女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第七十四話_イクシア、満足する

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 ちょっとオドオドした感じでビオラが着席すると、キリッとした表情に戻ったイクシアが「ありがとうございます、ビオラ議員」と言い、全体を見渡して「さて、」と続ける。

「マーゴロック議員、ビオラ議員の発言にありましたように、ビオランド・ナナチャン連合国の防衛は喫緊の課題です。 我らの国が大きくなり、外部との接触が増えるにつれて危険が増していくでしょう。そうなる前にルキウス氏の助言通りに国力と防衛力の充実を図らなければなりません」

「なんということだ……」
「それでは我々は……」
「全くの無関係ではないのか……」

 イクシアが結論を述べたところで、何故かGPシスターズが前と同じセリフを棒読みしてザワザワする。

 ―― ゼフィたち、それしかセリフ仕込まれてなかったのね……

「議員諸君っ! 静粛に!!」

 カンカンッと強めに木槌を叩くイクシアの本気でイラっとした様子からGPシスターズの暴走だと分かる。
 それを見てマーゴロックが苦笑いしながら挙手をして発言を求める。気が付いたイクシアは気を取り直して「マーゴロック議員」と指名することで仕事に戻った。

「必要なのは分かるが、問題はどうやってそれを実現するかだ。 このだだっ広い砂漠の中、地形に依っての防衛の構築なんて無理だぞ。二つの国をまるまる抱え込むような城壁なんてまず建設不可能だしな。 ここの利点を挙げるなら見晴らしがいいってくらいだ」

 発言を終えてマーゴロックが着席するのを見てイクシアは口を開く。

「マーゴロック議員のご指摘の通り、城壁の建築などは不可能です。例え作れたとしても城壁の長さに対して貼り付けられる戦闘員の数が足りないため、まったく意味のないものになってしまいます。 ですので、同じくマーゴロック議員の指摘にありました利点のほうに目を向けようと思います」

「見晴らしか?」

「はい。 今回も前回も少数の敵から奇襲を受けました。見晴らしがいいと言っても気が付かなければ巣の近くまで接近されてしまいます」

「まぁ、そうだな」

「そこでミニ世界樹を中心にショット大豆数株をセットにした小さな花畑をビオランド・ナナチャン連合国の周囲に一定間隔で点在させます。敵意を持った人物の接近を察知し自動で撃退しようとするショット大豆の発砲音を警鐘がわりにするのです」

「あれか? ガチもんの世界樹じゃないほうの小さい花畑みたいなのを数カ所に設置するってことか」

「はい。最低限の魔法植物セットを巣の周囲になるべく広範囲をカバーできるように植えます。ショット大豆が敵を察知し遅滞戦闘を行っている間に、わたしたちは戦闘準備を」

「なるほどな」

「おそらく、わたしたちが準備をしている間に何セットかの魔法植物は破壊されたりするでしょうけど、命には代えられません」

「はははっ、魔法植物を捨て駒扱いか…… 恐ろしくコストの高い捨て駒だな。価値を知ってる奴が知ったら卒倒しそうだが、なるほど妖精蜂らしい戦い方だ。 よく考えたな」

 笑って褒めるマーゴロックだが、褒められたイクシアは渋い顔で「いえ……」と首を振る。

「妖精蜂としては一般的な巣の防衛方法です。 本来なら地形や森の状況などを考慮して要所要所にもう少し充実した内容の魔法植物を植えるんです。手入れをする働き蜂が偵察の役割を担ったりと効率的な運用がされるのですが…… 今の人員では遠方に配置した魔法植物の手入れに手が回らない可能性もあります」

 ―― へ~、そうなんだ。

 妖精蜂の女王であるはずのビオラは初耳であった。そして、どうやら非効率的な内容であるためイクシア自身はあまり納得がいっていないようである。

「まぁ、本来妖精蜂が住む森の中とは環境が違うんだ。無いものねだってもしょうがねぇ。 限られた条件の中でよく考えてるよ。 で、二つの国の周囲をカバーできるほど魔法植物は用意可能なのか?」

「徐々に、としか言えません。 ですが幸い、ガチ世界樹がミニ世界樹とは比べ物にならないくらい実を沢山つけています。 時間はかかりますが徐々に増やしていくしかありません」

「あぁ、確か世界樹の種が魔法植物に育つんだったか……」

 イクシアはマーゴロックの確認するような呟きに「はい」と頷き、ペリウィンクルのほうを向くと「ペリウィンクル議員」と呼びかける。

「は~い、お姉ちゃん!」
「お姉ちゃんではありません。議長と呼びなさい」
「は~い、議長!」

「ペリウィンクル議員は早速、魔法植物の増産を始めてください」

 イクシアの指示を受けてペリウィンクルは「は~い!」と手を挙げて返事をする。頷いたイクシアは次にペパーミントに目を向ける。
 ペパーミントは議会が開始してすぐに飽きて、ガーベラと一緒に床に落書きをして遊んでいた。

「ペパーミント議員」
「ひゃいっ!」

 落書き中に突然声をかけられたペパーミントはビクッとして冷や汗たらたらで振り返った。

「ペパーミント議員はペリウィンクル議員のお手伝いをしてください」

 まったく話を聞いていなかったペパーミントは焦りながら、とりあえず「は、はい!」と返事をした。

「あとはマーゴロック議員に作ってもらいたいものがあります。ですが技術的に詰めたいところがあるので後ほど個人的に話をしたいと思います。よろしいでしょうか?」

「あぁ、勿論だ」

 マーゴロックが頷くのを見てイクシアは木槌をカンカンと叩き、「他、何かご意見のある方は?」と問いながら周囲を見渡す。

「では、本日の会議を閉会致します。 解散!」

 誰も発言が無いことを確認したイクシアは解散を宣言する。宣言し終えたイクシアは額の汗を袖で拭う仕草をしながら、むふぅ~っと満足そうな笑みで息を吐く。途中でゼフィたちの暴走があったが、顔がテカテカし瞳がキラキラしていることから彼女は概ね議長役に満足し、十分に堪能したようだった。

「あぁ、そうだ。ちょっと個人的なことで連絡があるんだがいいか? ちょうど全員揃ってるしな」

 解散して議場を後にしようとする面々をマーゴロックが声をかけて止めた。

「うむ。構わないぞマーゴロック。 何かあったのか?」

 ナナが問いかけるとマーゴロックはちょっと恥ずかしそうにポリポリと頬を指先で掻きながら「おい、サヤ」と妻に声をかける。サヤが静々とやって来て横に並ぶのを待ってマーゴロックは言う。

「実は、サヤが妊娠してな」


――――――――――

↓イクシアの防衛構想です。
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