女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第六十話_ビオラ、予想通りの名前を付ける

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 ビオラたちが女神コンプラに謝罪を届け終えると、トコトコと近づいて来たGP-004がクイクイとビオラの袖を引き彼女を見上げる。

 GP-004は濃いこげ茶色の長い髪をした子である。ペパーミントもそうだが顔立ちが整っており美人であった。ただペパーミントは可愛い寄りの美人顔であるが、GP-004はどちらかというとクールビューティといった雰囲気である。

「ん? どしたの、GP-004ちゃん?」

 GP-004は自分の顔を指さし、「あたし、なまえ、なまえ」とたどたどしい口調で訴えた。

「あっ、お姉ちゃんたちみたいな名前が欲しいのね?」

 ビオラの問いかけにコクリと頷くGP-004。もう考える間もなく、ビオラは一つの案を出した。

「えっと、ガーベラちゃんでどう?」

 パッと喜びで明るい表情をしたGP-004は、しかしすぐにキリっとクールな感じにもどり「ま、まぁそれでいい」と言って顔を背け、クルっとビオラに背を向ける。
 両手を広げスキップしながら鼻歌交じりにルンルンと去っていくガーベラに、彼女が素っ裸だったときより色の薄い闇の精霊がまとわりつくように付いて行った。

 ―― この反応は地獄蟻特有のものなのか……? それともナナちゃんの遺伝なのか?

「すまんな、ビオラ。 世話をかけた」

「いいよ、ウチの子もやらかしたわけだし」

「うむ。ではまた。 あっ、そうそう、今度コロッセオでベーゴマ大会やるから遊びに来るがよい」

「ベーゴマ?」

「うむ。マーゴロックが子供の頃やってた遊びらしい。 道具も作ってくれたぞ」

「へ~、面白そう。 オッケー、じゃあ遊びに行くね」

「よし! では大会当日に誘いに来るぞ」

 嬉しそうにそう言ってナナはガーベラを追いかけ、地下都市に帰って行った。




 マーゴロックが工房で槌音を響かせていると「ごめんくださ~い」と入り口から声が聞こえ振り返る。見れば、イクシアが畳まれた布を抱えるようにして工房の外から顔を覗かせていた。

「おぅ、イクシアか。 中に入ってちょっと待っててくれ、キリをつけちまう」

「はい、お邪魔します」

 イクシアは工房の中に入り、マーゴロックが作業している場所から離れたところにある机の上に着地するとチョコンと座って、しばらく静かにマーゴロックの作業を見学した。



「どうした、イクシア。 お前さんがここに来るのは珍しいじゃないか」

「実は作って頂きたいものがありまして。 この前の襲撃もあって、巣の防衛を色々と考えているのです」

 作業のキリをつけたマーゴロックがタオルで汗を拭きながらイクシアの許に歩いて来た。机の上にあった水の入った湯呑を手に取ると水分補給をする。そのマーゴロックの前で、イクシアは机にツギハギだらけの布を広げた。

「設計図か?」

「はい。 端切れのツギハギで申し訳ありません。紙は高いですし、あまり在庫もありませんので」

「い~や、さすがイクシアだ。お前らサイズじゃなく、俺でも見えるような大きさで設計図を用意してくれんだから。 ゼフィたちなんて自分たちサイズの石板にびっしりと要望描いて来るんだから俺には見えねぇよ。 結局要望を聞き取って作ったんだが、ビウムなんて特に細かいこと要求しやがってよぉ。馬鹿言うんじゃねぇって叱ってやったさ。はははっ!」

 楽しそうに笑いながら椅子に腰かけたマーゴロックは布の図面を手に取り、「どれ?」と言ってしばらく眺める。

「火縄銃か? だが、ここは……? こんな構造じゃ火薬に火は付かんぞ」

「はい。 その部分を魔法の武器を作る要領で作成して頂きたいのです」

 マーゴロックが指さしたのは火ばさみという火縄を点火用の火薬が入っている火皿に落とす部品である。しかしイクシアの設計図には火皿は無く、火ばさみにあたる部分が直接筒の中に入っていくような構造になっていた。

「そこを爆破属性の部品にすることは出来ませんか?」

 腕を組んで目を瞑ったマーゴロックは「あ~……」と言いながら顔を天井に向け、難しい顔でしばらく考えるとゆっくり目を開きイクシアに視線を戻して口を開く。

「やりたいことは何となく分かった。 要は火薬を使わずに魔力の爆発で玉を飛ばしたいってことか?」

「はい、そうです。 火薬は高価だとコーネリアスさまから聞いてますし、わたしたちじゃ手に入れられなさそうですから」

「よ~考えるわ。こんなこと……」

 苦笑いするマーゴロックに、イクシアは嬉々として説明を続ける。

「爆発はそれほど大きくなくていいと思います。 あとは、コーネリアスさまが仰ってましたが筒が熱くなるため数発撃ったら冷まさないといけないと。ですので筒自体に火属性か爆破属性の耐性を持たせれば――」

「あ~、待て待て! ちょっと落ち着け嬢ちゃん。 色々とやりたいことは分かった。だがまずは肝心の火ばさみの部分だ。そもそも作ったものに何の魔力が宿るかなんて俺が決められるもんじゃねぇぞ」

 理想形の説明に白熱するイクシアをマーゴロックは慌てて止める。イクシアは「え? そうなんですか?」と目を丸くして問う。

「あぁ、そうなんだ。 今は色々と試してるところでな。地獄蟻が歌うと精霊が寄って来やすくなるってのは分かってるんだが、どの精霊が来るかはほとんど運だ。まぁちょっと傾向は掴みつつあるが」

「傾向ですか?」

「あぁ、爆破属性ならサリスが一人で歌ってるときに来やすいようだ。だがそれも確実じゃない」

「そうなんですか……」

 先ほどまでのハイテンションから打って変わってションボリするイクシアに、マーゴロックはクスっと笑って言う。

「だがまぁ、挑戦し甲斐のある面白い発想だ。 ちゃんと理屈と実現性、展望があるだけビウムよりも数千倍マシだしな」

「ビウムたちと一緒にされては困ります」

「はははっ! 分かった、じゃあいっちょやってみるか。 巣の防衛ってなると、なるべく早い方がいいだろうな」

「はい、よろしくお願いいたします、マーゴロックさま」

 お礼を言って頭を下げたイクシアはニコリと笑って工房を後にした。
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