女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第七十九話_いたずら、物は言いよう

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 イクシアとペパーミント、そしてガーベラはオアシ巣の外にあるプランター前に居た。

「さて、本当だったらペパーミントの指導をペリウィンクルにお願いしようと思っていましたがスカプキン村に行っていて留守なので、わたしが魔法植物の育て方を教えようと思います」

「ペリ姉ぇの指導がよかったよぉ」
「心の声が漏れてますよ、ペパーミント。 ……ん?」

 イクシアの視線の先、遠く地平線に立ち昇る砂煙がある。「あれは?」と言うイクシアの声にペパーミントとガーベラもそちらへ視線を向けた。

「なんだろう?」

「敵か?」

 背負っていた銃を取り出し構えようとするガーベラをイクシアがスッと手を出して制する。砂煙のほうから「ただいま~!」とアラディールの声が聞こえたからだった。

 物凄い勢いで近づいて来た砂煙はイクシアたちの前で勢いを落として止まる。案の定、アラディールと、彼にしがみついていたビオラとナナとペリウィンクル、背負われているサヤにお姫様抱っこのマーゴロックであった。

「ただいま、イクシアちゃん!」

 ニコッと笑うアラディールに降ろされたマーゴロックは、フラつきながら数歩歩くと「やっぱ、慣れねぇ……」と言って地面に手をついた。

「お帰りなさいませ、みなさん。 アラディールさま、送り迎えありがとうございます」

「ううん、大したことないよ」

 アラディールはサヤが降りやすいように少し屈むと、背負われていたサヤは「ありがとう、アラディールくん」と言いながら背負子から降りる。

「お母さまもお帰りなさいませ。 五日と聞いていましたが随分お早いお帰りですね」

「うん、まさかアラディールくんが全員抱えて走るとは思わなかったからね…… めちゃ速いし」

 ビオラとイクシアが話していると、アラディールの肩からナナが飛び降り、頭からはペリウィンクルが飛び立つ。

「じゃあ、僕は一度村に戻るね。 また来るよ」

「うん、ありがとう! アラディールくん」

「うむ、またいつでも来るがよい、アラディール」

「すまねぇ、世話になるな」

「これからお世話になります。よろしくね、アラディールくん」

 それぞれが挨拶した後、アラディールとペリウィンクルがほんの僅かなあいだ見つめ合う。

「それじゃ、ペリちゃん。 またね」

「うん、またねアラディール」

 微笑み合って別れを言い、走り去っていくアラディールの背を見つめ続けるペリウィンクルの横顔を見てイクシアは小声でビオラに問いかける。

「お母さま、ペリウィンクルとアラディールさまに何かあったのですか?」

「えっ?! 何かって? 特に何もなかったような?」

「そうですか…… いつも無邪気で子供っぽいペリウィンクルが、何だか哀愁漂う女の顔をしていたもので」

 サラっと言ったイクシアのセリフにショックを受けたビオラは目を見開き、次いで小さく悲鳴にも似た声で言う。

「えっ!! ま、まじで……?! そ、そういえば、ペリウィンクルったら夜遅くまでアラディールくんのお部屋に!!」
「冗談です、お母さま」

 冗談と聞いて、全身から力の抜けたビオラはヒョロヒョロ~っと地面に降りていき、尻もちを着いてペタリと座った。

「じょ、冗談か…… よかったぁ」

「はい、それにお母さまが想像されたようなことは物理的に不可能ですよ」

「そ、そうだよね」

 またしても、いけない想像をしてしまい、しかもそれが娘にモロバレだったことにビオラは恥ずかしくて小さくなってしまう。

「しかし様子がおかしいのは事実ですので、少し注意して見守ったほうがいいかもしれません」

「え? そうなの?」

 ビオラの目にはいつも通りのペリウィンクル見えたがイクシアは何かを感じ取ったようである。

「とはいえ、いつも通り接していればいいと思います」

「そうだね、聞き出すのも変だし」

 ビオラの言葉に「はい」と頷いたイクシアはブーンと飛んでペリウィンクルに近づく。

「ペリウィンクル。 帰って来てすぐで悪いけど、ペパーミントに魔法植物の育て方を教えてくれる? わたしはマーゴロックさまと作ってもらいたい物の打ち合わせをしたいの」

「うん、分かったお姉ちゃん」

「打ち合わせって、アレか? 会議の時に言ってた技術的に詰めたいとか何とか言ってた」

「はい、その件です」

「ん、分かった。 じゃあ工房行くか」

「よろしくお願いします。 ペリウィンクルもよろしくね」

 イクシアはペパーミントの教育をペリウィンクルに託すと、マーゴロックと連れだって工房のほうへと向かって行った。



 さて、妹の教育を託されたペリウィンクルである。

「さぁ、まずは基本だけど管理が難しいミニ世界樹の育て方からね」

 ペリウィンクルはかつて自分がイクシアから教えてもらったように妹に丁寧に魔法植物の育て方を教えていく。ペパーミントの横にはガーベラも一緒におり、彼女も話を聞いていた。

 肥料の配合、水やりのタイミング、気温が高すぎるときはプランターを日陰に移動させるなどの温度管理などなど。いつもは仕事の説明を聞き流す傾向のあるペパーミントにしては珍しく、メモを取りながらフムフムと頷いていた。

「珍しいね、ペパーミント。 魔法植物に興味あったの?」

「うん! 種まきや、蜜や花粉の採取よりも、植物が育っていくのを見るの楽しいし。 それにこれを覚えたら色んな事が出来そう!」

「うん、そっか。そうだよね、お花が咲いたら嬉しいもんね。 わかった、お母さんとお姉ちゃんにはペパーミントがメインで魔法植物の担当できるように伝えておくね」

「ホントっ!? ありがとう、ペリ姉ぇ!」

 光の精霊全開でキラキラした笑顔を向けられたペリウィンクルは嬉しそうに笑う。

「さぁ、もう一息ね。 プランターが足りないから作ってショット大豆も育てましょう」

 そうして二人はオロロしてプランターを追加で作成し、持っていた種を使い切ってミニ世界樹が一株とショット大豆が四株のセットを三セット分植え終えた。

「まだまだお姉ちゃんの考える防衛網には足りないけど、今できるのはこんなところね」

 ペリウィンクルが袖で汗を拭いながら言うとペパーミントも同じような仕草をしながら「そうだね」と相槌を打つ。

「それじゃあ、ペパーミント。魔法植物お世話よろしくね」

 そう言って巣のほうへと飛び立ったペリウィンクルの背に「おっけ~、ペリ姉ぇ!」と返事をしつつ見送ったペパーミントは、姉の気配が消えるとポケットに手を突っ込んだ。

「ふふふっ」

 ニヤニヤしながらポケットから取り出したのは三粒の魔法植物の種であった。悪い笑顔でニヤニヤするペパーミントとガーベラは「さて、どうする?」「なに混ぜる?」と相談をし始めた。

「といっても周りに特別なものはなさそうだし……」

「あっ! あのサボテンとかどうよ?」

「いいねぇ~」

 大きめのサボテンを引き抜いて来たガーベラはペパーミントと一緒に細かく刻んで肥料に混ぜる。

「ちょっと魔力も足してみる?」

「いいんじゃない」

「キララちゃん、わたしに力を! チャレンジ精神ヨシ、ご安全に~」

「クララ、あたしに力を。 意欲的な挑戦ヨシ、ご安全に」

 二人の悪ノリに光と闇の精霊までも加わってしまった。ペパーミントとガーベラは作った肥料に種を植えたのだった。
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