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第八十一話_イクシア、思い出の本を手に入れる
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しばらく間を置いて、ビオラは世界樹の花畑まで飛んで降りていった。
「「ひっぐぅっ…… ぐぅ…… ぐすんっ……」」
プリムラと彼女の部下たちは顔中を涙と鼻水でいっぱいにしてまだ泣いていた。そっとしておこうと思ったビオラは、近くでリス族の部下たちにテント設置の指示を出していたマロニの許へ行き挨拶する。
「こんにちは、マロニさん」
「こんにちは、ビオラ様。 またお世話になります」
「いえいえ、こちらこそお世話になります。 あれ? ルキウスさんたちは?」
「えぇ、彼等はマーゴロックさんのところに行きましたよ。 わたしも後ほど訊ねようと思ってます。 それにしてもビックリしましたよ、来てみれば前回は無かった世界樹があるんですから」
「いや~、偶然にも育っちゃいまして…… それにしても……」
チラッとビオラはプリムラたちを見る。
「プリムラさんたち、すごいですね……」
「それは、まぁ…… リス族のわたしでも神々しさと言いますか神聖さを感じますし、妖精蜂の方々なら尚更でしょう。 ビオラ様たちも最初は驚かれたのでは?」
「えっ、えぇ、まぁ、最初はね、最初は…… はは、はははっ…… 慣れちゃえば、まぁ普通ですよ」
―― あんなん見たら、とてもじゃないけど世界樹の枝で昼寝してるとは言えない……
「あの状況ですし、プリムラさんが落ち着くまではわたしと商談でもどうでしょう? 何か不足されているものなどありますか?」
冷や汗をかきながらプリムラたちの様子を見るビオラにマロニは商談を勧める。
「そうですね、そうしましょう」
二人が商談を始めると、巣のほうからイクシアが蜂蜜瓶を抱えて飛んできてマロニに「蜂蜜のお湯割りは如何です?」と勧める。
「おぉ! ありがとうございます。 いつも楽しみにしてるんですよぉ!」
マロニはそう言うと「お~い! 誰か~」と休憩中の部下に声をかけて湯呑とお湯を持ってこさせる。イクシアの持ってきた蜂蜜をお湯で割ってかき混ぜたマロニは、ズズッと湯呑をすすると「はぁ~」と気持ちよさそうに息を吐いた。
そうしていると、正気を取り戻したプリムラがちょっと恥ずかしそうに合流する。
「申し訳ないです、あまりのことに取り乱しました……」
「いえ、プリムラさま。 わたしもミニ世界樹のつもりで育てていた苗が本物の世界樹と分かったときは驚きましたし。 まったく動揺しなかったのはお母さまくらいですよ。今でもお母さまは世界樹の枝で―― むぐっ……!」
「いやいや、そんなことないですよ、わたしも驚きましたし!」
ビオラは慌ててイクシアの口を押えながら被せ気味に言った。
「それはそうでしょう、誰だって驚きますよ。 それにしても、これで緑地化も捗りますね! 世界樹の魔力に惹かれて精霊や生き物も沢山寄ってくるでしょうし、これから賑やかになりそうですね!」
―― ん? そういえば、ペパーミントに光の精霊がまとわりつき始めたのって世界樹が発芽したころか?? そうか、それでか。
「おっと、そうでした。 イクシアさんがマロニさんに注文した本を仕入れて参りましたよ」
「ホントですか?! プリムラさま!」
目をキラキラさせてイクシアは身を乗り出す。プリムラは笑顔で「はい」と答えると、未だ世界樹の近くでハァハァ言っている部下たちに「ご注文の品を持って来て~!」と指示を飛ばした。
「すみません、イクシアさんからの注文ですが、やはり妖精蜂サイズの本となると彼女たちに頼らざるを得なくて」
マロニが申し訳なさそうに頭を掻くが、「いえいえマロニさま、ありがとうございます」とイクシアはお礼を返す。そうしていると、プリムラの部下が妖精蜂にとっては大きめで分厚い本を抱えてやって来た。
「あれ? イクシア、それって『みんな大好き! 世界の珍獣』じゃない?」
「はい、お母さま。 実用的ですし、それにお母さまがご実家から持ってこられた本ですから」
「そんな…… もしかしてわたしのこと考えて注文したの?」
―― そ、そんなに思い入れがあるわけじゃないから申し訳ない……!
冷や汗の流れるビオラだったが、イクシアはプリムラから嬉しそうに本を受け取りながら「それもありますが……」と言って大事そうに本を抱きしめる。
「わたしにとっても思い出の本です。 これで自分たちのこと、ゼフィたちのことを学びました」
思い出に浸るような、じんわりとした笑顔を見せるイクシアの表情にホッとしたビオラは「そっか」と微笑んだ。
「イクシアさん、他にも幾つか本をお持ちしましたよ。 よろしければ御覧になりますか?」
商魂逞しいプリムラは部下たちに本を持って来させてイクシアの前に並べる。
「え、でも……」
「いいよ、イクシア。 もう一冊えらびなさい」
「いいんですか、お母さま?」
「うん、もちろん。 でも、イクシア。一つだけ約束して」
珍しく条件を出す母に驚いたイクシアは神妙な顔になって「はい!」と応える。
「イクシア……」
「……はい」
ポンとビオラはイクシアの肩に手を置いて宣告する。
「『ニジュウヨジカンタタカエマスカ』の魔法の解読を完成させてもゼフィたちで試したりしないように」
「えぇっ!!! ダメですか?!」
「ダメです!」
ビオラは真剣な表情で危険な魔法の使用を禁止した。
「「ひっぐぅっ…… ぐぅ…… ぐすんっ……」」
プリムラと彼女の部下たちは顔中を涙と鼻水でいっぱいにしてまだ泣いていた。そっとしておこうと思ったビオラは、近くでリス族の部下たちにテント設置の指示を出していたマロニの許へ行き挨拶する。
「こんにちは、マロニさん」
「こんにちは、ビオラ様。 またお世話になります」
「いえいえ、こちらこそお世話になります。 あれ? ルキウスさんたちは?」
「えぇ、彼等はマーゴロックさんのところに行きましたよ。 わたしも後ほど訊ねようと思ってます。 それにしてもビックリしましたよ、来てみれば前回は無かった世界樹があるんですから」
「いや~、偶然にも育っちゃいまして…… それにしても……」
チラッとビオラはプリムラたちを見る。
「プリムラさんたち、すごいですね……」
「それは、まぁ…… リス族のわたしでも神々しさと言いますか神聖さを感じますし、妖精蜂の方々なら尚更でしょう。 ビオラ様たちも最初は驚かれたのでは?」
「えっ、えぇ、まぁ、最初はね、最初は…… はは、はははっ…… 慣れちゃえば、まぁ普通ですよ」
―― あんなん見たら、とてもじゃないけど世界樹の枝で昼寝してるとは言えない……
「あの状況ですし、プリムラさんが落ち着くまではわたしと商談でもどうでしょう? 何か不足されているものなどありますか?」
冷や汗をかきながらプリムラたちの様子を見るビオラにマロニは商談を勧める。
「そうですね、そうしましょう」
二人が商談を始めると、巣のほうからイクシアが蜂蜜瓶を抱えて飛んできてマロニに「蜂蜜のお湯割りは如何です?」と勧める。
「おぉ! ありがとうございます。 いつも楽しみにしてるんですよぉ!」
マロニはそう言うと「お~い! 誰か~」と休憩中の部下に声をかけて湯呑とお湯を持ってこさせる。イクシアの持ってきた蜂蜜をお湯で割ってかき混ぜたマロニは、ズズッと湯呑をすすると「はぁ~」と気持ちよさそうに息を吐いた。
そうしていると、正気を取り戻したプリムラがちょっと恥ずかしそうに合流する。
「申し訳ないです、あまりのことに取り乱しました……」
「いえ、プリムラさま。 わたしもミニ世界樹のつもりで育てていた苗が本物の世界樹と分かったときは驚きましたし。 まったく動揺しなかったのはお母さまくらいですよ。今でもお母さまは世界樹の枝で―― むぐっ……!」
「いやいや、そんなことないですよ、わたしも驚きましたし!」
ビオラは慌ててイクシアの口を押えながら被せ気味に言った。
「それはそうでしょう、誰だって驚きますよ。 それにしても、これで緑地化も捗りますね! 世界樹の魔力に惹かれて精霊や生き物も沢山寄ってくるでしょうし、これから賑やかになりそうですね!」
―― ん? そういえば、ペパーミントに光の精霊がまとわりつき始めたのって世界樹が発芽したころか?? そうか、それでか。
「おっと、そうでした。 イクシアさんがマロニさんに注文した本を仕入れて参りましたよ」
「ホントですか?! プリムラさま!」
目をキラキラさせてイクシアは身を乗り出す。プリムラは笑顔で「はい」と答えると、未だ世界樹の近くでハァハァ言っている部下たちに「ご注文の品を持って来て~!」と指示を飛ばした。
「すみません、イクシアさんからの注文ですが、やはり妖精蜂サイズの本となると彼女たちに頼らざるを得なくて」
マロニが申し訳なさそうに頭を掻くが、「いえいえマロニさま、ありがとうございます」とイクシアはお礼を返す。そうしていると、プリムラの部下が妖精蜂にとっては大きめで分厚い本を抱えてやって来た。
「あれ? イクシア、それって『みんな大好き! 世界の珍獣』じゃない?」
「はい、お母さま。 実用的ですし、それにお母さまがご実家から持ってこられた本ですから」
「そんな…… もしかしてわたしのこと考えて注文したの?」
―― そ、そんなに思い入れがあるわけじゃないから申し訳ない……!
冷や汗の流れるビオラだったが、イクシアはプリムラから嬉しそうに本を受け取りながら「それもありますが……」と言って大事そうに本を抱きしめる。
「わたしにとっても思い出の本です。 これで自分たちのこと、ゼフィたちのことを学びました」
思い出に浸るような、じんわりとした笑顔を見せるイクシアの表情にホッとしたビオラは「そっか」と微笑んだ。
「イクシアさん、他にも幾つか本をお持ちしましたよ。 よろしければ御覧になりますか?」
商魂逞しいプリムラは部下たちに本を持って来させてイクシアの前に並べる。
「え、でも……」
「いいよ、イクシア。 もう一冊えらびなさい」
「いいんですか、お母さま?」
「うん、もちろん。 でも、イクシア。一つだけ約束して」
珍しく条件を出す母に驚いたイクシアは神妙な顔になって「はい!」と応える。
「イクシア……」
「……はい」
ポンとビオラはイクシアの肩に手を置いて宣告する。
「『ニジュウヨジカンタタカエマスカ』の魔法の解読を完成させてもゼフィたちで試したりしないように」
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「ダメです!」
ビオラは真剣な表情で危険な魔法の使用を禁止した。
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