女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

文字の大きさ
59 / 88

第五十九話_ビオラ、ダメな上司みたいなことをする

しおりを挟む
 ビオラ、イクシア、ペリウィンクルが世界樹を中心とした花畑で仕事をしていると、遠くで「「えっほ、えっほ」」と掛け声をあげながら狩りで仕留めたイグアナを運ぶGPシスターズの姿があった。

「ずいぶん狩りにも慣れたみたいだね」

「そうですね、初回で歴戦王でしたからね。通常個体は難なく狩れているようです」

「スアナ帝では人が増えたからね。産まれた妹ちゃんも凄く食べるってゼフィちゃんが言ってたよ」

 ペリウィンクルから聞きなれない言葉を聞いたビオラは「巣穴てい?」と言って首を傾げる。

「スーパーアルティメット・ナナチャン大帝国の略です、お母さま。 長いですから」

「略したんだ…… ま、確かに長いもんね。 それはそうと、ナナちゃんのところの子もそろそろだと思うけど、ウチのペパーミントももうすぐ立ち上がりそうだよね――」

 と、ビオラは言いながらオアシ巣を見上げる。そして「あぁっ!!」と大声をあげた。

 見れば、巣から小さな塊が飛び出して結構なスピードで空を飛んでいるのが目に入ったのだ。

「ペパーミント!! え? ちょっ、あの子、裸じゃんっ!!」

 ペパーミントは身に一糸も纏わず、キリっとした真面目な表情で両手を前に伸ばした姿勢で高速で空をブンブン飛び回っていた。

「何で裸??! 寝かせてた時には服着てたよね、そうだよねイクシア?!」

「はい。 暑かったんでしょうか?」

「と、とにかく早く捕まえて服着せないと! このままじゃマズいって! 倫理の女神コンプラに見つかったら大変なことになるよ! 幼女の裸はマズいって!!」

 あわあわと焦るビオラに、「落ち着いてください、お母さま」とイクシアは冷静に声をかけ、「お母さま、あれを!」とペパーミントを指さす。

「あ、あぁっ!! 光の精霊が!」

 ビオラは驚いた。いつもペパーミントの周りをキラキラしながらまとわりついている光の精霊が、いつもより格段にキラキラ度を上げてペパーミントの際どい部分を隠すかのように輝いていた。

「光の精霊がイイ仕事してるっ!!」

「今のうちです、お母さま。 倫理の女神コンプラに見つかる前に捕まえましょう! ペリウィンクルは巣に戻って服を取って来て」

「はーい!」

 ペリウィンクルは巣のほうへ、ビオラとイクシアはペパーミントを追いかけようと飛び上がる。しかし追いかけるまでもなく、ビオラが「ペパーミント!」と声をかけると笑顔で振り返ったペパーミントは「ママぁ~!」と嬉しそうにビオラの胸に飛び込んできた。

 抱きとめたビオラはそのまま地面に降り、抱いていたペパーミントも地面に下ろして立たせると目線を合わせるようにビオラは屈む。

「もぉ~、ペパーミント。 ビックリするじゃない。どうして服脱いじゃったの?」

「ん~とね! どくしゃシャービシュっ!」

「こらっ、ペパーミント。 どこで覚えたんですか、そんなはしたない言葉!」

 ―― はしたない言葉なのか読者サービスって……? まぁ、今回に限れば確かにそうか……

 ビオラはそんなことを思いながら、イクシアに怒られるペパーミントを見る。可愛く小首を傾げるペパーミントはちゃんと理解しているのかどうか。

 イクシアに「ちゃんと服は着なさい」と言われ「は~い、イクねぇちゃん」とペパーミントは返事をしている。と、その時、ドドドドドドッという激しい音と遠くで砂煙が上がっているのにビオラは気が付いた。

「待てぇーっ!! 待たんかぁーーーいっ!!!」

「ん? ナナちゃん??」

 声の主から、ナナが走ってくるのかと思ったビオラは砂煙の先頭を目を凝らして見た。

「あっ……!」

「服を着ろぉーーーっ!!」

 砂煙の先頭は、真っ裸の地獄蟻の女の子。その後ろを、珍しく必死の形相をしたナナが追いかけている。

 ―― あっちもかいっ!!?

 砂煙はだんだんビオラたちに近づいて来、先頭の女の子はキキッと急ブレーキをかけたかのようにペパーミントの前で止まった。ペパーミントはキラキラとした光に包まれているが、地獄蟻の女の子は揺らめくような黒い靄に包まれ大事な部分が隠れていた。

 二人は見つめ合い、そして無言で頷くとガッと堅く握手をする。

 ―― 気が合っちゃったかぁ……

「ぜぇ…… ぜぇ…… お、追いついたぁ……」

 息も絶え絶え、服を抱えてやって来たナナに「おはよう、ナナちゃん。 その…… お疲れさま」とビオラは声をかけた。

「う、うむ…… あれはビオラのとこの娘か?」

「うん。ペパーミントって名前だよ」

「そ、そうか。 ウチの娘はGP-004だ」

「……連番なん?」

「いや、そういうわけじゃないんだが、ゼフィたちが自分たちの妹だからって。 まぁそれはひとまず置いといて、服を着せよう」

 ちょうどペリウィンクルが服を抱えて巣から戻って来たため、逃げられないように全員で囲んで二人を着替えさせた。飛び上がって逃げないように上空はペリウィンクルで蓋をするという念の入れようである。

「ところでナナちゃん。GP-004ちゃんの周りに黒い靄がふよふよしてるけど…… コレってもしかして」

「うむ。 闇の精霊っぽいな。産まれてチョットしてからずっと周りをウロウロしてるみたいだ」

「そっちもなんだ…… こっちは何故か光の精霊なんだけど、なんにせよ今回は光と闇の精霊がイイ仕事してくれて助かったわ。危うく女神コンプラに叱られるところだったよ……」

「そうなのか? 女神に叱られるとどうなるのだ?」

「最悪、この世界が終わる」

「……マジで? 一応謝っておいたほうがよくないか?」

「確かに」

 ビオラは服を着たペパーミントをはじめ娘たちに「魔力に乗せて女神に謝罪を届けるよ」と言って整列させる。そこへトコトコとGP-004までやって来て、さりげなく一緒に並んだ。

「では、こほん……」

 一つ咳ばらいをして呼吸を整えたビオラは両手を天高く掲げ「倫理の女神コンプラよ、我らの謝罪の言葉と魔力を受け取り給え」と唱えはじめる。ビオラと、そして真似をして両手を掲げた娘たちとGP-004の体が魔力で淡く輝いた。

「誰にも見つからないうちに服は着せました。 事故発覚後の迅速な隠蔽ヨシ! ごめんなさい!!」
「「ごめんなさい!!」」
「いや、隠蔽はダメだろ」

 珍しくツッコみに回ったナナの目の前で、唱和した一同から謝罪の言葉を乗せた魔力が大空に向かって立ち昇って行く。

 立ち昇って行く先、ふわりと女神コンプラがまるで蜃気楼のように現れ、魔力と報告を受け取るとグッと親指を立ててニコリと笑った。

「オッケーなのか……」

 青く澄んだ大空に映る、笑顔の女神に向かってナナは呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
女主人公です(主人公は恋愛しません)。18歳。ダンジョンのある現代社会で、探索者としてデビューしたルミは、ダンジョン配信を始めることにした。近くの町に初級ダンジョンがあると聞いてやってきたが、ルミが発見したのは超難関ダンジョンだった。しかしそうとは知らずに、ルミはダンジョン攻略を開始し、ハイランクの魔物たちを相手に無双する。その様子は全て生配信でネットに流され、SNSでバズりまくり、同接とチャンネル登録数は青天井に伸び続けるのだった。

貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた! ※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています

追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった! 覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。 一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。 最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

処理中です...