【完結】死ぬ運命を変えた盲目の音楽家は、秘密の庭園で氷の貴公子に恋をする

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番外編 第5話「夜の奥に、君がいた」 ※

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君の体温が、腕の中で少しずつ高くなっていく。
 呼吸が浅くなって、まつげが揺れるたび、僕の理性は軋む音を立てていた。

 

 抱きたいと、思った。
 でもそれは、欲ではない。
 君が今ここにいて、僕を受け入れてくれているという証を、
 肌で感じたかっただけだ。

 



 

 「愛してる」と言わなかった夜、君は震えながらも僕に触れさせてくれた。
 目が見えないから、僕の顔が見えないから――
 だからこそ、君はすべての音と熱に、強く敏感に反応していた。

 

 肌と肌が重なるだけで、まるで命を分け合っているような気がした。

 

 その夜から、毎晩、君を抱いて眠っている。

 服の上から背を撫でたり、髪に口づけしたり、ただ静かに寄り添うだけ。
 それ以上のことは、していなかった。

 

 ……でも。

 

 限界は、ある。

 



 

 「レオ……」

 

 囁くと、君は僕の胸元に顔を埋めた。

 

 「……怖く、ないです」

 

 その一言が、許しに聞こえた。
 震える声の奥に、わずかに潜む期待と熱。
 触れてほしいと、確かにそう言っていた。

 

 僕はゆっくりと、君のシャツに指をかける。
 一つずつ、ゆるやかにボタンを外していく。
 動作を止めるたび、君の息がわずかに揺れた。

 

 ――見えていないのに、こんなにも感じ取ってしまう君は、あまりに美しい。

 

 「触れるよ」

 

 言葉にしてから、そっと肌に触れた。
 鎖骨から胸元へ、指先で輪郭をなぞる。

 くすぐったいような息が漏れ、
 それに応えるように、僕の唇が、君の首筋へ落ちた。

 

 「ん……っ」

 

 レオが震える。
 拒まない。
 逃げない。
 ただ、小さく、身を縮めながらも、僕の腕の中にいた。

 

 僕の右手はゆっくりと、服の中へ。
 温かく、柔らかく、触れるたびに反応してしまうその体が、愛おしくてたまらなかった。

 

 見えている僕のほうが、ずっと罪深い。
 この顔を、表情を、熱を――全部知っていて、触れている。

 

 なのに君は、僕を信じて、委ねてくれている。

 

 「……綺麗だよ、レオ」

 

 君がふっと肩を揺らし、頬が赤く染まるのを見て、
 僕の奥で何かが崩れた。

 

 口づけは耳元へ、そこから喉元、胸の奥。
 滑らせる指は、君の甘い反応を確かめるように進む。

 

 「嫌だったら、言って」

 

 そう言いながらも、止まれない自分がいた。
 止まりたくなかった。

 

 この夜を超えて、君とひとつになりたかった。

 



 

 でも、まだそれは“先”にとっておく。
 今夜は、ただ触れるだけ。
 焦らして、確かめて、
 何度も、君の名前を、心の中で呼んだ。

 

 「レオ……」

 

 君が僕の腕の中で、微かに甘い声を漏らすたびに、
 この世界に君がいることに、感謝した。

 

 この夜、君は僕の中で――確かに、芽吹いた。
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