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鏡の了▪その一 (誰?は?)
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◆時は遡って▪美少女コンテスト三ヶ月前
白井家 Pm19:30
白井 了視点
ガタンッ
「只今。ああ喉が乾いたぁ。姉ちゃん?」
その日僕は、高校の部活が終わって汗だくで家に帰ってきていた。
父ちゃんと姉ちゃん、僕の三人暮らしのこの白井家。
この時間なら姉ちゃんが夕飯を作ってたりするんだけど、その日はどういう訳か姉ちゃんが居なかった。
父ちゃんは夜勤勤務で夜は居ないし、真っ暗な家の玄関を手探りで電気を点ける。
カチッパッ
「あれ?姉ちゃん?」
一階は真っ暗だったけど二階は明かりが灯って人の気配がする。
明かりがあるのは姉ちゃんの部屋。
「ああ……また亜理砂さんが来てるのかな?」
姉ちゃんの友達の亜理砂さん。
前に鏡の向こうの世界に行っちゃって暫く音信不通だったんだけど、最近帰ってきたんだよね。
だけど、鏡が置いてある姉ちゃんの部屋を出入口にしちゃって買い物だ何だと、異世界とコッチを頻繁に行き来するようになっちゃった。
なんでも向こうはメシが不味いらしくて定期的に買い出しに来てるらしい。
話は分かったけど家は便利な出入口じゃないし、来るたびに姉ちゃんを独占するのは止めてほしい。
最初、亜理砂さんが出入りするようになって凄くワクワクした。
だって異世界だよ!?
ネット小説みたいな事が現実に起きてるんだよ!
それに、向こう側に行った先輩にも会えると思ったら、いても立っても居られなくなって一度、亜理砂さんに連れて行って欲しいって頼んだ事があった。
だけど、鏡の中に途中まで手が入るけど、それ以上は入れなかった。
で、亜理砂さんに向こうの専門家?に聞いて貰ったら、魔力が全く無い人は鏡の往来は不可能だという事が分かったらしい。
聞いた僕はめちゃくちゃ落胆した。
さらに憧れの先輩が向こうで結婚して2児の母だって聞いて、僕の気持ちは奈落のどん底に落ちていった。
僕の初恋の人だったからだ。
そしてその時、僕の青春は終わった。
そう、二度と女の子に興味を持てない程に。
だから僕にとって異世界うんぬんは鬼門だし、二度と関わり合いたくない事柄なんだけど、こう頻繁に亜理砂さんに出入りされると、否応なしに関わりを感じてしまうのが辛い。
「ふうっ、女の話は長いからな。仕方ない。夕飯はカップ麺でもしよう。その前に喉が乾いたなあ」
ヤカンを用意し某メーカーの大盛りカップ麺のフタを空け、粉スープを入れてから熱々のお湯をソコに注ぐ。
チョロチョロチョロッ
「はあ、ホント勘弁して欲しい」
僕は、カップ麺大盛りにお湯を注ぎながら溜め息をした。
今日の夕飯はこれで終わり。
物足りないけど、流石に部活で汗だくの後に夕飯手料理をする気分にはならない。
あ、喉が乾いてたんだった。
冷蔵庫に牛乳でも有るかな?
ガチャッ
「確か、1本残ってたはず……あれ?」
冷蔵庫に牛乳は無かった。
それどころか飲み物らしき物が無い?
いや、1本だけボトルの様な物がある。
「え、コルク栓?まさかワインじゃないよね?」
冷蔵庫に有ったのは古風な茶色のビンにコルク栓をした物。
他に飲み物らしき物は無い。
アルコール関連、父ちゃんは下戸だし、姉ちゃんも僕もその遺伝子を受け継いで飲む事は無い。
それに僕は高校生だしね。
しかし弱ったな。
冷えた飲み物がコレだけって………。
「まあ、いいか。コルク栓開ければ分かる事だし」
とにかく喉の渇きを癒したい。
だけどここは江戸川区。
水道水は良くなったとはいえ、生ぬるい水道水を飲む気にはならない。
キュポンッ
「ん?ピーチの様な匂い。これ果物ジュースじゃん?!やったあ!」
期待して無かったけど、フルーツジュースだったみたい。
安心した僕は、ボトルに口つけして一気に飲み込んだ。
ごくっごくっ
「な、何だコレ?スッゴク口当たりが良くて美味しい?!」
飲んでみたら、病みつきになるほど美味しい?
いや、美味しいでしょ!
「もうちょっと飲んでも?」
ごくっごくっごくっごくっごくっごくっごくっごくっごくっ
プハーッ
「ヤバッ、美味しくて一気飲みしちゃった。何か色々なフルーツのミックス?懐かしい味でまだ飲み足りない気分だ」
カランッ
いつの間にか500ミリリットルくらいのボトル、全部飲み干してしまっていた。
冷蔵庫に有ったんだから別に構わないよね?
人の物を飲んでおいて、その行為を勝手に正当化して罪悪感を誤魔化してみる。
だけど美味しかったんだから仕方ない。
姉ちゃんのだろうけど知らんぷりしとこう。
僕はその後カップ麺を平らげると、そのまま自分の部屋に向かって歩きだす。
ガチャ
「あ、了!えっ、もうこんな時間?!」
丁度、姉ちゃんの部屋の前で姉ちゃんが出て来た。亜理砂さんとの話は終わったらしい。
「亜理砂さん、帰ったの?」
「あ、うん。向こうの自宅に帰ったよ。またコンビニの買い出しに来るって言ってた。夕飯ゴメンね。今から作ろうか?」
「カップ麺で済ませたからいい。明日早いしもう眠いから寝るよ」
バタンッガチャ
僕は申し訳なさそうな姉ちゃんを後にして、自室のドアを閉めて鍵を掛けた。
何か、ものすごく眠くなってる。
腹が満たされて一気に眠気が出たようだ。
部活の疲れが出たのかな?
バサッ
ベッドに横になり目覚ましをセットしてそのまま眠りについた。
一気に意識が落ちていく。
ああ、明日は朝練があったから孝明が家に来るかも知れない。
早く………起きない…………と…………。
…………………………
…………………
…………
▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩
◆白井家
翌日AM5:00
ピピピッピピピッピピピッピピピッピピピッ
ピピピッピピピッピピピッピピピッピピピッ
バンッ
「う、起きない……と??」
あれ?
今、僕は朝の目覚ましを止めたよね。
だから部屋は自室のはず。
なら、今の女の子の声って!?んん?
何だ?
この細くて白くて小さい手は?
はえ?何で僕の思い通りに動くんだ?
バサッ
えっええっ…………?
いきなり前が髪で塞がれた?!
姉ちゃんがイタヅラでカツラを被せたのかな?でも、自室は鍵を閉めたよね?
「ほえっ?髪を引っ張ったら痛い!この長い髪、僕の地毛だ?それに何で僕の寝間着がダブダブ???えっ?僕の口からの声が高くなってる!?」
何なのコレ?
声が高いって、さっきの女の子の声って僕?
それに明らかに僕の寝間着なのにやたらにデカイって事は、僕が縮んだって事?!
訳がわからないよ。
じゃじゃあ、今の僕って一体どんな姿!?
ダンッバタンッ
ばたばたばたばたっ、タダッタンダンダンッ
僕はパニックになり自室から駆け出すと、洗面台のある浴室を目指して階段を駆け降りる。目指すは洗面台の鏡だ!
ばたばたばたばたっ
「了!いつも言ってるでしょ。階段は駆け降りたら危ないって。それに冷蔵庫にあった私の化粧水、無くなってるんだけど了のせいでしょ!聞いてる、了!!」
「ゴメン姉ちゃん!今、緊急事態だから!」
「え?だ、誰!?」
炊事場で朝ごはんの用意をしていた姉ちゃんに怒鳴られたけど今それどころじゃない。
先ずは自身の状態を確認しなければ!
バタンッ
浴室のドアを閉め、洗面台の鏡に向かう。
はあはあはあはあっ
「な、なんだ?内股になり易くて走り辛い。背丈のせいか色んな物に高さを感じる?!」
声が高い事といい一体何が起きてるんだ!?
そして僕は洗面台の鏡を覗き込んだ。
「??!」
そこには、まるで物語に出てくるような儚そうで透明感のある黒髪の美少女がいた。
その美少女はとてもビックリした顔でこちらを見ており、戸惑いを隠せないようだ。
いや、コレは洗面台の鏡だよね!?
じゃあじゃあ、今、鏡に映ってるのは……
「ぼ、僕?!」
ペタンッ
そのまま床に座り込んだ僕。
放心状態で考えがまとまらない。
一体、何が何だと!?
ドンドンドンッ
「?!」
「ちょっと!?アナタはどちら様?ここを開けて下さい!弟の友達ですか?」
「あ、開いてる……」
「え?何!?」
「鍵閉めてない。開いてるから!!」
シーンッ
ギギィイイッ
ゆっくりとドアが開き、何故か申し訳なさそうな姉ちゃんが顔を出す。
はあ、この状況、どう姉ちゃんに説明すればいいんだ?
「あ、あの、何か弟が貴女を連れ込んだようで、どうもすみません。まさかあの子に、女の子を連れ込む勇気があるとは思いませんでしたから。騙されて、その、連れ込まれたのよね?でなければ、貴女のような可愛い子が弟の寝間着を着てるわけないもの。ああ、親御さんにどう言い訳をすれば!?あ、了は?こんな事をした張本人は一体何処かしら!」
酷!
姉ちゃん、日頃から僕をそんな風に見てたのか?!
何か、怒りが沸々とこみ上げてきたんだけど。
「いや、張本人なら目の前にいるけどね」
「はい?」
クイックイッ
「張本人は目の前って言った」
僕は床に座ったまま、自身を二回指差して姉ちゃんに伝えた。
姉ちゃんはまだ信じられないみたいで、首を捻った後、僕の男の姿を捜してキョロキョロしている。
「………………」
「………………」
「了!何処にいるの!!弱ったわね。了が見当たらないわ」
「だから了はここにいるって」
「はあ、お嬢さん?了を庇うにしてもそんな嘘が通じる訳ないでしょう?あの子は何処?アナタもこんな事しちゃ駄目です。見たところまだ中学生でしょ!もっと自分を大切にしないといけません。了は何処なの?!」
駄目だ。
姉ちゃん、全く僕の言葉を信じない。
どうしようかな。
あ、そうだ。
「武智 小五郎は姉ちゃんの彼氏。だけど意外と奥手で困ってる。もっと攻めてきて欲しいなぁ……」
「ちょ!?何でその事?」
「次のデートじゃ、もっと積極的に攻めたいけど、胸の下のホクロが大きいから恥ずかしい。どうしよう」
「な、何でアナタがそんな事まで!?」
「日記を書くのに何故か独り言を言ってるから、隣部屋にどうしても聞こえるんだよ」
「な?!!」
メガネを外してジッと、僕を見つめる姉ちゃん。
ジリジリと顔を近づけてくる?!
いや、近い、近いって!
「その口元のホクロ、弟と同じ!?」
唖然と立ち尽くす姉ちゃん。
どうやら、やっと信じてくれたらしい。
とりあえず一息つけたけど、もう一つの問題が頭をもたげる。
今日の学校、どうすればいい?
白井家 Pm19:30
白井 了視点
ガタンッ
「只今。ああ喉が乾いたぁ。姉ちゃん?」
その日僕は、高校の部活が終わって汗だくで家に帰ってきていた。
父ちゃんと姉ちゃん、僕の三人暮らしのこの白井家。
この時間なら姉ちゃんが夕飯を作ってたりするんだけど、その日はどういう訳か姉ちゃんが居なかった。
父ちゃんは夜勤勤務で夜は居ないし、真っ暗な家の玄関を手探りで電気を点ける。
カチッパッ
「あれ?姉ちゃん?」
一階は真っ暗だったけど二階は明かりが灯って人の気配がする。
明かりがあるのは姉ちゃんの部屋。
「ああ……また亜理砂さんが来てるのかな?」
姉ちゃんの友達の亜理砂さん。
前に鏡の向こうの世界に行っちゃって暫く音信不通だったんだけど、最近帰ってきたんだよね。
だけど、鏡が置いてある姉ちゃんの部屋を出入口にしちゃって買い物だ何だと、異世界とコッチを頻繁に行き来するようになっちゃった。
なんでも向こうはメシが不味いらしくて定期的に買い出しに来てるらしい。
話は分かったけど家は便利な出入口じゃないし、来るたびに姉ちゃんを独占するのは止めてほしい。
最初、亜理砂さんが出入りするようになって凄くワクワクした。
だって異世界だよ!?
ネット小説みたいな事が現実に起きてるんだよ!
それに、向こう側に行った先輩にも会えると思ったら、いても立っても居られなくなって一度、亜理砂さんに連れて行って欲しいって頼んだ事があった。
だけど、鏡の中に途中まで手が入るけど、それ以上は入れなかった。
で、亜理砂さんに向こうの専門家?に聞いて貰ったら、魔力が全く無い人は鏡の往来は不可能だという事が分かったらしい。
聞いた僕はめちゃくちゃ落胆した。
さらに憧れの先輩が向こうで結婚して2児の母だって聞いて、僕の気持ちは奈落のどん底に落ちていった。
僕の初恋の人だったからだ。
そしてその時、僕の青春は終わった。
そう、二度と女の子に興味を持てない程に。
だから僕にとって異世界うんぬんは鬼門だし、二度と関わり合いたくない事柄なんだけど、こう頻繁に亜理砂さんに出入りされると、否応なしに関わりを感じてしまうのが辛い。
「ふうっ、女の話は長いからな。仕方ない。夕飯はカップ麺でもしよう。その前に喉が乾いたなあ」
ヤカンを用意し某メーカーの大盛りカップ麺のフタを空け、粉スープを入れてから熱々のお湯をソコに注ぐ。
チョロチョロチョロッ
「はあ、ホント勘弁して欲しい」
僕は、カップ麺大盛りにお湯を注ぎながら溜め息をした。
今日の夕飯はこれで終わり。
物足りないけど、流石に部活で汗だくの後に夕飯手料理をする気分にはならない。
あ、喉が乾いてたんだった。
冷蔵庫に牛乳でも有るかな?
ガチャッ
「確か、1本残ってたはず……あれ?」
冷蔵庫に牛乳は無かった。
それどころか飲み物らしき物が無い?
いや、1本だけボトルの様な物がある。
「え、コルク栓?まさかワインじゃないよね?」
冷蔵庫に有ったのは古風な茶色のビンにコルク栓をした物。
他に飲み物らしき物は無い。
アルコール関連、父ちゃんは下戸だし、姉ちゃんも僕もその遺伝子を受け継いで飲む事は無い。
それに僕は高校生だしね。
しかし弱ったな。
冷えた飲み物がコレだけって………。
「まあ、いいか。コルク栓開ければ分かる事だし」
とにかく喉の渇きを癒したい。
だけどここは江戸川区。
水道水は良くなったとはいえ、生ぬるい水道水を飲む気にはならない。
キュポンッ
「ん?ピーチの様な匂い。これ果物ジュースじゃん?!やったあ!」
期待して無かったけど、フルーツジュースだったみたい。
安心した僕は、ボトルに口つけして一気に飲み込んだ。
ごくっごくっ
「な、何だコレ?スッゴク口当たりが良くて美味しい?!」
飲んでみたら、病みつきになるほど美味しい?
いや、美味しいでしょ!
「もうちょっと飲んでも?」
ごくっごくっごくっごくっごくっごくっごくっごくっごくっ
プハーッ
「ヤバッ、美味しくて一気飲みしちゃった。何か色々なフルーツのミックス?懐かしい味でまだ飲み足りない気分だ」
カランッ
いつの間にか500ミリリットルくらいのボトル、全部飲み干してしまっていた。
冷蔵庫に有ったんだから別に構わないよね?
人の物を飲んでおいて、その行為を勝手に正当化して罪悪感を誤魔化してみる。
だけど美味しかったんだから仕方ない。
姉ちゃんのだろうけど知らんぷりしとこう。
僕はその後カップ麺を平らげると、そのまま自分の部屋に向かって歩きだす。
ガチャ
「あ、了!えっ、もうこんな時間?!」
丁度、姉ちゃんの部屋の前で姉ちゃんが出て来た。亜理砂さんとの話は終わったらしい。
「亜理砂さん、帰ったの?」
「あ、うん。向こうの自宅に帰ったよ。またコンビニの買い出しに来るって言ってた。夕飯ゴメンね。今から作ろうか?」
「カップ麺で済ませたからいい。明日早いしもう眠いから寝るよ」
バタンッガチャ
僕は申し訳なさそうな姉ちゃんを後にして、自室のドアを閉めて鍵を掛けた。
何か、ものすごく眠くなってる。
腹が満たされて一気に眠気が出たようだ。
部活の疲れが出たのかな?
バサッ
ベッドに横になり目覚ましをセットしてそのまま眠りについた。
一気に意識が落ちていく。
ああ、明日は朝練があったから孝明が家に来るかも知れない。
早く………起きない…………と…………。
…………………………
…………………
…………
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◆白井家
翌日AM5:00
ピピピッピピピッピピピッピピピッピピピッ
ピピピッピピピッピピピッピピピッピピピッ
バンッ
「う、起きない……と??」
あれ?
今、僕は朝の目覚ましを止めたよね。
だから部屋は自室のはず。
なら、今の女の子の声って!?んん?
何だ?
この細くて白くて小さい手は?
はえ?何で僕の思い通りに動くんだ?
バサッ
えっええっ…………?
いきなり前が髪で塞がれた?!
姉ちゃんがイタヅラでカツラを被せたのかな?でも、自室は鍵を閉めたよね?
「ほえっ?髪を引っ張ったら痛い!この長い髪、僕の地毛だ?それに何で僕の寝間着がダブダブ???えっ?僕の口からの声が高くなってる!?」
何なのコレ?
声が高いって、さっきの女の子の声って僕?
それに明らかに僕の寝間着なのにやたらにデカイって事は、僕が縮んだって事?!
訳がわからないよ。
じゃじゃあ、今の僕って一体どんな姿!?
ダンッバタンッ
ばたばたばたばたっ、タダッタンダンダンッ
僕はパニックになり自室から駆け出すと、洗面台のある浴室を目指して階段を駆け降りる。目指すは洗面台の鏡だ!
ばたばたばたばたっ
「了!いつも言ってるでしょ。階段は駆け降りたら危ないって。それに冷蔵庫にあった私の化粧水、無くなってるんだけど了のせいでしょ!聞いてる、了!!」
「ゴメン姉ちゃん!今、緊急事態だから!」
「え?だ、誰!?」
炊事場で朝ごはんの用意をしていた姉ちゃんに怒鳴られたけど今それどころじゃない。
先ずは自身の状態を確認しなければ!
バタンッ
浴室のドアを閉め、洗面台の鏡に向かう。
はあはあはあはあっ
「な、なんだ?内股になり易くて走り辛い。背丈のせいか色んな物に高さを感じる?!」
声が高い事といい一体何が起きてるんだ!?
そして僕は洗面台の鏡を覗き込んだ。
「??!」
そこには、まるで物語に出てくるような儚そうで透明感のある黒髪の美少女がいた。
その美少女はとてもビックリした顔でこちらを見ており、戸惑いを隠せないようだ。
いや、コレは洗面台の鏡だよね!?
じゃあじゃあ、今、鏡に映ってるのは……
「ぼ、僕?!」
ペタンッ
そのまま床に座り込んだ僕。
放心状態で考えがまとまらない。
一体、何が何だと!?
ドンドンドンッ
「?!」
「ちょっと!?アナタはどちら様?ここを開けて下さい!弟の友達ですか?」
「あ、開いてる……」
「え?何!?」
「鍵閉めてない。開いてるから!!」
シーンッ
ギギィイイッ
ゆっくりとドアが開き、何故か申し訳なさそうな姉ちゃんが顔を出す。
はあ、この状況、どう姉ちゃんに説明すればいいんだ?
「あ、あの、何か弟が貴女を連れ込んだようで、どうもすみません。まさかあの子に、女の子を連れ込む勇気があるとは思いませんでしたから。騙されて、その、連れ込まれたのよね?でなければ、貴女のような可愛い子が弟の寝間着を着てるわけないもの。ああ、親御さんにどう言い訳をすれば!?あ、了は?こんな事をした張本人は一体何処かしら!」
酷!
姉ちゃん、日頃から僕をそんな風に見てたのか?!
何か、怒りが沸々とこみ上げてきたんだけど。
「いや、張本人なら目の前にいるけどね」
「はい?」
クイックイッ
「張本人は目の前って言った」
僕は床に座ったまま、自身を二回指差して姉ちゃんに伝えた。
姉ちゃんはまだ信じられないみたいで、首を捻った後、僕の男の姿を捜してキョロキョロしている。
「………………」
「………………」
「了!何処にいるの!!弱ったわね。了が見当たらないわ」
「だから了はここにいるって」
「はあ、お嬢さん?了を庇うにしてもそんな嘘が通じる訳ないでしょう?あの子は何処?アナタもこんな事しちゃ駄目です。見たところまだ中学生でしょ!もっと自分を大切にしないといけません。了は何処なの?!」
駄目だ。
姉ちゃん、全く僕の言葉を信じない。
どうしようかな。
あ、そうだ。
「武智 小五郎は姉ちゃんの彼氏。だけど意外と奥手で困ってる。もっと攻めてきて欲しいなぁ……」
「ちょ!?何でその事?」
「次のデートじゃ、もっと積極的に攻めたいけど、胸の下のホクロが大きいから恥ずかしい。どうしよう」
「な、何でアナタがそんな事まで!?」
「日記を書くのに何故か独り言を言ってるから、隣部屋にどうしても聞こえるんだよ」
「な?!!」
メガネを外してジッと、僕を見つめる姉ちゃん。
ジリジリと顔を近づけてくる?!
いや、近い、近いって!
「その口元のホクロ、弟と同じ!?」
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