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自己犠牲
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王国のスラム街。今にも崩れそうな民家がいくつも建ち、そこに住む人はみんな痩せこけ、ボロ布のような服を身にまとっている。
獣人が数多く目立つが、普通の人もぽつりぽつりと存在している。
そんな場所にも教会の建物があった。
建物の中は、掃除は行き届いているのか、ホコリっぽくはないが、並んでいる長椅子はところどころ壊れ、ステンドガラスにはヒビが入っている。
そんな中、磨かれた綺麗な女神像に、両手を組んで祈る人が1人。
聖女アンジュであった。
「せいじょさまーべんきょうのじかんー」
教会の奥から現れたのは、小さな獣人の女の子。
「あら?もうそんな時間なのね。それでは今日も始めましょうか」
そう言って女の子に微笑みかけるアンジュの姿は、頬は痩け、腕も心做しか細くなっていた。
走る女の子を追い、教会の奥に入っていくアンジュ。
そこには小さな子供たちが十数人座っていた。
それほど大きくない部屋。元々は応接間だった所を、アンジュが片付けて、孤児を受け入れるための部屋にしたのだ。
「それでは・・・今日は文字を覚えましょうか」
そう言ってアンジュは薄い木の板にナイフで文字を書いていく。
アンジュが望んで受けた教会の試練。それはこの地区の協会の運営だった。
別に孤児を引き取る必要はなかった。マザーが言い渡したのは、ここでの配給や、病気や怪我の治療などを行って欲しいと言う要望だった。
しかしアンジュは、やり過ぎていた。
自身の給金を全てスラム街の配給に当て、自分の食事すらとらず、捨てられていく孤児を救う。
朝から昼に子供たちに文字や四則計算を教え、昼に料理を作ってスラム街の人々に配り、その後明け方まで訪問診察に回る。
睡眠時間は多くて1時間。水以外を口にしなくなって既に30日ほど経っていた。
そして今日の勉強会も終わり、配給するための料理を作っているときだった。
調理場に多数の僧侶達が入ってくる。
「聖女様。マザーがお呼びです」
「・・・。私はまだここで成すべきことが沢山あります」
「やり過ぎです!!マザーは無理やりにでも連れてこいと仰っていました。そうでもしないと・・あなたがここで死にそうで・・・ここでの仕事は我々が引き継ぎます。安心して聖女様は聖女様の使命を果たしてください」
「そう・・。それなら少し安心ね」
僧侶立ちに囲まれ、教会を後にするアンジュ。
「せーじょさまどこかいっちゃうの!?やだやだ!!」
さっきの女の子に抱きつかれるアンジュ。
アンジュは跪き、その女の子の頭を微笑みながら撫でる。
「ごめんね。どうやら私に仕事があるみたいなの。大丈夫。また会えるから待っててくれる?」
「ほんと?また会える?」
「ええ。きっと会えるわ」
ぽんぽんっと名残惜しそうに女の子の頭を撫でると、アンジュは立ち上がる。
「私が居なくなっても、勉強をサボっちゃダメよ?絶対にあなた達の役に立つから・・・」
「うん!分かった!!」
泣きそうな顔から笑顔に変わる女の子。その様子を見て、アンジュは安心したように微笑むのだった。
「やりすぎですよ聖女様」
教会の総本部にて、マザーがアンジュにそう言う。
「私はそうは思わなかった。それだけです」
「自信を大事にできない人が、どうして他人を大事に思えるでしょうか。あなたは他の人にも・・・例えば、あなたの代わりにあの協会に入った僧侶たちにも、同じことをしろと仰りますか?」
「・・・」
「罰を求めるのは結構ですが、あなたが死んでは元も子もありません。ひとまず3日で体調を整えなさい」
「はい。マザー?私を呼び出したのはそれだけの為に?」
「いいえ。体調を整えた後、私と一緒に帝国へと行っていただきます」
「帝国?」
教会内の認識では、王国にこそ虐げられている人が多く、帝国はそれほどでもない。故に教会の総本部は王国にあり、帝国にはそれほど熱意を向けていなかった。
そんな場所に聖女が行く意味は?
「レンに会えるんですか?」
何かを察したように言葉を漏らすアンジュ。
「いいえ。今回は違います。まあもしかしたら会えるかもしれませんが、それが目的ではありません」
「じゃあどうして・・・」
「そうですね・・・貴方の使命を果たしに・・・とでも言えばいいでしょうか」
そう言ってマザーはアンジュに微笑んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁはぁ・・・た・・・助かったぜ・・・」
「いえいえ。貴方はまだ死ぬには早いですから・・・」
「くっそ!俺は勇者だぞ!?なんでこんな仕打ちを受けなければならない!!下民は俺を讃え、這いつくばって、喜びの笑みを浮かべてすべてを差し出すべきだろ!?くそ!くそ!くそ!」
「すべてを取り戻しませんか勇者様?地位も名誉も尊厳も、女も金もあらゆる贅沢を・・・取り戻せる方法がありますよ?」
「な・・・なんだとっ・・・俺は何をすれば!?」
「簡単ですよ。魔王を倒すだけの簡単なお仕事です」
獣人が数多く目立つが、普通の人もぽつりぽつりと存在している。
そんな場所にも教会の建物があった。
建物の中は、掃除は行き届いているのか、ホコリっぽくはないが、並んでいる長椅子はところどころ壊れ、ステンドガラスにはヒビが入っている。
そんな中、磨かれた綺麗な女神像に、両手を組んで祈る人が1人。
聖女アンジュであった。
「せいじょさまーべんきょうのじかんー」
教会の奥から現れたのは、小さな獣人の女の子。
「あら?もうそんな時間なのね。それでは今日も始めましょうか」
そう言って女の子に微笑みかけるアンジュの姿は、頬は痩け、腕も心做しか細くなっていた。
走る女の子を追い、教会の奥に入っていくアンジュ。
そこには小さな子供たちが十数人座っていた。
それほど大きくない部屋。元々は応接間だった所を、アンジュが片付けて、孤児を受け入れるための部屋にしたのだ。
「それでは・・・今日は文字を覚えましょうか」
そう言ってアンジュは薄い木の板にナイフで文字を書いていく。
アンジュが望んで受けた教会の試練。それはこの地区の協会の運営だった。
別に孤児を引き取る必要はなかった。マザーが言い渡したのは、ここでの配給や、病気や怪我の治療などを行って欲しいと言う要望だった。
しかしアンジュは、やり過ぎていた。
自身の給金を全てスラム街の配給に当て、自分の食事すらとらず、捨てられていく孤児を救う。
朝から昼に子供たちに文字や四則計算を教え、昼に料理を作ってスラム街の人々に配り、その後明け方まで訪問診察に回る。
睡眠時間は多くて1時間。水以外を口にしなくなって既に30日ほど経っていた。
そして今日の勉強会も終わり、配給するための料理を作っているときだった。
調理場に多数の僧侶達が入ってくる。
「聖女様。マザーがお呼びです」
「・・・。私はまだここで成すべきことが沢山あります」
「やり過ぎです!!マザーは無理やりにでも連れてこいと仰っていました。そうでもしないと・・あなたがここで死にそうで・・・ここでの仕事は我々が引き継ぎます。安心して聖女様は聖女様の使命を果たしてください」
「そう・・。それなら少し安心ね」
僧侶立ちに囲まれ、教会を後にするアンジュ。
「せーじょさまどこかいっちゃうの!?やだやだ!!」
さっきの女の子に抱きつかれるアンジュ。
アンジュは跪き、その女の子の頭を微笑みながら撫でる。
「ごめんね。どうやら私に仕事があるみたいなの。大丈夫。また会えるから待っててくれる?」
「ほんと?また会える?」
「ええ。きっと会えるわ」
ぽんぽんっと名残惜しそうに女の子の頭を撫でると、アンジュは立ち上がる。
「私が居なくなっても、勉強をサボっちゃダメよ?絶対にあなた達の役に立つから・・・」
「うん!分かった!!」
泣きそうな顔から笑顔に変わる女の子。その様子を見て、アンジュは安心したように微笑むのだった。
「やりすぎですよ聖女様」
教会の総本部にて、マザーがアンジュにそう言う。
「私はそうは思わなかった。それだけです」
「自信を大事にできない人が、どうして他人を大事に思えるでしょうか。あなたは他の人にも・・・例えば、あなたの代わりにあの協会に入った僧侶たちにも、同じことをしろと仰りますか?」
「・・・」
「罰を求めるのは結構ですが、あなたが死んでは元も子もありません。ひとまず3日で体調を整えなさい」
「はい。マザー?私を呼び出したのはそれだけの為に?」
「いいえ。体調を整えた後、私と一緒に帝国へと行っていただきます」
「帝国?」
教会内の認識では、王国にこそ虐げられている人が多く、帝国はそれほどでもない。故に教会の総本部は王国にあり、帝国にはそれほど熱意を向けていなかった。
そんな場所に聖女が行く意味は?
「レンに会えるんですか?」
何かを察したように言葉を漏らすアンジュ。
「いいえ。今回は違います。まあもしかしたら会えるかもしれませんが、それが目的ではありません」
「じゃあどうして・・・」
「そうですね・・・貴方の使命を果たしに・・・とでも言えばいいでしょうか」
そう言ってマザーはアンジュに微笑んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁはぁ・・・た・・・助かったぜ・・・」
「いえいえ。貴方はまだ死ぬには早いですから・・・」
「くっそ!俺は勇者だぞ!?なんでこんな仕打ちを受けなければならない!!下民は俺を讃え、這いつくばって、喜びの笑みを浮かべてすべてを差し出すべきだろ!?くそ!くそ!くそ!」
「すべてを取り戻しませんか勇者様?地位も名誉も尊厳も、女も金もあらゆる贅沢を・・・取り戻せる方法がありますよ?」
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