転生勇者の異世界見聞録

第86話 王国筆頭魔法師クリムロンタ1

「おおうっ」

王国筆頭魔法師クリムロンタは歓喜した。

長年追及して来た魔法の真髄を見たと思った。

たまたま王宮に帰って来た王女達はいつものように王宮の中庭でお人形遊びを始めた。

第二王女のクーラウが小さなゴーレムをたくさん作り。

第一王女のルデリーナがゴーレムの家を魔法で作る。

第三王女のイリーナがゴーレムの家の周りに花を咲かせる。

単純にはそうなのだがクリムロンタが知るゴーレムといえば普通丸太の様な胴体に頭と手足をくっつけただけの木偶人形だ。

クーラウのゴーレムは大きさは30cm程で骨格を持ち筋肉や皮膚が柔らかな材質で作られており殆ど人間と変わらない動きをする。

さらに人形のサイズに合わせてドレスや靴を履かせている。

それを何体も同時に動かし会話をさせている。

動きを見ているとホムンクルスの様に生命を持っているかの様だ

ルデリーナは人形サイズの家をほぼ実物を縮小した精密さで作っている。

それは家だけではなく家と家を石畳や街灯などでつなぎ街を作っている。

そこにイリーナがミニチュアサイズの草木を生やし花を咲かせている。

植物の大きさを変えて生成するなんて聞いたこともない。

三人がそれぞれ膨大な魔力量を持ち、精密な魔法制御ができなければこんな遊びは出来ない。

クリムロンタが見たかった魔法はまさにこう言う魔法だった。

戦争だとか魔物を倒すだとかの戦うための魔法ではない、物作りや心を楽しませる魔法。

それがクリムロンタの望みだった。

クリムロンタ自身子供の頃から神童と言われた。

人並み以上の魔力を持ち魔法制御をして王国のために働いて来たし研究も続けて来た。 

それでも届く事のなかった魔法の境地を見た。

妬むなどと言うレベルではない。

見る事が出来た、魔法で出来る事がわかった喜びしかない。

クリムロンタは理由を作っては王女達の人形遊びを見るためにロイス邸に通う様になった。