声の出ない少年と心を読む少女

てけと

文字の大きさ
34 / 44

デートです

しおりを挟む
「しっかし・・・謁見するのに3日もかかることになるとは・・・」

「いえ、辛くはないですよ?さすが帝都というだけあって、美味しいものに物珍しいものもあるですから・・・それにレンも隣にいますし・・・」

「そうですねぇ・・・流石皇帝というべきですか、滞在費にこんなにお金をくれるとは・・・」

 帝都を二人並んで歩くレンとマリー。帝都に来た当初は、あまりの値段の違いに二人して顔を青くしていた。
 調子に乗ったマリーが甘味を食べ歩き、途中でマリーのへそくりはすべて消えた。
 レンはほぼお金を使っていなかったこともあり、何とか宿代と数日過ごすだけのお金は持っていた。

 目の前にご馳走があるのに食べられない。そのことにマリーは店の前を通るたびに唸り声をあげ、レンが苦笑いをしていた。

 そして帝都に来て二日目、目的である皇帝の謁見に向かい、門番をしていた衛兵に手紙を渡すと、衛兵が城の中に入っていき・・・少しすると慌てたように走って出てきた。

 言われたのは、3日後の朝にもう一度城にくる事。そして渡されたのは滞在費として渡された大き目の袋。中には金貨がぱんっぱんに入っていた。

「でもちょうどいいです。行きたい所とか、食べたい物とかいっぱいありますし!この際豪遊しちゃいましょう!!」

「ははは!さすがに私といえど、それだけの金貨分食い尽くせませんよ!え?宿を変えるのが先?珍しいですね、屋根さえあれば何でもいいレンが宿に拘るなんて・・・」

 レンはポリポリと頬を掻き、明後日の方向を見る。

「なっ!?・・・そんなに想ってくれるのは・・・嬉しいです・・・もう!行きますよ!まずは腹ごしらえからです!!」

 マリーはレンの手を引き速足で歩く。
 頬が緩みだらしない顔をしているのを見られたくない為なのか。しばらくマリーはレンの前を歩き続けた。


 その後、冒険者ギルドへと顔を出す。
 本当はクエストを受けて、少しでも金を稼ごうと思っていたのだが、それも受けなくてよくなった。
 ここに来たのは情報を得る為だった。
 クエストは帝都の物価が高い為か、どれも割高になっていて、冒険者にとってはありがたい事だった。

「うーん・・・やっぱり難易度が上がってますね」

 今までに比べて要求される冒険者ランクが上がっていた。
 ダンジョンの難易度も変更され、ワンランク上を想定されている。

 その理由についてはこう説明されていた。

『ダンジョンの難易度の変更について

 100年に一度の現象である黒陽が確認された。太陽が月に食われ、大陸の魔素の濃度が上がり、魔物の強化と進化を確認。
 よってクエストの内容を更新するとともに、今までより魔物が凶暴かつ狡猾になったと認識せよ

 冒険者諸君の安全と検討を願う』

「まあ本当のことなんて言えないですよね」

 魔王という世界の脅威が復活しつつあるなんて、大っぴらに公開はできないだろう。すればたちまち世界は混乱し、人々は暴走を始めるだろう。

「とは言え復活しても私たちにできることはないです。ただ・・・難易度が上がるのはしんどいですねぇ」

「・・・レンが守ってくれるなら心強いです」

 そう言ってマリーは、レンと繋いでいた手に少し力を込める。

「さて!仕事をするという予定も無くなったですし?明日から謁見まで少し暇ですね!」



「というわけで・・・デデ・・デートしましょうか!レン!」


 デート?と言わんばかりに、レンは首を傾げるのだった。





 翌日。町を歩くレンとマリー。その服装は、いつもの冒険者といういで立ちではなく・・・。

 マリーは白いワンピース。レンは黒いズボンに白いシャツに薄い色のベージュのベストを着ていてかなりラフな格好になっていた。

「いつもと違う姿のレンもなかなかカッコいいですね!!」

「当たり前です!これはで・・・デートなんですから・・・可愛い!?ふへへ・・・まあ悪い気はしないですね」

 二人で並んで歩き、たどり着いたのは大きな劇場だった。

「デートの定番といえば劇場ですよね!演目は『勇者と聖女の純愛物語』です!ずっと見たかったんです!」

 そう言ってうきうきと劇場に入っていくマリー。それに続いてレンも劇場に入っていく。
 



 そして数時間後・・・。

 入った時とは違い、げんなりした様子のマリーと、特に変わることのないレン。

「原作通りに劇をやれです・・・なんで曲解されてるんですか・・・」

 ポツリと愚痴をこぼすマリー。周りの観客たちはどこか満足気なのに、マリーだけはわかりやすく肩を落としている。

「なんでメインヒロインの聖女がその他の女扱い!?というか純愛!!純愛ってなんですか!?ハーレムは純愛だった!?というか出てくるヒロイン全員ちょろすぎません!?お前ら勇者が好きなんじゃなくって勇者の特別な力が好きなんだろ!?です!!まっっっったく理解できません!!わがままで常にかっこつけてて、脇役は男女問わず勇者を引き立たせるために簡単に死んでいきますし・・・『お前の死は無駄にはしない・・・』とか『待ってろよ!俺がすぐに救い出してやる!』とか言いつつ、ハーレムメンバーといちゃつかれても何も入ってこねぇです!!だいたい・・・」

 レンは苦笑いをしつつマリーの愚痴を静かに聞き続けた。

 ちなみにマリーの機嫌は、お昼に食べたふわっふわの甘いパンを食べる頃には直っていた。



「わふー・・・ほのかに甘いパンに、はちみつの優しい甘み・・・そしてコクのあるバターとのコントラストが素敵でしたね・・・」

 光悦とした表情でお昼ご飯の感想を述べるマリー。どうやら完全に劇の事は忘れたようだ。

「ん?なんでデートに誘ったかです?それは・・・この間は私がレンに素敵な景色を見せてもらいましたからね。次は私がレンを楽しませる番かと思って・・・?」

 レンは少し微笑み、マリーの頭を優しく撫でる。

「・・・こちらのセリフですよレン。ありがとうです。私を連れだしてくれて・・・私はいまとっっっっても幸せですよ」

 マリーは頭を撫でていたレンの手を取り、頬ずりしてそのまま手をギュッと握る。

「放さないでくださいねレン?私はレンが嫌がっても放しませんけどね!」

 そして二人で手を繋いで歩き出―――







 そうとすると、目の前には跪く女性。先日マリーを暗殺しようとしていたドロシーだった。

「レン!?」

 レンは腰にある剣の柄に手をかける。
 すると跪いたドロシーはおずおずと剣を両手で差し出す。

「レン様。私にもう敵意はないっす。もしそれでも許せないなら・・・どうぞ私の首を落とし下さい」

 ピタッと剣は動きを止める。そして差し出された剣をとる。
 鞘から少しだけ出すと、錆びてボロボロだった剣が顔が映るほどにピカピカに磨かれていた。
 
「どういうことですレン?恋人になって間もなくもう浮気です?」

 へ?と言う顔をし、ぶんぶんと首を横に振るレン。

「マリー様。私とレン様はそう言う関係じゃないっす。いわばご主人様と奴隷のような物と思っていただけッ!?」

 レンが差すような目線でドロシーを見る。

「ゾクッッと来たっす!その目線が堪らないっす・・・あぁ・・・」

 光悦とした表情で座り込むドロシー。

「レン?説明を求むです!!・・・ふむふむ・・・なるほど?」

 レンはマリーが狙われていたことを伏せ、あらかた真実を語る。

「それで・・・なんでこうなるです?ドロシーでしたっけ?」
「わん!!じゃなくって・・・はいっす!」
「お前は何がしたいんです?レンの恋人はすでにいます。間に合ってるのでさっさと回れ右してゴーホームです」
「いえそう言うのはいいっす。甘いものは苦手っすから。ただ・・・レン様とマリー様のお傍に控えさせていただきたいと思ってるっす」
「・・・却下です」
「ええ!?せっかく忠誠を誓うにふさわしい人物を見つけたのに・・・あんまりっす!!」

 しっしっと手を振るレン。

 しかしドロシーは諦めなかった。

「こちら・・・つまらぬものですが、マリー様に献上したく思うっす!」

 ドロシーが差しだしたのは包み紙に包まれた手のひら大の物。

「我が里に伝わる極上の甘味・・・その名もどらやきっす!」

 マリーは受け取り、包み紙を開き、口に運ぶ。そしてマリーはくわっッと目を見開き・・・。

「んまい!!」

 あっという間に一個食べきってしまうマリー。

「私がいれば便利っすよ~別にレン様と恋仲になるつもりもないっす。ただ便利な雑用係が増えた・・・ペットを飼うようなもんですよ?」

「むむむ・・・」

「なんならもう一個あるっすよ?」

 スッと胸元からどらやきを取り出す。

「むむむむむ~・・・仕方ないですね!それをさっさと寄越して消えるです」
「やった!!では傍に控えているので、用事があるときは手を二回鳴らしていただければ!!」

 マリーにどらやきを渡し、姿を消すドロシー。

「ん?いいのかって・・・別にいいんじゃないです?慕われるのは悪くない事です。仲間が増えるのは・・・きっと私たちにとっていい事だと思うです。それよりも・・・デートの続きです!!」

 マリーはレンに手を差し出す。

 少し微笑んでレンはマリーの手を取り・・・。帝都の中を再び歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...