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間章 I
手記
しおりを挟む「アーノルド=ユースメルグからの手紙よ」
そう言って手紙を俺に渡す。
───────この手記を見た人へ、
「この手紙を誰かが見ていると言う事は理由はともかく俺がウィルの側には入れなくなったと言う事だ。
この際だから話そう。
俺はウィルにはハンターになって欲しくなかった
俺と同じ道を進んで欲しくなかった。俺も若い頃は無茶してたよ数年前はかなり貴族との格差はあったからな、何度も死にかけたし、親には数え切れないくらい迷惑をかけた。
何度もハンターになる事を止められた。
でも憧れは止められなかった。俺はもっと小さい時に見た人間を守る為に振るった剣が頭の中に焼きついて離れなかったから。
多分、ウィルもそうなんだろう。
なにせ、俺の息子だからな…俺がハンターになる事を止めた時に見せた表情、俺と同じ顔してた
だからこそ分かる、その顔が出来るウィルならどんな事があっても必ずやり遂げると、これからも語り継がれるハンターになれると俺は確信した。
だから、過保護かもしれないが俺から最後に一つ提案をしたい……ヴァルド学院に入学してみないか?」
「俺が、学院?また?」
学院はまたでは無いが、学校の様なものは行った事があった。弱かったから、いじめられて辞めた。
それを分かっているはずなのにどうして入学を進めるのか、俺には分からなかった。
「そう…だから今日はその提案、もう入学時期は過ぎちゃったから入るのは11になった時にだけど……」
「どうして、俺は弱くてまたいじめられて、死んじゃうかもしれないのに」
「ちゃんと読んで、話も聞けよ、そう言うとこ」
「ヴァルドは学院としては最高峰だ、貴族の子供がよく入るから教授も設備も全てが充実している。」
「それに、今お前はユイナ達にも狙われている、ヴァルドの特待生なら警備も厳重だし、学べる事も多いんじゃ無いかって」
駄目だ。
俺が学院に入ったら死ぬのなんて確定している。しかも特待生だ。エリートばかりのところに俺。
何度同じ過ちを繰り返した。
あそこは俺にとって、生き地獄、監獄同然だぞ。
いくら警備がいいって言っても、そりゃ刑務所は警備が緩いんですかって話だ。そんなわけないだろ。
安全が保証されるからって、自ら監獄に行く奴がいるか?
否!いるわけがない。
俺は普通に断ろうとしたが、
「そうだな、俺もウィルと一緒にヴァルド学院に入ろう
それならどうだ?」
その提案は実に素晴らしいものだった。
いつもは知らない人しかいなかったが、ルイスが来てくれるなら、悪者も退治してくれるだろう。
俺は仕方なくだが、その提案を了承した。
「ありがとうルイス君」
「礼はいらないですよ、俺、楽しい事は好きなんで」
「あ、でもウィルは特待生だけど、俺は一般生だから、クラスも部屋も授業も違うぞ?」
「え?」
それは聞いていない。
先に言わないといけない事だろ。詐欺じゃないか。
「じゃあ入らない!1人は絶対に嫌だ!」
「……ウィル君、これは自分の為だって事分かるでしょ」
俺は口を閉じる。
分かってる、俺も、学院に入る事が1番いい案だって事くらい。
でも、快く快諾する訳にはいかなかった。
「じゃあ11歳じゃ無くて、12に入学にしてもらえないですかね?」
「どうしてなの?」
「多分、自信が無いんですよこいつ、強がりなくせに」
「違う!死にたく無いだけだ」
「と言う事で、後一年と少しで、ウィルを強くなる様に鍛えますから、それで良いでしょうか
その間もパルナさんの所にウィルは置いていかないですが」
「そんなの構わないわ、ウィル君は私じゃ無くて、アーノルドの息子だもの」
そう言って、パルナなアイリスを可愛がる様に抱きしめて頭を撫でる。
もうそんなことされる年齢には見えないけど、嬉しそうだ。
「でもその時、ルイス君はいくつなの?」
「一期に入学なら俺はまだ16ですかね」
「なら問題はないわね」
「じゃあ一年後またここに来ますので」
「ありがとう、アーノルドも喜んでると思うわ」
「ありがとうございました」
俺は小さく頭を下げる。
しかし、もう夜は遅い、振り返って鍵を開ける。
パルナはびっくりとした表情を見せるが、外の景色を見てすぐに察した。
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