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8話 死刑コール
しおりを挟む【迷宮の翼】
それはこの都市一のギルド。
つまり、大陸一のギルドでもある。
所属人数は200人ほど。
優秀な人材がいれば誰彼構わず入れ、本物の誕生を目指す最強と言っていいギルド。
そんな最強のギルドのメンバー募集会場にルークとエクスはいた。
円形の闘技場のような場所。
2階には迷宮の翼の人間たちが僕らを吟味…見学していた。
そして闘技場内を見渡せばやる気に満ち溢れた強者ばかり。
戦ったらまず勝ち目はないだろう。
あー、あー
声が会場に響き渡り、二階の高さに浮いている人間が現れた。
「毎年恒例になってきたね。去年は「戦姫」を迎え入れた。予想以上に成長し続けている彼女に…君たちの中に着いていけるものはいるかな?」
そう言って微笑む姿は誰がどう見てもイケメンだった。
会場内の女性がキャッキャしている中、男性陣は殺意を迸らせる。
「あんのキザオ、ぶっ飛ばしてやらァ!!」
ルークもしかり。
だが次の言葉によって殺意は感嘆、憧憬、尊敬などに変わっていった。
「挨拶が遅れたね。僕は迷宮の翼、十傑が一人、アーク・オラシオンという。マスターと他の十傑は全員不在でね…。僕がここの監督になった訳だけど……今日は本物の原石達に会えて嬉しいよ。抜け目なく監査していくつもりだから…どうか君たちの輝きを見せてね。じゃあ、健闘を祈るよ」
割れんばかりの声援が送られ、アーク・オラシオンという人物は2階に戻って行った。
「ねぇ…この数日でルークにそっくりな名前の人、二人登場したんだけど、もしかして流行ってるの?」
そう言った瞬間頭をぐりぐりされた。
「流行ってねぇし一匹、人じゃねぇしふざけんなボケカス!」
「いたい!いたいよ!……それより十傑って?」
「……お前何のためにここにきたんだよ…」
「馬車でも言った通り最強になるためだけど?」
呆れたようにため息を吐き、僕の顔を見てもう一度ため息を吐いた。
「…迷宮の翼は最強の集まりなんだよ…!んで!十傑っていうのはその中でも突出した強さ、、異次元的な強さって言えばわかるかぁ?今出てきた俺のパクリミテェなやつは妖精の綴り書に4回出るぐらいのバケモンだ。あそこに入れればまず間違いなく強くなれるし本物になれる可能性がグッと上がりやがるんだよ」
ごめん。
本当にごめん。
妖精が認めた強さって言うのはわかるけど、4回認められたのってすごいことなの?
どういった物語が綴られてるのかも知らないし…基準がわからない。
本当に無知でごめん。
「なにアホ面晒してんだ。妖精の綴り書に乗ってんだからしらねぇ訳ねぇだろ」
「…あははは。ルーク、実は……」
ーーー妖精の綴り書、読んだことないんだ
その言葉はあまりにも軽い発言で…
周りの喧騒でかき消されていたさっきまでの会話。
いつもより気持ち、力を入れて話していたエクス。
どうしてだろう。
ーーー妖精の悪戯か
この時だけ会場は静まり返り、エクスの声が響き渡った。
「!?!!」
誰の驚いた反応だっただろうか。
もしかしたら会場全体かもしれない。
天気は良いのに、良いと思えないほど会場の熱は冷め、集まった人々の瞳には静かな敵意、侮辱や嫌悪が宿っていた。
そんな中、一番初めに我に返ったのはルークだった。
「ッエクス!!!逃……「それ以上の発言は許しません」」
「!?!?!」
どこからやってきたのか、いつの間にかルークの後ろには女性が立っていて…剣を喉元に置いていた。
そして二階席からぞろぞろと人が集まり出し、僕らを囲った。
まるで、僕を逃さないように。
「なぁ?こいつら死刑でいいんじゃねぇの?」
誰かがそう言った。
「そうだよ。だって罪人じゃん」
あまりに容赦のない敵意に僕は立っているのがやっとだった。
ここにいる全員が本物達に認められた強者なのだ。
逆らおうなんてちっとも思えないぐらいの実力差。
だけど
このままだと、死ぬ。
ジジイの言葉。
いつだったか、こう言っていた。
「妖精の綴り書はのう、この世界のルールじゃ。人は誰しもあれを読んで育つのがルールじゃ。だが、あれは人を狂わせる。今はまだわかりもしないがいずれわかるはずじゃ。そしてお前は神の…〇〇だということも」
そうケラケラ笑うジジイだったが、表情を変えてこうも言っていた。
「よいか?綴り書を読んだことがないやつは罪人扱いをされる。絶対に人に言うな。言えばたちまち……生きることは不可能だと思え」
思い出すのが遅すぎた。
軽はずみで言うべきじゃなかった。
しかも、こんなに大勢の人がいるのに。
絶えない喧騒の中なら聞こえないだろうと思った自分がバカだった。
でも、後悔しても遅い。
「「「死刑!死刑!死刑!」」」
鳴り止まない死刑コールに気が狂いそうになった。
何だ。
なんなんだこいつらは。
どうしてそんな簡単に死という言葉を使える?
どうして笑う?
本当に
---どうしようもない
救いがない。だめだ。
一回目で学んだのに。
ゴミクズだって知ったのに。
なんで僕は…こんなに愚かなんだ。
もう…優しさなんて必要ない。
助けてくれる人たちだけで良い。
---君たちは害虫だ。
駆除……しなきゃ。
「パァンッッッ!!!!」
急に会場に鳴った轟音。
どこから鳴ったのか、それは明白だった。
先ほどまでの死刑コールを消し散らすほどの合掌は2階に立っている一人の男が出した音だった。
十傑のアーク・オラシオン
彼は目を閉じた状態で手を合わせている。
「…少しは落ち着いたかい? いくら干渉されたからといってそれはだめだ。それ以上、侮辱をするようなら…」
---僕が相手をするよ
その言葉には魔力、覇気が乗っていた。
絶対的強者の発するそれはあまりに規格外のもので…地面が小刻みに揺れ、暴風が巻き起こった。
まさに圧倒的。
妖精に認められた?
神に等しいの間違いではないだろうか。
アーク・オラシオンは2階から飛び降り、歩み寄ってくる。
「すまないね。せっかく来てもらったのに二人には悪いことをした」
そういって目の前で頭を下げる姿に、またいらないことをする奴らがいた。
「なっ!?こんな罪人に頭を下げる必要なんてないですよアーク様!!」
「そうよ!罪人は罪人らしく牢にいなさいよ!」
「「「そうだそうだ!!!」」」
先ほどの言葉をもう忘れたんだろうか。
アークはこれ以上侮辱するなら自分が相手をすると言ったのだ。さらにこの場の責任者であるアークが謝ったのにも関わらずまた侮辱行為をしたことでアークのメンツは丸潰れだ。
「…命知らずな君たちには望み通りのことをしてあげよう」
近くにいた僕がギリギリ聞こえたのはあまりにも無慈悲な言葉だった。
「お前ら生きてることに感謝し……ろ……?」
男は僕らにそう言ったが言い終わる前に後ろに倒れた。
そして、地面にぶつかった瞬間、一直線にそれは割れた。
さっきまで侮辱してきた女性達も倒れ、地面にぶつかると割れた。
あたりは真っ赤な液体が徐々に広がっていき、内臓なども露出し、すぐに僕の足元にも広がった。
辺りは静寂に包まれ、誰もが言葉を発するのを恐れた。
次は自分かもしれない。
6人が犠牲になることでようやく皆は理解し思い出した。
アークが激怒していること。
いつも温厚で親しみやすいがその実は十傑序列2位だということを。
「……本当にすまないね。こんなはずじゃなかった。そちらの君もすまなかった」
「い……いえ…っ」
「……」
「足元も汚してしまったね」
そう言って手を振るとそこにあった死体や血は跡形もなくどこかへと消えた。
それを目の当たりにしてさらに恐怖心が湧き上がった会場にいる人々だが、僕は違った。
あまりの強さに、嫉妬してしまった。
その強さが欲しかった。
どうやったら手に入れられる?
どんな修練をすればいい?
頭の中は強さへの渇望でいっぱいだった。
「…やっぱり…君は神の〇〇なんだね」
「…??」
ジジイにも言われた言葉。
だけど一部分が聞き取れなかった。
「…大丈夫。いずれわかる時が来る。でも、これからの道は相当険しいものになるよ。それでも…前に進むかい?」
その問いはすごく優しくて、どこかジジイと似たものを感じた。
「本物は嫌いだからぶっ飛ばせるぐらい強くなりたい。でも本物にはなりたくない」
「ははっ!良いね。そんな君には僕からプレゼントをあげよう」
そう言っていつの間にかその手に握られていた黒い何か。
それは一本の剣だった。
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