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第89話 王国筆頭魔法師クリムロンタ4
しおりを挟むクリムロンタの魔法は理路整然として美しい。
ちゃんと魔法をシステムとして理解してロジックを構築し発動している。
わしのように感覚的に力任せに使っているのではない。
彼は指導者になれる魔法師なのだ。
魔力量が少ないので少し疲れてはいるが。
わしは彼の魔力を充填してやる。
彼はビクッとしてわしを見てふらふらとする。
余分に魔力を押し込んで彼の魔力のキャパシティを強引に押し広げてやった。
誰にでも出来る訳ではないが彼にはそれを受け入れる素養があった。
例えば小さくて薄い風船だと空気を入れすぎるとパンクしてしまうが、厚さと柔軟性があれば大きく膨らむ。
そして次からは容易にたくさんの空気が入るようになる。
彼もそれを理解している。
「ありがとうございます。次はもっと余裕をもって、もう少し出来の良いものが作れそうです。」
クリムロンタはそう言って嬉しそうに笑う。
MPを元の100倍ぐらいにしてやったからのう。
風船の例えだとさすがに100倍はめちゃくちゃじゃが死にはせん。最悪死んでも大丈夫じゃ。
勇者の人形も彼にシンクロしているのかくたびれた様にミニチュアの街の中のベンチに座った。
リルがミニチュアのリルをじっと見ている。
するとミニチュアのリルがポンっと人化した。
わしからコントロール権を自分に切り替えてシンクロして見せた。
面白いのでわしも勇者とシンクロして見た。
勇者の人形とシンクロした途端に人形が小さくなってわしのミニチュアになった。
「ありゃ。なんでじゃ。」
これはわしにも理解が出来ん。
シンクロを解くと元の勇者の人形に戻った。
何度か繰り返したが同じじゃ。
他の人形とシンクロしてもそんな事はなかった。
クリムロンタが興味深そうに見ている。
「何かわかったのか?」
「私にもまだどうしてなのかわかりませんが、、、。自身に近い形状をしたものとは親和力が高いのかもしれませんね。」
勇者はめちゃくちゃな事を簡単にしてしまう。
鑑定で見るとMPが元の100倍になっている。
MP100,000 普通の魔法師で500位なのにもう、人間じゃない。
普通こんな事したら死んでしまう。
多分勇者は魔力を押し込むのと同時に私の魔力の器自体も強化したのだろう。
私には魔法のロジックを読む力があるので勇者が私に何かしたのは見えていたのだけれど。
「やりすぎです。」
王宮近くにある魔法研究所の自室でクリムロンタは一人ごとをいう。
それにしても今日もいろいろと興味深いものが見られました。
これらの魔法を理論付けて記録して再現するのが楽しみです。
「最近の師匠なんか変よね。」
研究所員達がこそこそ話しをしている。
「廊下であってもなんか一人ごとをぶつぶつ言ってるし、時々ニマーって笑ってるの。」
「こっわー。」
「きもー。」
「なんかミニチュアの人形作ってたわよ。」
「等身大猫獣人のメイド型ゴーレムにお茶入れさせてたわ。」
「変態ね。」
「けもみみオタク。」
ぼろかす言われています。
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