変人令息は悪女を憎む

くきの助

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契約と願望 ーブリジットー

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ブリジットは手紙をかいていた。
セドリックは何かにつけ手紙をくれる。
こちらも都度都度送っていた。


私の14の誕生日はアベル様のおかげで素晴らしい日でした。
プレゼントはスラビーズ領のうっとりするような夕暮れの景色でした。
アベル様はこの景色をずっと見せてあげたかった、と優しく微笑んでくださり天にも昇る気持ちでした。


願望のような嘘だった。
ブリジットは手紙を読み返し滑稽さに笑えてくる。

アベルの笑顔など見たことも無いというのに。

誕生日などアベルの字ではないバースデーカードが届いただけだった。


幸せになるのよ。
きっと幸せに。

重い肩の荷を下ろしてこの国に来たはずだった。
来てみればその言葉がずっしりとブリジットにのしかかっていた。

(きっと今の私を知ればがっかりさせる。)

とても幸せではないなどとは言えず、大袈裟なくらいの嘘の手紙を出し続けていた。




街でも悪女の名札をはられそうになり、逃げてきたブリジットはすっかり街から足が遠のいていた。

どこに出かけるわけでもない日々。
それでも毎日頭の先から爪の先まで磨き上げる。
朝は完璧に身だしなみを整える。

カトリが仕事を放棄してからは自分で髪の毛を整えるのに苦労したが今は慣れてしまった。
手伝ってもらわねば着れないドレスは着ないし、今着ているのは手持ちのお金で買った普段着と街歩き用の平民服だけだった。

しかも成長期のブリジットはどんどん服が小さくなっていく。

しかし小さくなった服をみっともなく着るのはブリジットは嫌だった。
乗合馬車に乗り王都の店まで買いに行く。

ふいにここまでしなくってもと言う気持ちになることがある。
誰に見せるわけでもない。
どこに行くわけでもない。
しかし自分を奮い立たせ毎日自分を磨く。

やめたら嘘が自分を飲み込んでしまう。
そう思っていた。

完璧な身だしなみと生活が最後自分を守っている気がしていた。

ブリジットの横でいつでも嘘は大きな口を開けて、油断するのを今か今かと待っているのだ。


そうして過ごしているうちに入籍の日となった。
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