闇の魔法師は暗躍する

yahimoti

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第6話 あの頃

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夜間2時頃だろうか。

コンビニで缶コーヒーを買おうとしている僕に絡んで来る人達がいる。

店内には4人、外に8人程。

「にいちゃんよう、俺たちにもビールをおごってくれないかな?」

あ、網にかかって来た。

「いいですよ、どのぐらいあったらいいかな。」

「いやいや、気前の良いにいちゃんだな、いっそ金でくれよ。」

「いくら要りますか。」

「面倒くせえな全部だよ全部。」

あげるって言っているんだから面倒くさくないと思うんだけどな。

「ちょっと表に出ろ。」

魔法でやっつけるのに良心が痛みにくいいい状態になって来た。

そう言って僕をコンビニの外に引っ張りだす。

お金以外にも何か欲しいのかな?

僕が無抵抗にトコトコ歩いて行くので、いかついカッコのにいちゃん代表の人は転びかける。

コンビニの外に出たところで1ダースのいかついカッコの兄ちゃんに囲まれてしまう。

「財布ごと渡せよ。」

僕はポケットから財布を出す。

交渉役の兄ちゃんが手を伸ばして掴もうとするけどそれは叶わない。
もう手がなくなっているからね。

結界を作って見えなくしているだけなんだけど。

スッパリと手首から先が無くなった自分の腕を見て不思議そうな顔をしている。

周りの兄ちゃん達もまだ何が起こったのか分からないみたいだ。

既にみんな地面に寝転んで暗い夜の空を眺めている。

足場をふにゃふにゃにして底なし沼みたいにしたんだ。

後は地面に溶け込む様に消えてしまうだけ。

いろいろ汚れないので後始末が楽ちんだね。

意識があるまま自分が消えて行くってどんな感じなのか僕にはわからないけれど。

まあまあの魔法の出来栄えだね。

晴れた日の夜、繁華街の近くはとても良い僕の狩場だ。

僕にとって死にたがっているって見える人達がたくさんいるからね。

別に悪そうな人に特定しなくてもいいんだけど、自己満足の良心が死んじゃうと人間じゃなくなっちゃう気がして怖いんだ。

悪いって言ったら人を勝手に決めつけて殺してしまう僕の方がずっと悪いんじゃないかな?

僕は川木平太14歳。

中学2年生と言っても学校には行っていないけれど。

ずっとさぼり。

つまらないから。

だって同級生相手に魔法は使えないし。

行っても話し相手もいない。

まあ、今日はこのくらいにして帰ろう。

帰ると言ってもネットカフェなんだけど。


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