目を血走らせ、一つ一つの動きを正確に読む。
でなければ待っているのは死。
だがそれも長くは続かなかった。
予想よりも強い力に一合一合全力だったからだ。
だけど、勝機は見えていた。
歩み寄るのはこの場での絶対的強者。
見れば誰でもわかるほど先ほどとは別人だった。
壁を越えたであろう
【ランクII】になったルーク。
剣を握り締め一歩一歩近づいてくる気の溢れた男に僕は少し嫉妬した。
だけど、ここで大事なのは、二人で勝つこと。
「…遅いんじゃない…?」
「…ありがとうよォ。それとすまなかった」
「…?」
もう
ーーー馬鹿にしない
ーーー嘲笑ったりしない
「お前のおかげで壁を越えた。ここからは俺に任せろ」
ランクIIならオークは近接でも勝てるほど強い。
IとIIでは絶対的な差がある。
自信満々に言うルークは本当に勝てるぐらい強くなっているんだろう。
だけど…気に食わない。
「なんで任せなきゃいけないの?ここまで頑張ったの僕だけど。しょうがないから最後だけ任せるけど
それまでは…ハウスしてなさい」
ルークのこめかみがピクピクしているが気にしない。
オークは痺れを切らしたのか再び突進してくる。
ここに慌てるものはいない。
逃げるものはいない。
さぁ、勝ち時だ。
「う…ッ…オォォオオ…ラアアァッ…!!!?」
ボロボロになった手で最後の逸らし技を使う。
そして拳が向かう先にはルークがいる。
「全然怖くねぇッ!!燃えろ【炎剣一刀】」
剣が燃え、拳に当たる。
当たったところからジュワジュワと肉を焼き、オークを一刀両断した。
両断されたオークは絶命し、後ろにどすんっと倒れる。
戦いの後、しばし静寂が訪れ、
「…勝った…勝ったんだ…ッ!」
うぉぉおおおお!!!!
あまりの嬉しさに雄叫びをあげガッツポーズをした。
天に向かい、叫ぶ。
「これが…僕の二歩目だっ!!もう誰にも負けてやらない!!あいつにも、ゴミクズにも!本物にだって負けるもんかッ!! 僕はエクスッ!いずれ最強に至る男ッ!!!この名を……世界に知らしめ…いずれ…は…
そう言い放ち、エクスは力尽きた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
う…ぅ…
体が重たい。
頭痛もする。
いつか経験したことがあるような…
…また放置とかないよね。
このふかふかの手触りは地面ではない。
だけどもしかしたら放置されて魔物の巣に持って帰られて保存食になっているとか…。
「…知らない天井だ」
本当に知らない天井だった。
というかまともな天井を初めて見た。
雨や木屑が降ってこない。
「素晴らしいッ!」
なんて居心地のいいところなんだ。
ここは俗に言う高級な宿屋さんだろうか。
でもジジイが言っていた。
街に行ったら貨幣が必要だって。
それがないと何もできないから働き口を見つけろって。
今、僕は無一文だ。
身体は物凄くだるいけど動けないほどじゃない。
「…よし。逃げるか」
窓に足を置き飛び降りようとした時、
「何してんだお前…」
立っていたのはルークだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ベッドに座ってルークとあれからどうなったのかを話した。
それと、窓から飛び降りようとしていた理由も。
ルークは頭を抱えてどこか辛そうだった。
オーク戦の後遺症だろうか。
でもいいとこ取りしかして……むぐっ。
殺気だったルークの手に顔を掴まれた。
そのまま話は進み…
「まずここは高級な宿屋じゃねぇ。極一般的な安い宿屋だ」
僕の目はさぞキラキラ輝いていることだろう。
ここが安宿なんて。
永住したいぐらいだ。
「それとここは冒険者の街ローグだ。世界中から本物の原石が集う街だ。外を見てみろ」
そう言われて見てみると、確かに冒険者…装備を着た人や武器を持った人でごった返していた。
しかも、ほとんどの人が強い。
僕の目はもっとキラキラ光っているだろう。
あいつら全員ボコボコにして最強になりたい。
「…腕はどうだ?もう痛くねぇか?」
そういえば…オーク戦でボロボロだったんだった。
でも、ちっとも痛くない。
「はぁいじょうふ」
「そうか。それを治したのは俺だ。この中級ポーションを使った。言いたいことはわかるな?」
「あひがとふ」
窓は空いている。
今すぐにでも逃げれる。
だけどこの手がめちゃくちゃ邪魔だった。
「まぁ…お代はいらねぇ。そのかわり……ちょっとツラ貸せ」
「…あい」
あまりの形相に震えた声で返事しかできなかった。
もう奴隷商にしか見えなかった。
下に降りて外に出ると、、
上から見るのとは訳が違った。
人々の熱、建造物の大きさ、道の広さ、全てが今までと別世界だった。
「ここは毎日がお祭り騒ぎだが今日は特別な日でよぉ、この都市一のギルド【迷宮の翼】がメンバーを募集してんだ。今からそれに、俺とお前で…」
ーーー行くぞ
「…うん」
僕は生返事を返した。
この都市のどこかに……いるんだ。
絶対に会わなきゃいけない、
次こそ越えなきゃいけない相手が。
でもまずは目前のこと。
僕は手を握りしめて、ルークについていくことを選んだ。
この後に待っていることなんて想像もできずに。
未来の可能性を掴み取るため前に進む。
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