【短編2話完結】早熟万能プレイヤーの物語

霜月優

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前編

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これはとある最強チーム、最後の物語。

 聖剣士のクラリス
 武闘王のリュー
 最年少の賢者クリス
 オールラウンダーのラインハート

 そして、、、

 絶対的王、ルーカスの5人で結成された。非正規団体の「KING nova新星の王」と言う様々なクラン、ギルドからルーカスによって集められた精鋭集団。

 この5人は界隈の中では知らない人の方が少ない程、超有名なチームで憧れる人も多い。

 今5人の英雄が出る、ポータルが本部で開こうとしている。その姿を一目見ようと新人から中堅のまで多くの隊員が英雄の帰りを今か今かと待ち焦がれている。

 ポータルが音を立て、開く。

 「か、帰ってくるぞ」
 「英雄様の帰還だわ」
 「今度こそクラ様にサインを」

 ポータルの音と同時に周りの人が我が前へと言わんばかりに押し合っている。

 「俺が前だ!」
 「私が先に並んでたでしょ」

 そんな事をしていると、ポータルから5人が出てきた。
 すると、、先程まで前だ前だとうるさかった人も静まり、
ただ目の前の5人の英雄に目を奪われていた。

 歓声が上がる。
 今回はいつに無く長期的遠征で今までよりも数段難易度の高いミッションだった事もあり、いくらKING nova新星の王だとしても不安に感じたファンの人も多かったのだろう。

 ─────ポータルが開く直前

 「今回はモンスターが多くて時間こそかかったけど、大したこと無かったわね、でも、楽しかったわ」

 「そうでしたね、難しいと言われてたので少し身構えてましたけど杞憂でした、、あっという間だった。」

 リューとクラリスは余裕そうな表情で今回の任務を旅かの様に楽しそうに話す。

 「若干一名今にも倒れそうな奴がここにいるけどな」
 
 と言ってラインハートは最年少のクリスを指差す。

 「皆さんがおかしいんですよ、約1ヶ月も戦ってばっかなのに疲れない皆さんの方が」

 声を荒げながら自分は普通で4人が異常であると、異常者達に伝える。

 「休憩はクリスもしてたでしょ夜ご飯の時とか、3日に1回はしっかり睡眠だって取ってたし、、ねえ?」

 クラリスが不思議そうに首を傾げて他の3人の様子を伺う。
 彼女はクローシス隊員の中でも基礎体力ステータスの攻撃力、機動力が高く、特に攻撃力は当時、唯一の100と最高評価を持つ、最強の剣士の呼び声が高い。
 
 防御力は平均値くらいだが、スキルの自然回復リジェネを持ち合わせており、軽傷の傷ならすぐに治ると言う化物級のスキルも持っている。
 まさに隙のない剣士だ。

 「ああ休憩はしてたな」
 「してた、」

 そしてラインハートとリューは首を縦に振る。
 それをルーカスはただ笑顔で全員を見ている。この人にも疲れている雰囲気を感じない。
 やはりこの人達は異常だ。

 「はあ」

 納得の出来ないクリスにずっと笑顔なだけだったルーカスが動く。

 「お疲れ様!!いやあよく頑張ったぞクリス」

 「ど、どうも」
 
 大声で笑いながら、強くクリスに肩を組む。
 年齢の差と体格、身長差から、その姿はまるで疲れ果てた我が息子を迎え入れる父の様だった。

 「本当、仲が良いわね貴方達は」

 それをくすくすと笑いながら、口を手で抑えるクラリスもまるで夫と息子を見る母の様だ。

 「なあ、リュー、俺たちはこいつらの何なんだ?」

 「大切な仲間?じゃないですか?」

 3人の良い雰囲気にラインハートはついていけずどうすれば良いか分からなくなり、リューに立場を聞いて見たら、真っ当な返答が返ってきた。
 そうだ、ここにいる皆は家族では無い、言わば大切な仲間ビジネスパートナーと言った所か、、

 「そうだな、そうだったな、悪い変なこと聞いちまったな」

 「いえいえ」

 この2人の関係はラインハートがリューの師匠であり同じチームに所属している、ただそれだけ。

 「クリス、もうすぐポータルが開くわよ。そんな姿じゃ恥ずかしいじゃない」

 「分かってますよ」

 クラリスに言われてすぐに疲れた顔を隠し、隊員の憧れとして、完璧な表情を作った。

 「戻るぞ」

 「はい!!!!」






─────────そして英雄5人の帰還。


 ポータルが開いた瞬間に5人は大勢の人に迎え入れられる。

 「お疲れ様ですルーカスさん」
 「クラ様サインを」
 「クリス君こっち向いてー」
 「全員かっこいいなあ~」
 「リュー君がこっち見た!」

 クリスは大勢の人々に手を振りながら歩く、その姿は賞を受賞した人が賞を受け取りにレッドカーペットを歩くときの様だ。そしてクリスは5人の中でも特に人気がある。
 最年少だからか、当時は女性隊員も一定数いた為に歳下男子が好きな人もいたのだろう。
 
 クラリスも新人男子隊員からクラ様と、姫の様に崇められている。
 元々褒められる事は好きなのだが、流石にこれは行き過ぎていると、注意こそはしていないものの面倒臭そうにしている。

 リューは正統派好青年イケメンって感じだ。
 見るからに真面目で完璧主義者、人当たりも良い。
 さらに家庭的な一面もありこのチームの事務的作業も全てリューが行っている。顔も心もイケメンな奴だ。もちろん女性隊員からの人気もある。そして良い奴って事もあり男性隊員からの人望も厚い。

 ルーカスとラインハートは、、まあお察しって感じだ。

 ルーカスは話しかけられる事は多いが、弱い奴、努力をしていない奴に対しては相手にしないからかなり避けられている。
 ラインハートは常に暗い顔をして、笑顔を人前で出さない。
 実際は笑う事だってあるし、リューの師匠でもあり、ルーカスの右腕、KING nova新星の王のNo.2として知っている人こそ少ないが、実は一番、人の事を大切に思える人間だ。

 英雄達の凱旋も終わりに近づき人が少しずつ減ってきた所に熱狂的クラリスファンの男性隊員がいた。

 「クラ様!サインを」

 「あーもう、いちいちうるさいな!あとその呼び方も禁止!そんな暇あったら努力して私と仕事出来るよう努力しなさいよ!」

 「はいぃ」

 怒られているのに何故かこいつは嬉しそうだ。姫に躾される動物の様な笑顔を見せる。

 「他の人にも言っておいて、次私の前でこんな事してたら斬るから」

 と言って剣を構えるフリをする。
 正直言ってその姿すら美しい

 「は、はいぃ」

 が、真面目にキレたクラリスの威圧感は見事な物だ。さっきまで叱られる事を嬉しそうにしていた、ファンでもビビって逃げ去り、周りにいたその他KING nova新星の王のファンにも怯えられた。
 それを何とか挽回しようとするのかと思いきや、、
 

 「ニコッ」

 威圧感を残したまま周りに笑顔を見せる。それはまさに私達はお前らとは見てるレベルが違うと言わんばかりに、、

 「良いじゃねえか、クラリス そっちの方がカッコいいじゃあねえか」

 作り笑顔をやめ本来のクラリスを見せ、ルーカスは何故か嬉しそうだ。

 そして英雄5人は本部最高指導室に入っていく。


 本部最高指導室に入ったが、最高指導者はまだいなかった。こんな大切な日に席を空けているなんて、こちらにも余程のハプニングが起きたに違いないと思っていた。

 少し待ったが、来る気配すら無いので、隣の応接室にて5人は待機する。


 

 「クラリスさん、さっきのあれ何ですか?ズルいですよ自分だけまだキャラ作らなきゃ行けないじゃ無いですか」

 「ふふっクリスはそのままでいいんじゃない?なんか嬉しい顔してるし」

 「し、してないですよ」

 「してたな」
 「してましたね」
 「してたな!」

 これは図星だ。正論を突かれてクリスは慌て、余計に嘘がバレてしまい、顔を赤らめる。
 それを見たルーカスは嬉しそうにまた笑う。今日はよく笑う日だ。

 「それにしても遅いですね」

 「そうね、、」

 流石に戻りが遅いことに違和感を覚え始め、声に出す様になった。
 初めはクリスだけだったが、次々と遅いことの不満を口に漏らす。

 「あちら側にも事情があるんだ。それ以上喋るな。」

 今日はずっと笑顔だったルーカスについに笑顔が消える。
さらに顔は少し険しくなっていた。

 これは気まずい雰囲気になると思った時、丁度ベストタイミングな所で、最高指導者が戻ってきた。


 「すまんな。急に帰ってくるって事になってこちらも準備ができていなくてな」

 急いで入ってきて開口一番に謝罪から入るが、こちらも「いえいえ」と頭を上げてもらおうとする。

 「謝らせてくれ、すまん!」

 そこまで言われるとこちら側も何も言えない。
 最高指導者の方からはまず伝えたい事が終わりこちらの今回の報告をする。

 「今回、我々KING nova新星の王は誰1人かけることなく無事任務を完遂いたしました」
 
 帰還約1ヶ月、帰ってきた彼らに疲れは一切見えなかった。
 最強でありクローシスの顔でもあるこのチームは関心のない一般の人にもそれなりの人気がある。そのファンに見せる様な完璧な表情だ。

 「お疲れ様。長い間ね強いモンスターと戦い続けて大変だったでしょ、特にクリス君は少し疲れが目立っているね。少しは休憩をすると良いよ」

 「え?あ、ありがとうございます」

 完璧に疲れを見せない様にしたつもりだったのか、一瞬クリスは戸惑ったが、相手も相手だったのですぐに頭を下げる。
 実はこの最高指導者もまだ40歳を行かないくらいで、金持ちの息子だと思われがちだが元々は一流のハンターとして昔ルーカスと共に活躍をしていた人だ。
 とある任務で片腕が無くなり現役を引退し、当時の功績を加味して最年少で最高指導者となった人だ。
 

 「1ヶ月もね戦ってると考えた事はないかな?何で俺たちは戦ってるんだ?って、、我々を含む全ての人の平和の為だと言う事だけは絶対に忘れてはいけないよ」

 「………」

 最高指導者が有難い言葉を話しているので、5人は静かにしっかりと話を聞く。

 「こんな事は当たり前か」

 と言って笑う。少しユーモアもあり、隊員の気持ちもわかる良い指導者だ。

 「取り敢えずお疲れ様。今日はゆっくり休みなさい。明日から任務が入ってる人もいるんだろう?」

 この言葉にクリスは驚く。
 こんな一大任務を終えた次の日にまたすぐ任務を入れる奴があるかと言わんばかりに、

 「お言葉、どうもありがとうございます。」

 まあ、皆察してはいただろうが、翌日から任務の入っていたのはやはりクラリスだった。流石に傷は回復するとは言え疲労までは回復する訳ではない。それでもここまで体力があるのは流石に異常としか言えない。

 「他の人も1週間以内にまた大きな任務があるんだよな」

 いきなり最高指導者の口調が変わる。

 「ええ。私ルーカスと」
 「ラインハートは」

 「「来週、ミュートの討伐に向かいます!!」」

 「!!!」

 他の3人はここで初めて衝撃の事実を知る事になる。

 ミュートとは人間害悪クローシスエイズの1人で最高指導者に負傷を負わせた奴だ。

 「ああ。今回俺はもう戦える体じゃないからここで2人が戻ってくるのを待ってるから。絶対勝って帰ってこいよ」

 「「はい!!」」

 2人は息ぴったりに指導者の言葉に呼応する。

 「クリス君とリュー君は少し休憩だね」

 「え、ええ」

 何故か任務が入っていないクリスとリューが変な雰囲気になってしまった。

 「じゃあこれからも平和のために頑張ってくれ」

 「ありがとうございました。失礼します」

 扉を閉じてすぐに、クリスが話そうとする。

 「ミュートっ………」

 何か言おうとしているクリスの口をルーカスが塞ぎ、明日から任務のクラリスの話をする。

 「クラも大変だなあ明日から行くんだろ?」

 「私は余裕よ明日は私のクランの精鋭メンバーで行くんだから難易度も今回よりかは数段優しいしね。ところでお二人さん。私らに黙ってそんな話を進めていたの?」

 「ああ、なんか悪かったか?」

 「悪いですよ。何で先に俺たちに説明しなかったんですか?2人より3人、いや全員で行った方が確実じゃないですか」

 リューがルーカスにチームに入って初めて強め言い返した。それ程重要で危険な任務だという事が分かる。

 「あえて言わなかったんだ。というかこの任務が終わるまで3人には言うつもりは無かった。」

 「何でよ」

 クラリスが少し怒ってきた。自分勝手なルーカスとラインハートへの怒りと、その時自分は簡単は任務を淡々とこなしているという無力さに。
 ここでラインハートがゆっくりと説明をする。

 「初めは言おうと思ってたんだ。2人で行く事。でも、そんなこと言ったら皆反対するだろ?自分も行くって言うだろ。」

 「そんなの理由にならないよ」

 「2人までしか入れないんだ。相手が相手だからこっちも戦力は最大で行こうした。だからまず一度、本部の隊員10人に安全だけは最優先でと言って、場所に向かわせた。そしたら2人目が入った瞬間にポータルが閉じ2人は中に閉じ込められたんだ。だから恐らく、いや、確実に2人までしか入れない。」

 そして、その数分後にポータルが開かれた。これは入れるのではなく、中に入っていた2人が死んだ事で開いた事は確認されている。
 隊員と言っても偵察部隊なので戦闘力は低く、すぐモンスターに殺された。
 
 「分かっている事は2人までしか入れない事。中の人間と連絡は取れると言うことだけだ。」
 
 この2つは間違いなく合っている。
 仕方がなくクリスとリューは納得する。
 
 「2人はどこまでも一緒なんだね。尊敬してる。だから絶対にミュート、倒して来てね」

 「おう!」
 「任せて」
 
 と言ってクラリスは自分のクランに戻って行った。

 「あ、俺もリーダーがいるんだった」

 クリスも何かを思い出したそうで走り出してしまった。

 「何かこの3人で俺がいるのも変ですね。では俺もここで、、健闘を祈ります。」
 

 


 「言ってよかったな」

 「だから言ったでしょ、分かってくれるって」

 「何かこんな感じ最初に出会った時以来ですかね?」

 「そうだなお前がまだクランにいた時か」

 昔、ラインハートは16という若さである有名ギルドの服隊長を任されていて、次期隊長候補と言われるほどに同年代にも歳上にも慕われている「仲間」を重んじる奴だった。

 「今では俺に向かって話せてるしな」

 昔のことを思い出し、ルーカスは嬉しそうに笑う。
 
 「ルーカスさん、この話は辞めておきましょうこっちから話しておいて悪いんですが、死亡フラグだと思ったので」
 
 「…………そうだな、それじゃ来週頼むぞ」

 「そっちこそ」

 2人はそれぞれ別々に帰って行った。
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