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完成されたパーティーに異物は不要

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「これが聖剣・・・うおおおおおお!力が溢れる!!」



 王国が管理するダンジョンである『試練の祠』の最奥で、台座に刺さっていた聖剣を引き抜き叫ぶ男。

 輝くような金色の髪を肩まで伸ばしたイケメン。銀色に輝く鎧をまとい、背中に背負った宝石のように輝く銀色の盾には傷一つない綺麗な状態だった。



「流石勇者様」

「かっこいい・・・アル一生ついて行くわ!」



 勇者アルドレッドの左右に抱き着いている女性。

 灰色のローブを纏い、大きな宝石の付いた杖を持っている魔術師がエリー。青いショートカットの可愛らしい少女。まるで小学生のような小さな体、しかし魔術師としては一流で冒険者学校で首席で卒業している。



 白い修道服のような物を着て、短杖を腰に刺した僧侶がアンジュ。銀色の髪を腰まで伸ばした美女。出るところが出ているグラマーな体型。大きな胸を勇者に押し付け、光悦とした顔をしている。回復魔法が使える人材はとても貴重で、その中でも高位の回復魔法を使えるのはほんの一握り、それがこのアンジュであった。





 そしてもう一人、勇者たちから離れたところに立っている少年。

 着ている皮の軽装備は所々穴が開いており、肌には青痣や、火傷が目立つ。ぼさぼさの黒髪に目つきの悪い顔。剣一本だけを腰に差している彼はレン。冒険者学校で剣の実力だけはトップであり、卒業後幼馴染のアンジュの誘いで勇者パーティーへと入ることになった。



「それじゃあ帰るぞ!これで俺は最強の勇者となった。帰りの道中も雑魚はお前がやれよ!」



 こくりと頷き、レンは先頭に立ち帰り道を歩く。



「今日はパーっと宴でもやるか!」

「もう。酔わせて何するつもりなの~」



 ダンジョンの帰り道だというのに、腕を組んでイチャイチャするアンジュとアルドレッド。



「そりゃー決まってるだろ?安心しろ。エリーもちゃんと相手してやるからな」

「もう・・・勇者様のエッチ」



 まんざらでもないのか、顔を赤くして勇者を見つめるエリー。





 そんな甘ったるい空気をものともせず、先頭で魔物を屠り、勇者たちの歩く道を切り開くレン。



 











 これは聖剣を持ったチーレム勇者の物語ではない。



 地味で特殊な力を持たない、ただの剣士であるレンを主人公とした物語。







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 この世界では、成人・・・15歳で天啓を得る。

 ある者は剣士、ある者は商人、ある者は農民など、自分の才能にあった職業を、神様から教えられる。





 中には特殊な職業を天啓で教えられることがある。



 それが勇者、賢者、聖女である。



 勇者は魔法、剣術、盾術など、おおよそ戦いに必要な要素すべてに適性があり、才能を伸ばすことで他の追従を許さないほどの強さを得る。

 それに、聖武具という勇者の強さをさらに補助する武具も存在する。これを装備した勇者は正に無敵。

 それ故勇者という職業を天啓で得たものは、国を挙げて保護される。



 賢者は魔法の適性が高く、知能が高い。代々賢者と呼ばれる者たちは、いつの世も魔法技術に革命を起こし、戦えば高い魔力と多種多様な魔法によって、数多の敵を滅ぼす。

 賢者の働きによって国は豊かになるとされ、勇者同様、国から手厚い保護がなされる。



 聖女は治癒魔法という特殊な魔法への適性が、特に高い者に与えられる職業。

 僧侶とは違い、献身的な努力を重ねることにより高位の治癒魔法を使える。その治癒魔法は欠損をも治すと言われ、まさに神の御業である。

 聖女は教会と言われる神を信仰する組織から保護され、治癒魔法を覚える。代々聖女は、各地の孤児や、傷ついた人々を癒すために、世界各地を回っていた。それ故聖女こそが女神の生まれ変わりだともいわれている。







 聖剣を手に入れた勇者アルドレッド。賢者であるエリー。聖女のアンジュ。



 これが王国の最強のパーティーである。



 そんな特殊な職業のパーティーにいるただの剣士であるレン。彼が追い出されるのも当然と言えた。









「俺は聖剣を手に入れ最強無敵となった。言いたいことはわかるな?」



 アルドレッドは吐き捨てる様にレンに言った。

 レンは呆然とアルフレッドを見ている。



「チッ!なんとか言えよ!!・・・ってお前は喋れないんだったな」



 こくりと頷くレン。彼はとある事がきっかけで、幼い頃に喋ることが出来なくなってしまったのだった。



「幼馴染のアンジュも苦労しただろ?こんな言葉も話せないゴミの面倒を見て・・・けなげな奴だよ」

「そうね。使えると思って面倒を見てきたけど、もう必要ないもの。レン言いたいこと分かるよね?」



 レンは喋ることが出来ず、人とコミュニケーションをとることが出来なかった。だから代わりにアンジュが緩衝材となっていろんな人との諍いをおさめていた。



「私たちは聖剣を手に入れたことで完成した。だからお前とは今日で終わり」



 エリーは無慈悲にレンに追放の旨を言う。

 レンはコクリと頷く。自分の持っていたカバンから小さな袋を取り出す。

 今まで溜めていたお金の入ったその小袋をアンジュに渡そうとする。



「あ”・が・ど・・」



 レンは無理やり声を出す。彼は感謝していた。こんな自分に付き合ってくれた幼馴染に。



 彼女のおかげで自分は何とか生きてこられた。自分が追放されるのは別に構わない。



 彼女が幸せに生きてくれるならそれでよかった。



 そのお礼として、彼女に今まで溜め続けたお金を渡そうとした。金貨がいっぱい詰まった小袋を・・・。



「いらないわよ」



 バシッと渡そうとした小袋が叩き落される。中に入っていた金貨が地面に散らばる。



「アンジュを金で買おうってか?はははっアンジュは既に俺のもんだ!心も体もな!」



 そう言ってアルドレッドはアンジュの腰に手を回す。



「娼婦と勘違いしてるの?最低」



 アルフレッドに抱き着いているエリーが見下したような目でレンを見る。



 レンは床に散らばっている金貨を拾い集めるために屈む。通行の迷惑とでも考えたのだろう。

 屈んだレンを思いっきり蹴飛ばすアルフレッド。



「さっさと目の前から消えろゴミがっ!」



 蹴られた衝撃で吹き飛んだレンは、受け身を取って立ち上がる。そのまま立ち去るレン。



 ばら撒かれた金貨は、エリーが拾い集めていた。



「肉壁としてしか役に立たない奴だったけど、こんなにため込んでたのね~」

「今日はこれでいい宿に泊まれる」

「そうだな!スイートルームにでも泊まろうぜ!あそこは大きな風呂が部屋に付いてんだぜ」

「今日は三人で混浴ね~私が隅々まで洗ってあ・げ・る!」

「私も手伝う」

「ははははっ!せっかくのいい部屋なのに夜は眠れなさそうだな!!」





 下品な会話を往来で大きな声で話しながら歩く勇者パーティー。





 これが彼らの絶頂期であった。

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