皇后はじめました(笑)

ルナ

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芍薬

皇貴妃

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次の日、鈴音公主を連れて皇貴妃の宮に行くと宣言すると蓮絡や宮女達が私の支度をし始めた。
「(なんか、初めて顔を見たわ)」
鏡に映る"美皇后"は私に似ていた。ただ違うとすれば私の髪の色と瞳の色だ。元の世界では焦茶の髪色と茶色の瞳だった。
「(この世界って、髪の色が黒だけとは限らないのかな?)」
"美皇后"の髪は深い緑色で瞳は金色。鈴音公主、皇太子は髪の色が黒ではあるが瞳の色は"美皇后"と同じなのだ。
「ねぇ、蓮絡さ‥‥蓮絡。黒髪の人っであんまりいない?」
私の髪を結っている蓮絡に聞いてみる。
「そうですね。この国に黒髪の人は皇族の方しかいません。他の国では逆に青色の髪が皇族特有の色だったりします。私ども使用人には茶色の髪が多いですね。稀に、違う色も見かけますが。」
「そうなんだ。じゃあ、瞳の色も変じゃなかったのね。」
「変」という言葉に蓮絡は引っかかったのか急に力説をし始めた。
「滅相もありませんよ!皇后様のご実家であられる月家の髪、瞳の色は月姫様に愛されてるいる証拠です。」
「月姫?」
「月姫様はこの国の守神様です。皇后様の家系は月姫様を昔助けた事で、月姫様の恩恵を受けました。その結果、深い緑色の瞳から琥珀色に変わったのですから。月を名乗るお家は皇后様のご実家しか許されていません。」
「そ、そうなんだ(嘘くせぇな)」
「それに、月姫様には来月の皇太子妃選びに付き添われますし」
「え?!」
じ、実在すんの?!と心で突っ込む。
「はい。月姫様が宿られる、白.星様です」
「(あ、やっぱでっち上げか。)」
「さぁ、皇后様!お支度を進めましょう!」
髪型が華やかになっていく。大輪のピンク色の花をがつけられ、パールのヘッドドレスをつけられた。
「(絶対、0桁がやばそう)」
庶民代表の私には頭が震えだす。落としたらやばい。壊したらやばい。この2つしか浮かばなかった。
「今日はこの衣装がよろしいかと。」
花の色と同じ色の衣装。派手すぎず地味すぎずと中々上品な色をしている。袖を通すと滑らかな生地でできていることがわかる。
「松陽国の生地は上等ですね!」
と口々に褒める宮女。
「(宮中の生地ってみんな、上等ではなかろうか?)」
やっぱり、庶民の考えは消えない。支度を楽しむ蓮絡達をみると深く考えるのをやめた。 
「(たしかに、この服は可愛いかも)」
初め見た時はコスプレかよ!と思ったが実際着るとワクワクする。
「お支度が整いました。」
「うん。ありがとう。よし、皇貴妃の宮に行きますか!」
私は鈴音公主を連れて、馬車に乗り込んだ。
「(とりま、美皇后としてやりつつ、姫川瑠璃で行こう。)」
宮に着き宮女に案内してもらう。まずめについたのは大きな松の木だった。庭の中央に飾らせており、形が整っている。
「(おー、すげぇ)」
松の木って見応えあるなと人生で初めて思った。こちらの世界にこなければ知らない事実だっただろう。
「さて、入りますか!鈴音」
「はい!母上様!」
鈴音公主と蓮絡を連れて皇貴妃のいる部屋に入ると鈴音公主と同じくらいの男の子2人が走り回っていた。
「へへ!かかってきやがれ!」
「いったなー!」
2人は私達に気づかず、剣(木でできたおもちゃみたいなもの)を振り回す。
「(ようは、チャンバラごっこ)」
4姉妹だったので、そんな遊びはしなかったが、物干し竿をふざけて振り回していたのを思い出す。そのせいで母のお気に入りだった花瓶を欠けさせてしまい、瞬間接着剤でくっつけた。
「(あれ、割ったの私とリンなんだよね笑)」
懐かしいーと思いつつ眺めていると、案内をしてくれている宮女が「第2皇子様、第3皇子様!皇后様がお見えですから、ご挨拶を」というと走り回るのをやめ
「「皇后様!こんにちは!」」
「2人ともこんにちは」
双子ということもあり、見事にはもっている。顔立ちも同じで見分けるのも苦労しそうだが目の色が違う。2人とも髪の色は黒っぽい紫なのだが第2皇子は銀色、第3皇子は黒色だ。
「(将来的に女泣かせだわ。)」
と呑気な事を考えていると
「こら、「こんにちは」では無いでしょう?」
と言って出てきたのは綺麗な女性だった。濃い紫色の髪を高く結い上げ、金の簪でまとめている。赤色の花(種類まではわからない)をつけていて、髪の色によくはえている。
「皇后様、よくお越しいただきました。お入りください」
落ちついた口調の皇貴妃。これが、大人の余裕というやつだ。
「ありがとう、鈴音、第2皇子と第3皇子を頼みます。」
「はい、皇后様。」
私は鈴音公主の乳母に子供達を任せて、侍女とともに客間に通された。お茶をいただいていると皇貴妃が話しを持ちかけた。
「皇后様、お体は大丈夫ですか?」
「えぇ、何回も宮を訪ねられたそうで。ごめんなさい。起きられなくて。」
「いえ!お気になさらずに。皇后様、毒を飲んでしまったのです。無事に生還できて本当になによりです。しかし毒の影響で記憶がないと伺いました。嘆かわしいばかりです!」
ダンっと机を叩く皇貴妃。実際にはなくしてないって言ったら驚くだろうなと思った。
「私は皇后様が眠ってらっしゃった時どれだけ辛かったことか。そして、腹わたが煮え繰り返りそうです。毒を使うとは!本当に卑劣です!そうと緑児、あれを見せなさい。」
「はい」
緑児と呼ばれた宮女(服装が若干豪華なため多分、侍女)は懐から小さな宝石箱のような物を取り出した。
「これは?」
「皇后様が毒を飲まされた日、落ちていたのです。中身は皇后様が飲まされたものと同じです。」
「開けてもいい?」
「どうぞ」
開けると、白色の粉が入っていた。毒というより小麦粉みたいだ。
「宴の席で皇后様がお倒れになり、陛下が秋侍医をおよびになりました。そのあと、陛下の護衛が宴の席と厨房を取り押さえました。宴の会場と厨房の通路を繋ぐ地点に落ちていたのを黄将軍が拾いました。その後、陛下から私に託されたのです。」
「そうなんだ。」
「はい、この毒は入手しづらいと秋侍医が言っていました。」
「入手しづらい」となれば宮女、内官達はありえない。となれば
「私が思うには、私の地位を狙っている人なのはたしかよね。それだけ皇后の座って尊いだろうし。」 
「皇后様‥」
「それに、医療に関する知識がある者、あるいは知識がある者と通じてるか」
医療の知識と言っても、元の世界に比べて医療は発展していない。せいぜい、漢方薬と鍼治療ぐらいではあるが。
「皇貴妃、私は今日あなたにお願いがありきました。」
「何でしょうか?」
今日来た目的を告げる。この反応によっては皇貴妃を信用するかしないかの一歩になるはずだ。
「陛下から寵愛を得ている妃嬪達を突撃しようと思うのです。よければ一緒に来てくださらない?」
そういうと
「もちろんです!私めは皇后様に救われた身です。当時、落ちぶれた私を救ってくださり、ましては第2皇子、第3皇子を守ってくださいました。その上、皇貴妃の位まで‥‥私は皇后様と共に参ります。」
椅子から立ち、膝をつきながら言う皇貴妃。うん、彼女は信頼しても良さげだ。皇貴妃となると位も高いし、狙ってもおかしくない。しかし、先程の話を聞く限り、"美皇后"を慕っているようだ。もし、狙っているのなら、毒は持っておかず破棄する。それに私が来た時に朱貴妃の話しを持ち上げ朱貴妃になすりつける。または、「朱貴妃がやりました」と話しを進めるだろう。それに、私の宮に尋ねた時に毒を盛れたはずだし。
「皇貴妃立ってください。」
「ありがとうございます。」
皇貴妃はお辞儀をして立ち上がった。
「皇貴妃、では妃嬪達の所へ行きましょうかね」
私も椅子から立ち上がり、屈伸をする。
「皇后様、どこをお尋ねに?」
「次?決まってます。朱貴妃の所ですよ」

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