異世界異話 天使降臨

第6話 勇者

「見た、見たよね。あの空から降って来たやつ、激レアだよ、あれ。」

赤い髪の小柄で身に余るような大剣を背負った女の子が仲間の魔法師の女の子に興奮して語りかける。

「見た、あれはURレベル。大当たり。」

水色の髪の魔法師の女の子は抑揚のない声で答えるがそれはいつもの事。
それでも興奮は隠せていない。

「驚いた、あんなのがいたら世界のパワーバランスは大きく変わる。」

ハルバートを背負った金髪の戦士の女の子もうなずいて言う。

「うちらのパーティに欲しい。」

「さっきの光を浴びてから体にバフがかかったみたいで、疲れもなくなったし、体中の古傷も消えてしまった。」

赤い髪の女の子は3年程前に召喚された勇者ルイベルで仲間はそのパーティメンバー。
魔法師はシーリウ、戦士はウエリそれぞれSSR相当のキャラクターだ。

彼女達の周囲でも「毛が生えて来た。」だとか「腰の痛みがなくなった。」「魔獣に喰われた腕が生えて来た」「老眼が治った。」などと人々が口々に騒ぎはじめた。

「かなり強力で範囲の広いエリアヒールを使ったみたいだね。」
シーリウが言う。

「いったい何者なのかしら。」
ウエリが呟く。

「私達にとってのウルトラレアのキャラクターよ。」

ルイベルが勝手な事を言う。

ルイベルは勇者召喚された転生者だ前世は日本人でRPGロストヒストリーワールドをやりこんだゲーマーだ。

ルイベルの名はその時に使っていたキャラクターネーム。

転生特典とゲームの知識でこの世界で魔王以外ではたぶん無敵の勇者だ。

魔王とはまだ遭遇していないからね。

「あれって召喚されたわけじゃないよね。」

召喚なら王宮内の召喚陣に現れるのだから別物だ。

ただスマホ版でプレイヤーがガチャ召喚する時にキャラクターが大聖堂の空中に実体化する事もあるのでその様子に似ていない事もない。

「とりあえず会いに行こう。」

「えー、でもルイベル、あいつ教会に入っていっちゃったよ。」
ウエリが言う。
「そんなの勇者には関係ないわ。なんでもありが勇者特権ってものよ。」
「自分で言う？」

ルイベルの言う通り実際にこの世界ではドルツリア大陸協定によって勇者は各国の王の上位者になる。
各国の王は勇者に従わなければならない。
そして教会もまた例外ではない。

ともあれ勇者達3人は教会に入って行った。