騎士という公務員になりたい僕は組織を抜けたい~能力は一つで剣を使わない多重万能能力の神速剣士~「お前はもう、死んでいる」

PENGUIN

文字の大きさ
19 / 24
爆裂業雷の純白魔女

第19話 『赤い流星』(彗星じゃないよ。彗星じゃないよ)

しおりを挟む
「あースカッとした。よし! もうひとふんばりしますかねぇ。サーチ! ……って、あれ? もう私いらなそうなんだけど……。まぁ、いいや。みんなが敵を駆逐するまで魔力こねて遊んでよーっと」

 彼女は魔力を具現化させて粘土細工のような物を作り、遊びながら味方が傷を負ったらすぐさま回復させ、傷を付けた敵を粘土細工のような魔力の塊をぶつけてさせていく。
 彼女が作った魔力の塊はその塊の中に物理的な物が何も入らない程に密に……そう、触れた物を粉微塵にする程に超高密度の魔力の塊だった。物理的な物に例えるなら大砲。金属の塊。それが魔力だけで出来ていると考えてもらっていい。

「私が頑張り過ぎるとみんなの仕事なくなっちゃうし、それになによりもう3ヶ所目だから疲れてきちゃったのよねぇ」

 彼女はぶつくさ言いながらも敵と仲間の動きを見て的確に援護していた。援護射撃の破壊力はやりすぎとまで組織の人間は感じていたが……。

 何発目かの援護射撃をするタイミングで何かが飛来して来て、彼女の後頭部に当たった。

「いっったあぁーい! ったく、どこの誰よ! 何すんのよ!」

 彼女は受けた。あー、あっぶなぁーい。エーティーフィールド切り忘れてたから無傷で済んだで助かったー。……うん、汚れてもないわね。よかったよかった。

 攻撃を受けた方向を向くと十数個の飛来石ストーンが飛んできていた。どのストーンも直径1メートル以上の大物でその中でも一際大きいサイズで直径5メートルのストーンだ。
 そしてその十数個のストーンとストーンの間を移動しながら彼女に近付いてくる『赤い何か』がいた──。









───

 -ナザル森林戦闘前。新魔王軍・ナザル臨時司令室にて。

「……──アストフィア王国に攻め入るが敵は国ではなく『組織』だ。そこをはき違えるな。では各自作戦を開始しろ」

 ナザル臨時司令室という名ではあるが少し広いテントのことである。中は通信機器とオペレーター数名、テント中央に大きいテーブル、その上には地図が広げてあり、赤く光る点が地図上を動いていた。

 そこで通信具を使って指示を出していた全身真っ赤な軍服を着てサングラスを掛けた魔人の男がいる。そしてその後ろで黒い軍服を着た別の魔人の男がいた。

「ヘルゲン少佐、今回の作戦上手くいくと良いですね」

「ああ、そうだな。新魔王軍の初陣だから勝利で収めたいところだ。だが、気がかりなことがある」

「『マルチデリーター』ですかな?」

「それもあるが『爆裂業雷の魔女』と呼ばれる魔法使いがいるらしい。情報によればやつは『全属性の魔法が使える』と、ある。誇張かもしれん。だが、それがもし本当なら厄介な相手になる」

「全属性……ですか。……なるほど、それは厄介ですね。ただ、魔力をどれ程持っているかによって脅威度は変わりますな」

「そうだ。そこなんだ。組織のナンバー2といわれているやつだ。低くはなかろう。だが、やつとて人間。限界はあるはず。今作戦でやつを始末できれば良いが、出来ずともやつの限界を測れれば上出来といえよう。無論、作戦は完遂した上で、だ」

「ヘルゲン少佐はそこまで計算した上で作戦を立てていらしたんですね。敬服致します」

「ラル大尉、君ももう上に立つ者になる。いずれ君も作戦立て、指揮することになるだろう。その時までにはここまで思考出来るようにしておけ」

「ハッ! 承知しました! このラル大尉、肝にめいじておきます!」



「アルファ! 敵を目視で確認! 行動に移ります!」

 オペレーターの一人がヘルゲン少佐に報告する。

「む、早いな」

「それもそうかと。アルファチームはあのゼル軍曹がいるチームですから」

「だとしてもだ。私の想定より──「イプシロン! 敵を確認! 行動に移ります」」

「ゼータ! 同様!」

「ガンマ! 同じく!」

「デルタ! 同様!」

「ベータ! 敵を目視で確認! 行動に移ります」


「ほう、なるほど。これをどうみる? ラル大尉」

「ハッ。ヘルゲン少佐の『予測より早く接敵した』ということでしょうか? で、あれば『我々の隊』が少佐の予測より早く動いたということだと思われます。なにせ新魔王軍の設立以降、初の大規模作戦でみな士気が高く、やる気に満ち溢れていますからな。私はそう思います」

「30点だ。ラル大尉。その回答では指揮官になるのは当分先の話になりそうだ」

「!! な、なぜでしょうか!? い、一体、私の何が悪かったのでしょうか!?」

「ふむ、そのくって掛かる姿勢は良し。……ラル大尉の回答は今回の作戦でなければ一概に否定は出来ない。だから30点だ。だが、今回は違う。地図を見たまえ」

「……ッ!!」

「気付いたか」

「はい。接敵地点が想定よりだいぶ我々のテントの近くにあります」

「そうだ。つまり我々の想定より『敵の動きが早い』ということだ。情報通りの敵人数・組み合わせだが、それぞれの敵の動く速度が我々の予測より早いということだ。地図上の情報は地形と我々の位置を把握できるが、敵の位置は現場からの報告でしか把握できない。そこを見落としていたな。ラル大尉」

「ハッ! 申し訳ありません。勉強不足でした。必ずや次に活かしてみせます」

「その意気だ。ラル大尉。ではこちらはどうすればいいと思う?」

「……単純に敵に合わせ『我々の作戦行動を早める』ではありますまいな。……我々の隊早めてしまうと他の隊と作戦のタイミングが噛み合わなくなってしまう。つまり敵の行動を遅らせる必要がありますな。この場合、作戦の遅延……ッ!! ここでプランDでありますか!?」

「正解だ。……各位、プランDに作戦を変更せよ!」


「「「こちらHQ、……──」」」


 ヘルゲン少佐の指示によりオペレーターが一斉に各小隊長に指示を出す。


「ラル大尉。我が隊が今作戦で成すのはなんだ? 言ってみたまえ」

「ハッ! 我々の隊が今作戦で成すのは『できるだけ敵を引き付け疲弊させること。始末できるのであれば始末する』で、あります!」

「そうだ。が我が隊に求められているのは『時間稼ぎ』だ。我ら新魔王軍が勝利するために私の隊の勝利は必要ない。無論、勝てるなら勝つに越したことはないが……。今回はその限りではないだろう」

「マルチデリーター。そして先に懸念しておられた『爆裂業雷の魔女』ですかな?」

「そう言うことだ。我々はその二人を戦場に釘付けにせねばならん。今回、の勝利のカギを握っているはハーゲンドルト・トバイツェ少佐率いる隊──通称『ハト』だ。『ハト』にはあのエル・ハルトマン少尉がいる。彼らに花を持たせるのが我々の役目だ」








 ──『ハト』はおそらく『マメデッポウ』をくらってます。







「あのハルトマン少尉でありますか!? 『ハト』の中でも特段秀でた戦闘能力を持つギア使いの彼女のことですか?」

「ああ。『ハト』自体は少数精鋭舞台だが、トバイツェ少佐いわく、今作戦の『ハト』はより人数を絞っていくそうだ」

「!! トバイツェ少佐殿はそこまで今回の作戦に賭けておられるのですか!?」

「らしいな。私はトバイツェ少佐には勝利して欲しいのだよ。だから我が隊はなんとしても任務を遂行せねばならん」

「私も賛同致します!」





 ──その『ハト』達、おそらく『マメデッポウ』くらってます。







「トバイツェ少佐の勝利のために、新魔王・ジーク様に勝利を」

「ジーク様に勝利を」








 ──作戦開始から数時間が経過し、作戦段階が次へと移る。

「そろそろ頃合いだろう。……各位、作戦段階をフェーズ2へ移行せよ! 繰り返す作戦段階をフェーズ2へ移行せよ!」

 オペレーター達が各小隊長に指示を出す。

「ここまでは上手くいっておられますな。作戦の出鼻は狂わされましたが少佐殿の采配によりフェーズ1が見事滞りなく終了しましたな。これならフェーズ2が効果的に働きますな」

「当然だ。本来、時間稼ぎが我々の任務だが、敵を倒せるのなら『敵を倒してしまっても構わない』のだろう」


 ヘルゲン少佐は不敵な笑みを浮かべたその時、オペレーターが慌てた様子で報告し始める。


「にゅ、入伝!! ウルフィリア研究基地より入伝!! 『組織の白い化物』により基地が壊滅。また施設の最高傑作と正面からやり合い、無傷で『組織の白い化物』が勝利した。との報告が!!」

「なに、それは本当か!? あれに無傷で勝利したと!?」

「はい! そしてその『組織の白い化け物』は空間転移でどこかへ転移した模様。転移先は不明。貴殿の隊も気を付けたし。とのこと」

「不味いな。そんな化物が今こちらにこられでもしたら──」














 ──ドォオオオーーーン!!!










 地響きと共に爆音が鳴り響く。


「な、なんだ!? ……ッ! まさか!!」

「アルファ! 空からの攻撃を受け、被害甚大!!」

「ベータ! 同様!!」

「ガンマ! 同じく!」

「デルタ! 同様!」

「イプシロン! 同じく!」

「ゼータ! 同じく!」



「同時空撃だと!? ……アルファ! 回線を直接私に繋げ!!」

「はい!」

「私だ、アルファ。敵の詳細を求む!」

「ハッ! 敵は一体! 全身が真っ白い服を着た魔法使い! やつの魔法は化物級です! 応援願──ドォオオオーーーン──ザザッ──ツー」

「『白い化物』だと!? えぇい、このタイミングでやつが来るか。ならば仕方ない。……私が出る!! 各位、私がやつの相手をするまで回避に専念せよ!」

「ヘルゲン少佐みずから出撃されるのですか!?」

「ああ、私がやつの相手をしている間の指揮はラル大尉、君に任せる。フェーズ2の作戦を遂行せよ! ……大丈夫だ。君ならやれる」

「ハッ! 必ずやその期待に応えて見せましょう!」




 ヘルゲン少佐は武器が置いてあるテントに行き、背中に同じ種類の剣を二本差し、腰の左右にはまた別の種類の剣を二本差す。腰の後ろにはヘルゲン専用に改良された銃を装備。他の武器やアイテムも動きに邪魔にならない所に装備した。最後に大口径の大型ライフルを手に持ち外に出る。そしてオペレーターに無線で出撃合図を出す。














「デュア・ヘルゲン! 出撃する!」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...