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2人のお茶会
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庭に面した大きな窓から暖かい太陽の光がさんさんと降り注いでいる。
天気も良く気持ちのいい午後だ。
紅茶のいい香りが鼻をくすぐった。
「アーモンドのクッキーを用意してもらったぞ。好きだろ?」
私の好きなクッキーを把握してくれていた事に少なからず驚いた。
「たくさん焼いてもらったから好きなだけ食べたらいい。」
にこにこと勧めてくれる。
でも……
「若干食べづらいです、エリック様……。」
私はエリック様の膝の上に座っていた。
「そうか?手を伸ばせば届くだろう?」
言いながらちゅっちゅっちゅと惜しげもなくこめかみや耳や首に口付けを落とされた。
もう口付けを落とされるくらいは慣れてしまった。
しかしながら膝の上というのが落ち着かない。
先程ベッドルームでエリック様にされた提案は午後に2人でお茶をしようと言うものだった。
庭のガゼボはもう少し元気になってからと言われ屋敷内のサロンでお茶を楽しむことになった。
約束の時間にサロンに行けばもうエリック様は先に座っており、お待たせした事を謝罪し向かいの椅子に座ろうとしたところを彼に捕まった。
そしてまるで踊るように彼に引き寄せられると気がつけば膝の上に乗っていた。
いつもこうしていたんだ。
俺たちは結婚してたんだから。
彼曰くいつもこんな風に2人でお茶会をしていたそうだ。
目を丸くすると、先述のセリフが飛んでくる。
そして「駄目か?」と聞かれ、駄目かと聞かれれば駄目じゃない気がするのだ。
結局グッと黙り込み従うしかない。
「俺のも取ってくれ。」
と言われ彼の好きな紅茶クッキーを取った。
あ、と私の顔の横でエリック様が雛鳥よろしく口を開けて待っている。
驚いたもののエリック様は私の腰に手を回しており、その手を離す気はないようだった。
求められるまま口の中にクッキーを放り込む。
上機嫌にもぐもぐと口を動かし美味いなと呟く。
その顔をしげしげと見つめた。
なんというか……エリック様はこれでいいのかしら……
視線に気づいたエリック様が「ん?」と輝くような笑顔と共に問うてくる。
思わずフッと笑ってしまった。
口元にクッキーが付いている。
輝く笑顔も台無しだ。
「ほら。ご自分で食べないからですよ。」
くすくす笑って彼の口元を指で触れると易々とクッキーが剥がれ落ちた。
そして彼の顔を見てサッと血の気が引いた。
エリック様は面食らったような、不意打ちを食らったようなそんな顔をしていた。
昔の事が一瞬で思い出される。
まだ私が学園に通っている頃の話だ。
場所はまさにここだった。
私が焼いたクッキーをエリック様に食べてもらっている時同じような事があった。
私がくすくす笑いながら口に付いたクッキーを指摘すると伸ばした手を思い切り払われたことがあった。
そのままエリック様は席を立ってしまい、戻ってくることはなかった。
同じ事をやってしまった。
凍りついた口をなんとか動かす。
「申し訳ございません。口元を払うなど……」
言い終わる前にエリック様の顔が見えなくなった。
いや、正確にはエリック様の顔が私の首元にうずまった。
ぎゅと腰を引き寄せられる。
思わず身構える。
怒った?怒っていない?
わからない。
「ローズは変わらずローズだな。」
ハラハラとしていたら予想もしない言葉が返ってきた。
「ローズと婚約を結んだ頃同じような事があったんだ。婚約者なのに子供扱いされた気になって手を振り払って逃げたんだ。」
エリック様はあの時のことを覚えていた。
そして……私が無神経だったのだと思い知った。
私が兄や弟にするように馴れ馴れしく口元に手をやったから怒ってしまわれたのだと思っていた。
実際は違う。
エリック様は4大公爵家を継ぐものとして幼い頃から躾けられている。
婚約者も出来、ますます強く自覚を持ち始めていただろう。
そのプライドを傷つけていた。
「でも18歳の俺にも同じ事するんだから、勝手に俺が拗ねてただけなんだよな。」
私の肩に顔を埋めたまま可笑しそうにフフっと笑った。
今更ながら罪悪感を感じていた私の耳にちゅと唇が触れた。
「ああ!俺、今までどうやって生きていたのかな。」
「え?」
唐突に話題が変わり、思わず脱力する。
「この間までの自分が思い出せない。こうして君に触れずに生きていたなんて信じられない。」
そう言うとぐりぐりと肩に顔を押し付けられた。
確かに今は前までのエリック様の影もない。
私も思わず忘れてしまいそうになるけれど、私なんかと触れ合わなくても結構逞しく生きていらっしゃいましたよ。
言えないけれども。
少なくとも雛鳥になってはいなかったわ。
「なあ、ローズ。もっと歩けるようになったら、王立の植物園に行かないか?あそこには異国の植物もあって楽しいと思うぞ。」
歩けるようになったらって……
「歩けないのではなくエリック様が歩かせてくださらないのですよ。」
呆れたように言うとエリック様は諦めたような顔になる。
「やっぱりあまり興味そそられないか……」
「なぜでしょうか?興味はあります。」
「えっ!本当か!?」
こちらの方が驚いてしまうくらい、エリック様が驚いた。
「ほ……本当です……」
至近距離なのに大きな声で言うものだから思わずのけぞってしまった。
王立の植物園はここ数年でできた新しい施設だ。
学園のご令息ご令嬢はこぞって行っていたようだった。
私も学園生だったならばリタと行っていたのかもしれないが、出来た時はもう院生だった。
そう言えば確かエリック様は行ってなかったかしら?
婚約者時代のお茶会で珍しくエリック様から話題を振ってくれた事があった。
それが当時できたばかりの王立植物園の話だった。
友人が行ったと言っていた。異国の花がたくさんあって楽しかったらしい。俺も行くつもりだ。
そう言っていた覚えがあるのだけども。
私は何と返したかしら。
「昔出来たばかりの時にローズを誘ったら断られた。」
ええ?!
さっぱり誘われた覚えなどないのだけれど!
「そんなに意外か?でも異国の花に興味無かったようで友人と行ってこいと言われたぞ?」
瞠目する私を見てからかうように言う。
言葉も出ず、ぶんぶんと首を横に振るしか出来なかった。
「ふ……そうか。大人になるにつれ興味がなくなったのかもな。なら15歳のうちに行っとくか。」
首を振った私を微笑ましそうに見ると肩にちゅ、と口付けを落とされた。
そうだわ。
友人と行くのですかと、またどんな様子か教えてくださいねと答えた覚えがある。
しかし土産話を話してくれる事はなく、それきり植物園の話題が出る事は無かった。
あれは誘われていたの?
少し遠回しすぎないかしら!
てっきり同級生と行くものだと思い込んでいた。
何と言うか……エリック様って……
あまりにも言葉が足りないのではないかしら。
思わずため息が出そうになり私は何とか噛み殺した。
天気も良く気持ちのいい午後だ。
紅茶のいい香りが鼻をくすぐった。
「アーモンドのクッキーを用意してもらったぞ。好きだろ?」
私の好きなクッキーを把握してくれていた事に少なからず驚いた。
「たくさん焼いてもらったから好きなだけ食べたらいい。」
にこにこと勧めてくれる。
でも……
「若干食べづらいです、エリック様……。」
私はエリック様の膝の上に座っていた。
「そうか?手を伸ばせば届くだろう?」
言いながらちゅっちゅっちゅと惜しげもなくこめかみや耳や首に口付けを落とされた。
もう口付けを落とされるくらいは慣れてしまった。
しかしながら膝の上というのが落ち着かない。
先程ベッドルームでエリック様にされた提案は午後に2人でお茶をしようと言うものだった。
庭のガゼボはもう少し元気になってからと言われ屋敷内のサロンでお茶を楽しむことになった。
約束の時間にサロンに行けばもうエリック様は先に座っており、お待たせした事を謝罪し向かいの椅子に座ろうとしたところを彼に捕まった。
そしてまるで踊るように彼に引き寄せられると気がつけば膝の上に乗っていた。
いつもこうしていたんだ。
俺たちは結婚してたんだから。
彼曰くいつもこんな風に2人でお茶会をしていたそうだ。
目を丸くすると、先述のセリフが飛んでくる。
そして「駄目か?」と聞かれ、駄目かと聞かれれば駄目じゃない気がするのだ。
結局グッと黙り込み従うしかない。
「俺のも取ってくれ。」
と言われ彼の好きな紅茶クッキーを取った。
あ、と私の顔の横でエリック様が雛鳥よろしく口を開けて待っている。
驚いたもののエリック様は私の腰に手を回しており、その手を離す気はないようだった。
求められるまま口の中にクッキーを放り込む。
上機嫌にもぐもぐと口を動かし美味いなと呟く。
その顔をしげしげと見つめた。
なんというか……エリック様はこれでいいのかしら……
視線に気づいたエリック様が「ん?」と輝くような笑顔と共に問うてくる。
思わずフッと笑ってしまった。
口元にクッキーが付いている。
輝く笑顔も台無しだ。
「ほら。ご自分で食べないからですよ。」
くすくす笑って彼の口元を指で触れると易々とクッキーが剥がれ落ちた。
そして彼の顔を見てサッと血の気が引いた。
エリック様は面食らったような、不意打ちを食らったようなそんな顔をしていた。
昔の事が一瞬で思い出される。
まだ私が学園に通っている頃の話だ。
場所はまさにここだった。
私が焼いたクッキーをエリック様に食べてもらっている時同じような事があった。
私がくすくす笑いながら口に付いたクッキーを指摘すると伸ばした手を思い切り払われたことがあった。
そのままエリック様は席を立ってしまい、戻ってくることはなかった。
同じ事をやってしまった。
凍りついた口をなんとか動かす。
「申し訳ございません。口元を払うなど……」
言い終わる前にエリック様の顔が見えなくなった。
いや、正確にはエリック様の顔が私の首元にうずまった。
ぎゅと腰を引き寄せられる。
思わず身構える。
怒った?怒っていない?
わからない。
「ローズは変わらずローズだな。」
ハラハラとしていたら予想もしない言葉が返ってきた。
「ローズと婚約を結んだ頃同じような事があったんだ。婚約者なのに子供扱いされた気になって手を振り払って逃げたんだ。」
エリック様はあの時のことを覚えていた。
そして……私が無神経だったのだと思い知った。
私が兄や弟にするように馴れ馴れしく口元に手をやったから怒ってしまわれたのだと思っていた。
実際は違う。
エリック様は4大公爵家を継ぐものとして幼い頃から躾けられている。
婚約者も出来、ますます強く自覚を持ち始めていただろう。
そのプライドを傷つけていた。
「でも18歳の俺にも同じ事するんだから、勝手に俺が拗ねてただけなんだよな。」
私の肩に顔を埋めたまま可笑しそうにフフっと笑った。
今更ながら罪悪感を感じていた私の耳にちゅと唇が触れた。
「ああ!俺、今までどうやって生きていたのかな。」
「え?」
唐突に話題が変わり、思わず脱力する。
「この間までの自分が思い出せない。こうして君に触れずに生きていたなんて信じられない。」
そう言うとぐりぐりと肩に顔を押し付けられた。
確かに今は前までのエリック様の影もない。
私も思わず忘れてしまいそうになるけれど、私なんかと触れ合わなくても結構逞しく生きていらっしゃいましたよ。
言えないけれども。
少なくとも雛鳥になってはいなかったわ。
「なあ、ローズ。もっと歩けるようになったら、王立の植物園に行かないか?あそこには異国の植物もあって楽しいと思うぞ。」
歩けるようになったらって……
「歩けないのではなくエリック様が歩かせてくださらないのですよ。」
呆れたように言うとエリック様は諦めたような顔になる。
「やっぱりあまり興味そそられないか……」
「なぜでしょうか?興味はあります。」
「えっ!本当か!?」
こちらの方が驚いてしまうくらい、エリック様が驚いた。
「ほ……本当です……」
至近距離なのに大きな声で言うものだから思わずのけぞってしまった。
王立の植物園はここ数年でできた新しい施設だ。
学園のご令息ご令嬢はこぞって行っていたようだった。
私も学園生だったならばリタと行っていたのかもしれないが、出来た時はもう院生だった。
そう言えば確かエリック様は行ってなかったかしら?
婚約者時代のお茶会で珍しくエリック様から話題を振ってくれた事があった。
それが当時できたばかりの王立植物園の話だった。
友人が行ったと言っていた。異国の花がたくさんあって楽しかったらしい。俺も行くつもりだ。
そう言っていた覚えがあるのだけども。
私は何と返したかしら。
「昔出来たばかりの時にローズを誘ったら断られた。」
ええ?!
さっぱり誘われた覚えなどないのだけれど!
「そんなに意外か?でも異国の花に興味無かったようで友人と行ってこいと言われたぞ?」
瞠目する私を見てからかうように言う。
言葉も出ず、ぶんぶんと首を横に振るしか出来なかった。
「ふ……そうか。大人になるにつれ興味がなくなったのかもな。なら15歳のうちに行っとくか。」
首を振った私を微笑ましそうに見ると肩にちゅ、と口付けを落とされた。
そうだわ。
友人と行くのですかと、またどんな様子か教えてくださいねと答えた覚えがある。
しかし土産話を話してくれる事はなく、それきり植物園の話題が出る事は無かった。
あれは誘われていたの?
少し遠回しすぎないかしら!
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