狸と狐の好き嫌い

無限飛行

文字の大きさ
1 / 1

二人は嫌いだけど好き

しおりを挟む
狐は、おいなりが好き。
だっておいしい、油揚げがついてるもん。
おいしい、おいしい、油揚げ。
やっぱりこれが一番さ。

狸は、タヌキうどんが好き。
だっておいしい、天カスがついてるもん。
おいしい、おいしい、天カス。
やっぱりこれが一番さ。

狐と狸、二人は山で暮らしてる。
お隣どうしで暮らしてる。
だけど二人は仲が悪い。
どうして仲が悪いのか。

それは天カスが美味しくない、狐が言ったから。
それは油揚げは美味しくない、狸が言ったから。

だけど二人はお隣どうし。
どうしてお隣どうしなの?

それは本当は好きだから。
狐は天カスが、本当は大好きだから。

それは本当は好きだから。
狸は油揚げ、本当は大好きだから。


ある日、こっそり買ってきた。
狐は買ってきた。
狸の好きなカップのタヌキ蕎麦。
こっそりこっそり買ってきた。

ある日、こっそり買ってきた。
狸は買ってきた。
狐の好きなカップのキツネうどん。
こっそりこっそり買ってきた。

お湯を注いで気がついた。
狐は気がついた。
狸の住みかから、おいしいおいしい油揚げの、匂いがするのに気がついた。

お湯を注いで気がついた。
狸は気がついた。
狐の住みかから、おいしいおいしい天カスの、匂いがするのに気がついた。

二人はお互い仲直り。
二人で温か、カップ麺。
一つのテーブルでいただきます。
きつねは天カスを。
たぬきは油揚げ。
仲良く分けて食べました。

だから今日は変わります。
二人はちょっと変わります。

狐はカップ麺のタヌキ蕎麦。
狸はカップ麺のキツネうどん。


たまには、たまには、こんな日も。
あってもいいじゃないですか。



おっと、団体さんがやって来た。
狐の団体さん、きつねバスに乗ってやって来た。
目当ては揚げたて天カスだ。
みんなでタヌキ蕎麦を頂きます。

おっと、団体さんがやって来た。
狸の団体さん、たぬきバスに乗ってやって来た。
目当ては美味しい油あげ。
みんなでキツネうどんを頂きます。


たまには、たまには、こんな日も。
あってもいいじゃないですか。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

青色のマグカップ

紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。 彼はある思い出のマグカップを探していると話すが…… 薄れていく“思い出”という宝物のお話。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

だーるまさんがーこーろんだ

辻堂安古市
絵本
友だちがころんだ時に。 君はどうする?

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

妖精カードバトル

谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】
児童書・童話
この世界では、妖精の力を宿したカードで行うカードバトルが大流行している。 人気があるのは、サラマンダーなど強くて派手な技が使えるカードばかり。 弱いカードであるピクシーは、自分など誰も必要としていないといじけていたが……。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

仔猫の想い

みちのあかり
児童書・童話
仔猫は自分を拾ってくれた男の子が好きだった。 男の子も仔猫が好きだった。 小学生の時代は男の子も猫も幸せだった。 男の子は中学生になってからいじめられるようになった。 そんな姿を見て仔猫は、男の子と話がしたい、慰めたいと願った。 いつの間にか、仔猫は男の子に恋をしてしまったのだ。 仔猫が、男の子と話ができるように、願いをかなえるために、 山の奥の魔法使いに会いに行った。 はたして、仔猫の願いはかなうのでしょうか。

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

処理中です...