【完結】ヤンデレに恋愛フラグを仕込まれた俺の末路

かおり

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第4話 偶然なんて、作れるんだよ

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 ──俺は、たぶん人生でいちばんヤバい状況にいる。
 場所は、放課後の体育館裏。
 湿った空気がよどむ、古びた倉庫の中。

 目の前には、地味で無口なクラスメイト、黒川悠人。
 そして──
 なぜか、俺の右手はそいつの下着の中に突っ込まれていた。
 おかしいだろ、意味がさっぱりわからない。
 それもそうなんだか、もう一つ、こっちがもっとありえない。
「なんで、俺の身体……勝手に動いてんの……?」

 ⸻

 フラグノートを封印してからは、俺の日常は、至って平凡だった。今日も、普通に授業を受けて、ダラダラと過ごす。
 ことの始まりは、ほんの小さな用事だったと思う。

 体育教師に頼まれて、道具を倉庫に返しに行っただけ。
 鍵を受け取って、体育館裏まで歩いて、
 いつものように、古びた扉をがちゃりと開けた──そのとき。
 
 中に、人影があった。

「……っ、あれ?」

 よく見れば、同じクラスの地味男子。黒川だ。俺も地味だけど。まぁ、それはいいとして、当然、俺は声をかける。

「……お前、なにしてんの?こえーじゃん」

「……迷い込んだだけなんだ、レン君」

 迷い込むって……どこから?どうやって?幽霊ですか?
 ツッコミどころは山ほどあったけど、
 俺はなぜか、そのまま倉庫の中に一歩、足を踏み入れてしまった。

 その瞬間──

「ガチャ」

 背後で、扉が音を立てて閉まる。

 慌てて振り、ガタガタっと開けようとするものの扉はびくともしない。俺鍵持ってるんだけど?ガチャってなに?何の音?

「は? 開かない……? いや、俺、今さっき鍵で──」

 何度試しても、ダメだった。
 明らかに、閉じ込められてる。

 ⸻

 数分の沈黙のあと、黒川が突然しゃがみこんだ。

「レン君……ごめん……ちょっと、具合悪いかも。
 お腹、さすってもらってもいい……?」

「は? いや、なんで俺が……」

 冗談にしても、わけがわからない。すでに、テンパってるのに、なんなのお前。
 お前のママじゃないんだけど、距離感、バグってんのか?
 俺は、ちょっとイライラしていた。

 断ろうと口を開いた瞬間──

「……っ、え?」

 俺の手が、勝手に動き出した。

「なんで……なにこれ?動くなよ……!うわうわっ!止まれって……!」

 自分の身体が、自分の意思で止められない。
 手が震えながら、黒川に近づいていく。

 制服の裾をめくり、
 ゆっくりと、慎重に、
 下着の中へと指先が滑り込んで──
 黒川の下半身に触れる‥‥‥‥

 ⸻

 その瞬間、ぱたりと力が抜けた。

 まるでスイッチが切れたように、身体が戻ってくる。

「っ、ちょ、ま──なにやってんだ、俺……!!?」

 俺は慌てて手を引っ込めた。心臓がバクバク鳴っている。
 俺、どうした!?

 そして──黒川は、涙ぐんだ瞳で俺を見つめている。

「レン君……ひどいよ……なんで、急に触ったの……?」

「ち、違う!違うって!俺、そんなつもりじゃ……っ!身体が勝手に……!」俺は必死に黒川に伝える。

「……なに言ってるの?訳わかんないこと言ってさ。こんな、誰もいない倉庫で‥‥責任‥‥とってよっ!」

「えっ?」
 ぞくりと、背中を冷たいものが這った。何なんだろう、黒川も少し変だ。

 俺は、あのノートを思い出す。

『フラグノート』

 あれの影響?まさか。
 ……いや、まさか、な。

 ⸻

「おーい、なにしてんだぁ~?男子~?」

 突然、扉が開いて眩しい光が差し込んだ。現れたのは、体育教師。
「鍵、壊れてたのか?ったく……」

 俺は呆然と立ち尽くす。

 黒川はというと──
 さっきまで泣いていたのが嘘のように、
 ケロッとした顔で先生に微笑んだ。

「すいません、倉庫の鍵、壊れてるみたいです」

 俺は、なにも言えなかった。

 絶対おかしい。これは偶然じゃない。これは、誰かが仕組んだ“出来すぎた”偶然だ。
 俺は、書いてない。

 ──じゃあ、誰が?

 ⸻

 その夜、俺はダッシュで帰宅して真っ先に机の引き出しを開けた。

 フラグノート。あった‥‥、盗まれたわけじゃなさそうだ。
 中をめくる。

 ……すぐに異変に気がついた。
 ページが、一枚、破れてる。え?いつ?誰?俺がこのノートで色々やってたの見られてた?

 俺は目に見えない誰かの視線に背筋が凍った。

 ———

 黒川の部屋。
 無数の“レン君”の写真が壁を埋め尽くすなか、
 中央に丁寧に貼りつけられた一枚の紙。

 そこには、こう書かれていた。

 ⸻

〝斎藤レン 黒川悠人体育館裏の、鍵の壊れて開かない倉庫に二人きり。斎藤レンは黒川悠人の下着の中に手を入れる〟
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