年増令嬢と記憶喪失

くきの助

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ラムスター公爵夫妻 執務室にて

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ラムスター公爵夫妻は昼下がり執務室でふたりお茶を飲んでいた。


「下手に私達が介入しない方がいいって言っていたのは正しかったのかしら。」

「言っていたね。お前がね。」

「そうね。私がね。最初からずーっと言っていたわね。」

夫人は言うとハアとため息をつく。

「だってここまで拗らせるなんて思わないじゃないの。」

「結果良かったんじゃないのか、長くかかったけれどな。」

「絶対あの子には才能があると思っていたのに、開花するまで時間がかかったわね。」

「才能?」

「甘やかしの才能よ。」

「そんなものに才能などあるのか?」

「あるわ。ただいきなり甘やかされたら、そりゃあローズも戸惑うわよ。」

「記憶喪失などではない、などとなかなか言い出せないだろうね。」
公爵は少し愉しげに言う。

「ハラハラしながら見ていたけれど……結果、丸くおさまった。そう言う事でいいのかしらね。」

「離婚を言い出された時は焦ったが……。長い時間がかかったが下手に介入しなくて良かったのだろうよ。」

「ローズには長い間エリックの子守をさせて悪かったわ……お茶会の様子をセバスから聞くたびに頭を抱えたものよ。ただ伯爵令嬢と本当に恋人と思っていたとは思わなかったわ。その上ですべていなしていたあの度量はさすがだわ。さすがはうちの嫁よ。」

「エリックは最初からローズしか見えてなかったけどね。まあ、あれじゃあ伝わらないのは当然だ。だと言うのに最後はうまくまとまって良かったじゃないか。」

「そう……そうね。そう思いましょう……。」

そう呟くように言うとしばらく黙った。
しかしすぐ切り替えるように夫人は顔を上げた。

「さあ!休憩は終わりよ。仕事に戻りましょう!」

「もう?」

「もう、よ。離して頂戴。」

そう言われて公爵はしぶしぶ手を離す。
そして夫人は公爵の膝からおりた。


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