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鏡の了▪その四 (別れ)
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◆時は遡って▪美少女コンテスト二ヶ月前
白井家前
白井 了視点
僕が女の子として生活する事に覚悟した数日後、あの特殊な医療機関の配慮により、僕の転校が決まった。
この姿では、男の僕を知る生徒や先生の中、とてもまともな学園生活が望めないと判断したからだ。
既に女の子としてトイレやお風呂での洗礼を受け、姉から男の尊厳を著しく欠いた扱いを貰った僕にとっては至極当たり前の事として納得している。
ただ、唯一の懸念材料といえば、孝明の存在と云えるだろう。
「学校で了が転校すると聞きました。今日は了に会わせて下さい。幼なじみとして彼の考えを聞きたいのです」
「ご免なさいね。まだ、病の後遺症が残っていて、とても人前に出れる状態じゃないのよ」
「………ちょっとでもいいんです。俺はアイツと長い付き合いなんで。外見なんか気にしません」
特別な奇病に掛かり専門の医療機関に近い学校に転校するとした学校への説明。
それに孝明だけが納得せず、連日、家に押しかけるようになっている。
さすがにアイツだけは会って説明が必要か。
思えば幼なじみであり、これ迄の人生で最も長く付き合えた親友と呼べるくらいは仲がいい?とも云える孝明。
このまま理由も言わず離れるのは、いくらなんでも人の道理に反するだろう。
そして僕は姉ちゃんとの話合いの結果、アイツにだけは一度会って話をする事を選択すると決めた。
キイッ
そう決心してアイツと会うと決めたその日、サングラスに目出し帽姿にて、普段人の少ない近くの公園で待っていると、孝明が自転車で公園の敷地内に入ってきて端に止めた。
僕は何故か、手に汗をかいて緊張しているが、平静を装って公園のベンチに座っている。
「了?な、のか」
「…………」
一旦立ち止まって声をかけてくる孝明。
そりゃそうだよね。
背丈も変わって、こんな目出し帽姿だもん。
誰だか分からんのが普通だし。
さて、何て言おう、って、声変わってるから筆談って決めてたんだっけ。
黙って僕の反応を待っている孝明の前で、さっそく背中のリュックから筆談用のノートとペンを取り出して返事する。
(ああ、了だ。僕は喉が辛いので筆談で答える)
「…………病気のせいで転校するって聞いた」
(そうだね。今、患ってる病を治す事の出来る医療機関に近い学校に通うつもり)
「学校に説明した通りだな。今の了にとって転校は必要な事なんだな」
(そうだね……)
「何処に転校するんだ?元気になったら、また会えるんだろう?」
どうするか。
自宅も引っ越し予定だし、僕の男時代を知る人々から離れるのが目的なのだ。
勿論、学校に転校先は知れている。
転校手続きなどでやむを得なかったからだ。
基本、個人情報保護の観点から秘匿される事になるはずだから、それは特に問題はない。
だけど直接、最も身近にいた幼なじみの孝明に教えるのは些かハードルが高い。
しかし彼には色々助けられた事もあるし、いつも親身なったくれたのは孝明だけだった。
親族以外でこれ程仲がいい彼に、このまま何も伝えず別れるのは辛い。
(今は言えない。落ち着いて連絡出来るようになったら一番に連絡する。それでいいか?)
「…………分かった」
スッ
「??」
むむ?何だろう?
孝明が小指を立てて近づいてくる。
まさか男同士で指切りとか?あ、今は違うのか?
サラサラペラッ
僕は思った事を書いて、ありのまま孝明に伝える。
(あ~、孝明君?今どき男同士の指切りって流行らないんじゃない?)
「………………………」
ノートを覗き込んで何故かフリーズしてる孝明。
何で?
ズイッ「!?」
彼はその体勢のまま、顔を僕に近づけてくる?!いや、近い、近いんだけど!
「…………………駄目か?」
「何がっ?うぷっ!!」
「!?」
や、ヤバい?!
慌てて口を塞いだけど思わず喋っちゃった!
ガシッ
「ふぇ!?」
孝明が眉間にシワを寄せて、いきなり僕の両肩を掴む。
い、痛い!怒らせた!?
凄い圧を感じる。
元ラグビー部で何故か、途中から僕と同じ卓球部に転向した孝明。
だけど、その合体は今だにラグビー部のガッシリした体躯のままだ。
そして僕は逆に弱々しい女の子になっていて、その体格差から繰り出される圧力と腕力はヘタをすればアザになるほどかも知れない。
「お前、了じゃないな!どういうつもりだ?ふざけてるのか?」
ま、不味い。
何て弁明しよう!
こんな疑念を持たれてから女の子になっちゃったんだは多分通らない。
「ぼ、僕はっ」
「………………?!」
あ!
肩を掴む力が緩んだ!?
僕はサッと孝明の間合いから逃げると、そのまま訳も分からず走り出す。
何だかこれ以上、孝明と話すのは居たたまれなくなったからだ。
チラ見した孝明は呆然として立ち尽くしたままだった。
孝明?
◆◇◇◇◇
それから三日後、僕ら白井家は住み慣れたこの町を離れた。
結局、孝明からは連絡はなく、僕は親友との面談に他人を送ったという誤解を晴らす事が出来ないまま彼との別れとなってしまう。
まさに後ろ髪を引かれる思いで住み慣れた町を後にする事となった。
新たな住居は東京都内のとあるマンション。
ソコが、あの西園寺女医と特殊医療機関が用意してくれた、白井家の新たな住まいとなるのである。
白井家前
白井 了視点
僕が女の子として生活する事に覚悟した数日後、あの特殊な医療機関の配慮により、僕の転校が決まった。
この姿では、男の僕を知る生徒や先生の中、とてもまともな学園生活が望めないと判断したからだ。
既に女の子としてトイレやお風呂での洗礼を受け、姉から男の尊厳を著しく欠いた扱いを貰った僕にとっては至極当たり前の事として納得している。
ただ、唯一の懸念材料といえば、孝明の存在と云えるだろう。
「学校で了が転校すると聞きました。今日は了に会わせて下さい。幼なじみとして彼の考えを聞きたいのです」
「ご免なさいね。まだ、病の後遺症が残っていて、とても人前に出れる状態じゃないのよ」
「………ちょっとでもいいんです。俺はアイツと長い付き合いなんで。外見なんか気にしません」
特別な奇病に掛かり専門の医療機関に近い学校に転校するとした学校への説明。
それに孝明だけが納得せず、連日、家に押しかけるようになっている。
さすがにアイツだけは会って説明が必要か。
思えば幼なじみであり、これ迄の人生で最も長く付き合えた親友と呼べるくらいは仲がいい?とも云える孝明。
このまま理由も言わず離れるのは、いくらなんでも人の道理に反するだろう。
そして僕は姉ちゃんとの話合いの結果、アイツにだけは一度会って話をする事を選択すると決めた。
キイッ
そう決心してアイツと会うと決めたその日、サングラスに目出し帽姿にて、普段人の少ない近くの公園で待っていると、孝明が自転車で公園の敷地内に入ってきて端に止めた。
僕は何故か、手に汗をかいて緊張しているが、平静を装って公園のベンチに座っている。
「了?な、のか」
「…………」
一旦立ち止まって声をかけてくる孝明。
そりゃそうだよね。
背丈も変わって、こんな目出し帽姿だもん。
誰だか分からんのが普通だし。
さて、何て言おう、って、声変わってるから筆談って決めてたんだっけ。
黙って僕の反応を待っている孝明の前で、さっそく背中のリュックから筆談用のノートとペンを取り出して返事する。
(ああ、了だ。僕は喉が辛いので筆談で答える)
「…………病気のせいで転校するって聞いた」
(そうだね。今、患ってる病を治す事の出来る医療機関に近い学校に通うつもり)
「学校に説明した通りだな。今の了にとって転校は必要な事なんだな」
(そうだね……)
「何処に転校するんだ?元気になったら、また会えるんだろう?」
どうするか。
自宅も引っ越し予定だし、僕の男時代を知る人々から離れるのが目的なのだ。
勿論、学校に転校先は知れている。
転校手続きなどでやむを得なかったからだ。
基本、個人情報保護の観点から秘匿される事になるはずだから、それは特に問題はない。
だけど直接、最も身近にいた幼なじみの孝明に教えるのは些かハードルが高い。
しかし彼には色々助けられた事もあるし、いつも親身なったくれたのは孝明だけだった。
親族以外でこれ程仲がいい彼に、このまま何も伝えず別れるのは辛い。
(今は言えない。落ち着いて連絡出来るようになったら一番に連絡する。それでいいか?)
「…………分かった」
スッ
「??」
むむ?何だろう?
孝明が小指を立てて近づいてくる。
まさか男同士で指切りとか?あ、今は違うのか?
サラサラペラッ
僕は思った事を書いて、ありのまま孝明に伝える。
(あ~、孝明君?今どき男同士の指切りって流行らないんじゃない?)
「………………………」
ノートを覗き込んで何故かフリーズしてる孝明。
何で?
ズイッ「!?」
彼はその体勢のまま、顔を僕に近づけてくる?!いや、近い、近いんだけど!
「…………………駄目か?」
「何がっ?うぷっ!!」
「!?」
や、ヤバい?!
慌てて口を塞いだけど思わず喋っちゃった!
ガシッ
「ふぇ!?」
孝明が眉間にシワを寄せて、いきなり僕の両肩を掴む。
い、痛い!怒らせた!?
凄い圧を感じる。
元ラグビー部で何故か、途中から僕と同じ卓球部に転向した孝明。
だけど、その合体は今だにラグビー部のガッシリした体躯のままだ。
そして僕は逆に弱々しい女の子になっていて、その体格差から繰り出される圧力と腕力はヘタをすればアザになるほどかも知れない。
「お前、了じゃないな!どういうつもりだ?ふざけてるのか?」
ま、不味い。
何て弁明しよう!
こんな疑念を持たれてから女の子になっちゃったんだは多分通らない。
「ぼ、僕はっ」
「………………?!」
あ!
肩を掴む力が緩んだ!?
僕はサッと孝明の間合いから逃げると、そのまま訳も分からず走り出す。
何だかこれ以上、孝明と話すのは居たたまれなくなったからだ。
チラ見した孝明は呆然として立ち尽くしたままだった。
孝明?
◆◇◇◇◇
それから三日後、僕ら白井家は住み慣れたこの町を離れた。
結局、孝明からは連絡はなく、僕は親友との面談に他人を送ったという誤解を晴らす事が出来ないまま彼との別れとなってしまう。
まさに後ろ髪を引かれる思いで住み慣れた町を後にする事となった。
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