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第4話 子どもに会ったら泣かれました
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フォルヴァン邸の朝は、雪の匂いがしていた。
冷え込む石造りの廊下を、リュシアは案内されるままに歩いていく。
「奥様、そろそろレイ様とご挨拶を……」
そう侍女に声をかけられたとき、彼女の目に留まったのは、暖炉の上に飾られていた古い銀細工だった。
「……これ、いいですねぇ」
それは小さな、花弁を象った飾りだった。細かく打ち出された模様に、時間の経過でくすんだ銀が渋みを与えている。
「……奥様?」
「あ、すみません。つい」
完全に目的を忘れていたリュシアは、何事もなかったかのように微笑んで再び歩き出す。
⸻
案内されたのは、子ども部屋……というにはあまりに無機質な部屋だった。装飾もぬいぐるみもなく、あるのは最低限の家具と、小さな椅子。
その椅子に、レイ・フォルヴァンがちょこんと座っていた。
白金の髪に、薄い灰色の瞳。肌は雪のように白く、表情は固い。
ぎゅっと唇を結び、背筋をまっすぐにして、彼は待っていた。
リュシアは、いつものようににこにこ笑って、声をかけた。
「こんにちは~」
その瞬間だった。
「ぅわああああああああああんっっ!!!!」
部屋に響き渡る大音量の泣き声。レイはわんわんと泣き出し、椅子の上で小さな体を震わせる。
「あらあら、どうしたのかしら?……」
「奥様っ、失礼しました、すぐにお連れします!」
慌てて動こうとする侍女たちを制し、リュシアはその場にしゃがみこんだ。
ごそごそと手提げの中を漁る。
「……あったあった」
取り出されたのは、小さな銀のブローチ。葉っぱのモチーフで、先端に向かって緩やかに丸まっている。ほんのり、淡い輝きが揺れていた。
「これ、玄関のところで拾った葉っぱが可愛かったんですよ~。あれ、真似して作ってみたんですけど……」
それが子どもに向けた言葉なのか、ただの独り言なのか、判断はつかない。
でも、泣き続けていたレイの視線が、ちらりとブローチに向いた。
その瞬間――
ひとひらの光が、ブローチの中にふわりと宿った。
「……どうぞ?」
リュシアが差し出すと、レイは泣き止んだまま、小さな手でそれを受け取った。まるで吸い寄せられるように、そっと、指先で。
静まり返った部屋に、空気が少しだけ変わった気がした。
⸻
「……ま、まさか泣き止むとは」
扉の外に出たあと、侍女がぽつりと呟く。
「うーん……あの子、葉っぱ好きなんですかね?」
リュシアはやっぱりにこにこしながら、よくわかっていない様子だった。
部屋の中では、レイが手の中の銀細工をじっと見つめている。
小さな指で、そっと包み込むように握りしめた。
その様子を、廊下の影から見ていた人物がいた。
グレイヴ公爵。
表情は相変わらず硬いままだったが、その目元が――ほんの少しだけ、緩んだ気がした。
冷え込む石造りの廊下を、リュシアは案内されるままに歩いていく。
「奥様、そろそろレイ様とご挨拶を……」
そう侍女に声をかけられたとき、彼女の目に留まったのは、暖炉の上に飾られていた古い銀細工だった。
「……これ、いいですねぇ」
それは小さな、花弁を象った飾りだった。細かく打ち出された模様に、時間の経過でくすんだ銀が渋みを与えている。
「……奥様?」
「あ、すみません。つい」
完全に目的を忘れていたリュシアは、何事もなかったかのように微笑んで再び歩き出す。
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白金の髪に、薄い灰色の瞳。肌は雪のように白く、表情は固い。
ぎゅっと唇を結び、背筋をまっすぐにして、彼は待っていた。
リュシアは、いつものようににこにこ笑って、声をかけた。
「こんにちは~」
その瞬間だった。
「ぅわああああああああああんっっ!!!!」
部屋に響き渡る大音量の泣き声。レイはわんわんと泣き出し、椅子の上で小さな体を震わせる。
「あらあら、どうしたのかしら?……」
「奥様っ、失礼しました、すぐにお連れします!」
慌てて動こうとする侍女たちを制し、リュシアはその場にしゃがみこんだ。
ごそごそと手提げの中を漁る。
「……あったあった」
取り出されたのは、小さな銀のブローチ。葉っぱのモチーフで、先端に向かって緩やかに丸まっている。ほんのり、淡い輝きが揺れていた。
「これ、玄関のところで拾った葉っぱが可愛かったんですよ~。あれ、真似して作ってみたんですけど……」
それが子どもに向けた言葉なのか、ただの独り言なのか、判断はつかない。
でも、泣き続けていたレイの視線が、ちらりとブローチに向いた。
その瞬間――
ひとひらの光が、ブローチの中にふわりと宿った。
「……どうぞ?」
リュシアが差し出すと、レイは泣き止んだまま、小さな手でそれを受け取った。まるで吸い寄せられるように、そっと、指先で。
静まり返った部屋に、空気が少しだけ変わった気がした。
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「……ま、まさか泣き止むとは」
扉の外に出たあと、侍女がぽつりと呟く。
「うーん……あの子、葉っぱ好きなんですかね?」
リュシアはやっぱりにこにこしながら、よくわかっていない様子だった。
部屋の中では、レイが手の中の銀細工をじっと見つめている。
小さな指で、そっと包み込むように握りしめた。
その様子を、廊下の影から見ていた人物がいた。
グレイヴ公爵。
表情は相変わらず硬いままだったが、その目元が――ほんの少しだけ、緩んだ気がした。
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