相棒と世界最強

だんちょー

文字の大きさ
9 / 14

9話 全身全霊

しおりを挟む





 迷宮の翼のメンバー募集は誰一人取ることなく今年は終わりを迎えた。
 問題があったとはいえ、本物の原石である仲間を6人殺害したアークは謹慎処分と降格になったらしい。

 そしてその問題の発端である僕は…どこのギルドにも所属できないでいた。

「でてけ!罪人なんか取るわけねぇだろ!」

 蹴り飛ばされて外に出される。

 これでギルドの応募総数35件。
 全部門前払いか顔を見られるなり出てけと言われた。

 僕の顔、名前はこの冒険者の街全土に知れ渡った。
 あの日、あの場所にいた冒険者が広めているらしい。

 罪人がこの街にいる。
 そいつの名はエクス。
 白髪でチビ。
 ゲロ吐き。
 妖精の綴り書を読んだことがない。
 さらには能無しでもあると。
 
 街全体の冒険者が結託しているのではと思うほど、僕の悪評は広がっていた。
 

「はぁ…」

 さすがにため息が出るものだ。

 無一文。働き口なし。
 一張羅はボロボロで体も洗えてないから臭いしベタベタ。食べ物はゴミ箱を漁る毎日。

「…輝かしい未来とは」

『それは俺様のことだぜぇ!ひひゃひゃ!』

「………」

 聞こえない。何にも聞いてない。

『おう、白髪のちびすけェ?いつまでこんなとこいんだァ?俺様を早く外に連れ出せよォオイぃ……まァ、聞こえてねぇかァ』

「……次だ」

 あの日、剣を受け取った時、コイツは喋り出した。






『オイオイオイオイ!こんな小便臭ェ小僧が次の俺様の持ち主かァ?勘弁してくれよおィぃ!』

 僕はさぞ場に似合わない間抜けな顔をしていたことだろう。

 剣がしゃべったのだ。
 そんな話は聞いたこともない。

「受け取ってくれるかい?」

 これはたぶん粗悪品。
 呪いの剣だ。
 じゃないと説明がつかない。
 アークは僕にこの悪趣味な剣を握れと言っているんだ。

 僕の中でこいつは良い奴かもって思ってた評価が一瞬で性悪になった。

 でもここで断るという選択肢はない。
 貰わなければ。
 あとで捨てるか売り飛ばせば良いんだから。

 しかし問題があった。

 僕は剣を握ることがどうしてもできなかった。

 もう一度剣を振ると決めたのに、僕は一年以上剣を持てていない。

 持つと体が拒否反応を起こして嘔吐してしまうのだ。
 でも、僕は剣士だから剣を手に戦わなければいけない。

 今なら持つことができるだろうか。
 試してみる価値はある。

 僕は両手で剣を受け取った。

 ここまでは大丈夫。
 問題は柄を握った時。

 もう剣はもらった。
 試す必要なんてない。
 ないけど、今ここで握らなかったら…一生手に取れないような気がした。
 今、後悔するのは良い。時間が経てば笑い話だ。

 僕はゆっくりと柄を握り、鞘から剣を引き抜いた。

 それは刀身が黒い剣だった。
 何か……膨大な力…想像もできないほどの力が眠っているような、吸い込まれそうになる程黒い剣だった。

『……?なんだこいつァ?変だなァ?嫌な感じが一切ねェ…』

 剣が何か喋っていたけど、全く頭に入ってこなかった。

 目眩と頭痛、さらに一年前の記憶がフラッシュバックし……耐えられず僕は吐いた。

 あまりの光景に周りも絶句する中、僕は…


 ーーーああ。やってしまった


 と、後悔した。
 その吐瀉物は手に持ったしゃべる剣に降りかかったのだ。


『……テメェ。俺様の美体になにしてんだこらァ!!テメェの人生なんてあっという間だぞォ?死ぬまで呪ってやるからなァ…!??』

 こうして僕はこの剣に本当の意味で呪われた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




『俺は……前に進む。だけどお前なら…いずれ追いつけるだろ?俺の見たあの後ろ姿は…目指すべきひとつだ。いつか必ず這い上がって来い。待ってるぞ』


 路地裏で寝転がり、思い出すはあの後のこと。
 ルークは今、中規模の成長途中のギルドへと入団した。

 当初、ルークは何を思ったのか僕と一緒にいることを選んだ。
 それは誰でもわかるほどバカな選択。

 『お前といた方がスリリングだろぉが』

 オークごときにビビっていた人間が何を言ったのか、僕はその言葉の後、馬鹿笑いをした。気を遣ってくれたのがわかるが、僕といても実りはない。


 ーーーー絶対にギルドに入れ


 負けず劣らず、ルークをひたすら引き離した。
 ついてくる彼を撒くのに鬼ごっこだってした。
 結果は惨敗だったが。。。

 一緒にいればどっちも不幸になると思ったから。

 お互いにこれが最善だと思ったから。



 ーーー僕は追いつくどころか最強になるから


 拳を交わしたのが二日前。

 だからこんなところで燻ってはいられないのに…。

『…ひひゃひゃひゃ!!!顔の原型留めてねぇぜ!?どんだけ殴られてんだよォ!?反撃しないともっと顔面でかくなっちまうぞォ~!?ひゃひゃひゃ!!』

 今、目の前にいるのは、あの時、会場にいた迷宮の翼のメンバーだった。
 路地で食い物がないか探している時に鬼の形相で現れた。

「…テメェのせいで弟は死んだ。一瞬では殺さねえ。じわじわと生きてるのが苦痛になる程追い込んでから殺してやる」

 道理も強さも理不尽だった。

 何か。何かないか。
 勝つのは当然無理だ。
 逃げる方法を……逃げる?



 ーーーどうして逃げる必要がある?



 こんなやつに背を向けるのか?


 ---嫌だ


 ーーー逃げない


 ーーー戦って死んだほうがマシだ


「…絶対…逃げない…ッ!」

 死んでも良い。
 逃げるぐらいなら、こいつに一矢報いたい。

 胸に大量の空気を入れてゆっくりと吐き出す。

 体中痛いけど、死なないように痛めつけられるだけだったから動ける。

 あとは、武器。

 腰に携えた剣をみる。
 振れない。
 だけどこれしかない。

 死ぬより、ゲロ吐いてたほうがマシだ。

 キィィィンッ!

 勢いよく鞘から剣を抜き出す。

 黒い刀身を見れば、腫れた酷い顔が映る。
 そしてやっぱりだめだった。

 喉の奥から迫り上がってくるものを堪えられず吐いてしまう。
 だけど、ほとんどなにも出なかった。
 ここ数日ほぼなにも口にしていないから。

 好都合だった。
 ただ目眩と頭痛と吐き気に襲われるだけ。

 出るものは出ない。
 これなら戦える。

「ゲロ吐きの罪人風情が……俺と戦うつもりか?身の程を弁えろッ」

 威圧されただけで足がすくんでしまいそうだった。

 でも失うものはなにもないから。

 怖くなんかない。

「雑魚は雑魚。剣を持ったからなんだ?てめぇは弱者なんだよ能無しィ?ランクがねえ時点で俺には勝てねえ。わかるよなぁ?…死に急いだって殺してやらねぇぞ…ゴミクズが」

「う…る…さい…ぞ…おぇ…っ……かか……ってこ…い!!ハゲ…やろう……」

 頭に血管が浮かんでよほど怒っていることだろう。

 だけど相手は剣を抜かない。
 殺すつもりがないからだ。

 その余裕が足元を掬われることになるんだ。



 ーーーこの一振りは、神をも殺すーーー



 そんなのは嘘。
 だけど嘘じゃない。
 そう思っている。
 そう信じて振るう。
 そう、僕が決めた。

 一切の淀みのない剣は、それを可能とする。

 極限まで脳を振り絞れ。

 目も筋肉も思考も全てを一体化させろ。

 この一撃に全てを。

【一振全撃】

 振り下ろされた拳に殺傷能力はない。
 それを避けるように剣は懐へと入り、下から真上へと大きな体を斬り払った。

 ごはっ…!!

 拳に打たれた僕は数十メートル吹き飛んで壁にぶつかった。
 かろうじて意識が残っている中、斬った相手を視界に入れると、傷跡からは血が吹き出していた。

 …ただそれだけだった。
 斬れたのは薄皮何枚かぐらい。
 致命傷ではなくかすり傷程度だった。

「…殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロス殺すコロスコロス殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロス殺す」

 ただ、そんなかすり傷でもよほど気に食わなかったのか怒り心頭だった。

 背中に背負った大剣を抜いて歩み寄って来る。

 剣を振らないと

 立たないと

 でも、もう力が入らなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日ごろに発売となります。 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...