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第八十話_四女、誕生する
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「ママっ!! わたしとの約束は!?」
外敵の襲来やマーゴロック夫妻のことなどがあったため、子供ながらに空気を読んで主張を控えていたペパーミントもとうとう痺れを切らせて感情を噴出させた。
早朝、ビオラが目を覚ますとすぐにペパーミントが怒りも露わに飛び込んできたのだった。
―― や、約束……? なんだっけ?
すっかり何のことだか忘れているビオラは、目の前でプンスコ怒っている娘に「何のこと?」と問いかけては火に油を注ぐだろうと、目線を泳がせながら「え~っと……」と明言を避けていた。
「わたしのお洋服っ!!」
そう言われてようやくビオラは思い出した。ファッションショーを開催した夜にペパーミントが描いた原案をもらっていたが、材料の布が不足していたこととその後のゴタゴタで後回しにされ、すっかりビオラの頭から抜け落ちていた。
「もうイク姉ぇの服がキツくなってきたのぉ! 早く作ってぇ!!」
「ごめんね、ペパーミント。 でも材料が無くて…… 次に商人さんが来るまで待ってくれないかなぁ? それまでペリウィンクルのお下がりで――」
「やだやだやだやだぁっ!! 今すぐ作ってぇ!!」
部屋の中をジタバタしながらゴロゴロと転がりまわるペパーミントにビオラが困っていると、まるで彼女を助けるかのようにベビーベッドの卵からピシッとヒビの入る音がした。
「あっ! ほらほら、ペパーミント! 産まれるよ! 見て見て、卵にヒビが入ったよ!」
ペパーミントの気を引くようにビオラが言うと、暴れていたのが嘘のようにピタッと止まったペパーミントは「えっ! ホント!?」とベビーベッドにかぶりつくようにして卵の様子を見守り始めた。
ピシッ、ピシッとヒビが大きくなるたびにペパーミントの顔は興奮で赤く染まり、彼女の周りを漂っている光の精霊もキラキラ度を増していく。そして。
「おぎゃあっ! おぎゃあっ!」
「わぁっ! 産まれた、産まれたよママ! わたしの妹!」
喜びで飛び上がったペパーミントはブンブンと部屋中を飛び回る。
―― みんな反応は一緒ね。
イクシアもペリウィンクルも、初めて妹が産まれたときにはハシャいで飛び回っていたなと微笑ましくペパーミントの様子をビオラは見る。
そしてベビーベッドに近づいたビオラは産まれたばかりの娘を抱き上げて語り掛けた。
「おはよう、グラジオラス。 これからよろしくね」
―― この子は…… 大人しくて甘えん坊さん、かな?
「グラジオラス♪ グラジオラス♪」
妹の名前を連呼しながら飛び回るペパーミントを見て、ふふっと笑ったビオラは声をかける。
「ペパーミント、グラジオラスのことよろしくね。 お姉ちゃんとして色々な事教えてあげてね」
「うん! ねぇママ、グラジオラス抱っこしていい?」
「ふふっ、いいよ。 ほら、そこに座って」
ペパーミントに椅子に座るよう促すと、ビオラは手を広げて構えているペパーミントの腕の中にグラジオラスを渡して抱かせてあげた。
嬉しさと感動で上気したペパーミントは「可愛い!」と言い、その彼女の感情に反応した光の精霊はビカーッと、かつてない程の輝きを見せた。
「眩しっ……!!」
あまりの光量にビオラは手で光を遮るようにして顔を背ける。グラジオラスも吃驚してギャン泣きである。
「ペパーミント、ちょっと光量抑えて! 赤ちゃんにこの光はマズいわ!」
「あ、ごめんごめん、ママ。 ごめんね~、グラジオラス~」
慌ててペパーミントが、というか光の精霊が光量を抑えたとき、イクシアが血相を変えてビオラの部屋に飛び込んできた。
「お母さま! 何事です、今の光は?!」
どうやら巣の外にまで激しく漏れるほどの光量であったらしい。
「あ、うん、ごめんイクシア。 妹が産まれた喜びでペパーミントが光って…… 何言ってんだ、わたし……」
「何となく察しました。 妹が産まれたのですね!」
「うん、グラジオラスって名前だよ。 イクシアもよろしくね」
「はい、お母さま。 あ、そうです、ご報告が。商人の――」
イクシアの報告の途中で「お母さ~ん」とペリウィンクルもやって来て「プリムラさんとマロニさんが来てるよ~」と報告する。
「そっか、二人ともありがとう。 ちょうど買い物したいと思ってたのよ、ナイスタイミングね。じゃあ、わたしはご挨拶と商談に――」
そう言って飛び立とうとしたビオラを「あ、お母さん待って」とペリウィンクルが止める。
「今、プリムラさん泣いてるから。ちょっと時間おいた方がいいよ」
「……は?」
「泣いてるの。プリムラさん」
「え? なんで?」
「お母さま。 説明が足りないようなので、わたしから補足を――」
そうして始まったイクシアの補足によると、マロニと一緒にやって来たプリムラは、オアシ巣の近くに本物の世界樹があることに驚き、荷物を放り出すかのようにして世界樹の前に一目散に飛んでくると眼に涙を溜めて祈りを捧げたそうだ。
プリムラと部下の働き蜂たちが世界樹に真摯に祈りを捧げていると突然、まるで世界樹に後光が差すかのように(オアシ巣が)強烈な輝きを放ったようだ。
位置的に、イクシアやペリウィンクルは巣が光ったのだと分かったが、祈りを捧げていたプリムラたちは世界樹そのものが輝いたと勘違いしたようだ。「なんと神々しい! わたしたちの祈りを世界樹と精霊たちは祝福して下さった!」と、興奮して手が付けられないレベルで感涙に咽んでいるらしい。
―― ペパーミントぉ……っ!
「そ、そっか…… にしても、どうしちゃったのプリムラさん…… そんなキャラだっけ?」
「お母さま。 ホンモノの世界樹といえば最高峰の御神木ですよ。妖精蜂にとってはこれが普通の反応かと。 世界樹が誕生したときもあまり驚かず、いつも下着姿で枝にとまってお腹をポリポリ掻きながら気持ちよさそうに昼寝をされているお母さまほど肝の座った妖精蜂はそうそう居ませんよ」
―― イクシア…… 褒めてるの? けなしてるの? 褒めてるのよね? でもちょうど日陰になって風の通りも良くてお昼寝に最適なのよ、あそこ。
「じゃ、じゃあ…… ちょっと間を置いてから挨拶に行くよ」
「はい、それがいいかと思います」
外敵の襲来やマーゴロック夫妻のことなどがあったため、子供ながらに空気を読んで主張を控えていたペパーミントもとうとう痺れを切らせて感情を噴出させた。
早朝、ビオラが目を覚ますとすぐにペパーミントが怒りも露わに飛び込んできたのだった。
―― や、約束……? なんだっけ?
すっかり何のことだか忘れているビオラは、目の前でプンスコ怒っている娘に「何のこと?」と問いかけては火に油を注ぐだろうと、目線を泳がせながら「え~っと……」と明言を避けていた。
「わたしのお洋服っ!!」
そう言われてようやくビオラは思い出した。ファッションショーを開催した夜にペパーミントが描いた原案をもらっていたが、材料の布が不足していたこととその後のゴタゴタで後回しにされ、すっかりビオラの頭から抜け落ちていた。
「もうイク姉ぇの服がキツくなってきたのぉ! 早く作ってぇ!!」
「ごめんね、ペパーミント。 でも材料が無くて…… 次に商人さんが来るまで待ってくれないかなぁ? それまでペリウィンクルのお下がりで――」
「やだやだやだやだぁっ!! 今すぐ作ってぇ!!」
部屋の中をジタバタしながらゴロゴロと転がりまわるペパーミントにビオラが困っていると、まるで彼女を助けるかのようにベビーベッドの卵からピシッとヒビの入る音がした。
「あっ! ほらほら、ペパーミント! 産まれるよ! 見て見て、卵にヒビが入ったよ!」
ペパーミントの気を引くようにビオラが言うと、暴れていたのが嘘のようにピタッと止まったペパーミントは「えっ! ホント!?」とベビーベッドにかぶりつくようにして卵の様子を見守り始めた。
ピシッ、ピシッとヒビが大きくなるたびにペパーミントの顔は興奮で赤く染まり、彼女の周りを漂っている光の精霊もキラキラ度を増していく。そして。
「おぎゃあっ! おぎゃあっ!」
「わぁっ! 産まれた、産まれたよママ! わたしの妹!」
喜びで飛び上がったペパーミントはブンブンと部屋中を飛び回る。
―― みんな反応は一緒ね。
イクシアもペリウィンクルも、初めて妹が産まれたときにはハシャいで飛び回っていたなと微笑ましくペパーミントの様子をビオラは見る。
そしてベビーベッドに近づいたビオラは産まれたばかりの娘を抱き上げて語り掛けた。
「おはよう、グラジオラス。 これからよろしくね」
―― この子は…… 大人しくて甘えん坊さん、かな?
「グラジオラス♪ グラジオラス♪」
妹の名前を連呼しながら飛び回るペパーミントを見て、ふふっと笑ったビオラは声をかける。
「ペパーミント、グラジオラスのことよろしくね。 お姉ちゃんとして色々な事教えてあげてね」
「うん! ねぇママ、グラジオラス抱っこしていい?」
「ふふっ、いいよ。 ほら、そこに座って」
ペパーミントに椅子に座るよう促すと、ビオラは手を広げて構えているペパーミントの腕の中にグラジオラスを渡して抱かせてあげた。
嬉しさと感動で上気したペパーミントは「可愛い!」と言い、その彼女の感情に反応した光の精霊はビカーッと、かつてない程の輝きを見せた。
「眩しっ……!!」
あまりの光量にビオラは手で光を遮るようにして顔を背ける。グラジオラスも吃驚してギャン泣きである。
「ペパーミント、ちょっと光量抑えて! 赤ちゃんにこの光はマズいわ!」
「あ、ごめんごめん、ママ。 ごめんね~、グラジオラス~」
慌ててペパーミントが、というか光の精霊が光量を抑えたとき、イクシアが血相を変えてビオラの部屋に飛び込んできた。
「お母さま! 何事です、今の光は?!」
どうやら巣の外にまで激しく漏れるほどの光量であったらしい。
「あ、うん、ごめんイクシア。 妹が産まれた喜びでペパーミントが光って…… 何言ってんだ、わたし……」
「何となく察しました。 妹が産まれたのですね!」
「うん、グラジオラスって名前だよ。 イクシアもよろしくね」
「はい、お母さま。 あ、そうです、ご報告が。商人の――」
イクシアの報告の途中で「お母さ~ん」とペリウィンクルもやって来て「プリムラさんとマロニさんが来てるよ~」と報告する。
「そっか、二人ともありがとう。 ちょうど買い物したいと思ってたのよ、ナイスタイミングね。じゃあ、わたしはご挨拶と商談に――」
そう言って飛び立とうとしたビオラを「あ、お母さん待って」とペリウィンクルが止める。
「今、プリムラさん泣いてるから。ちょっと時間おいた方がいいよ」
「……は?」
「泣いてるの。プリムラさん」
「え? なんで?」
「お母さま。 説明が足りないようなので、わたしから補足を――」
そうして始まったイクシアの補足によると、マロニと一緒にやって来たプリムラは、オアシ巣の近くに本物の世界樹があることに驚き、荷物を放り出すかのようにして世界樹の前に一目散に飛んでくると眼に涙を溜めて祈りを捧げたそうだ。
プリムラと部下の働き蜂たちが世界樹に真摯に祈りを捧げていると突然、まるで世界樹に後光が差すかのように(オアシ巣が)強烈な輝きを放ったようだ。
位置的に、イクシアやペリウィンクルは巣が光ったのだと分かったが、祈りを捧げていたプリムラたちは世界樹そのものが輝いたと勘違いしたようだ。「なんと神々しい! わたしたちの祈りを世界樹と精霊たちは祝福して下さった!」と、興奮して手が付けられないレベルで感涙に咽んでいるらしい。
―― ペパーミントぉ……っ!
「そ、そっか…… にしても、どうしちゃったのプリムラさん…… そんなキャラだっけ?」
「お母さま。 ホンモノの世界樹といえば最高峰の御神木ですよ。妖精蜂にとってはこれが普通の反応かと。 世界樹が誕生したときもあまり驚かず、いつも下着姿で枝にとまってお腹をポリポリ掻きながら気持ちよさそうに昼寝をされているお母さまほど肝の座った妖精蜂はそうそう居ませんよ」
―― イクシア…… 褒めてるの? けなしてるの? 褒めてるのよね? でもちょうど日陰になって風の通りも良くてお昼寝に最適なのよ、あそこ。
「じゃ、じゃあ…… ちょっと間を置いてから挨拶に行くよ」
「はい、それがいいかと思います」
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