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本編
初顔合わせ
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ガタゴト揺れる悪路を馬車に揺られながら、数日かけて伯爵の領地に着いた。
ちょっと道の状態が悪すぎて、休憩をかなり多めにとっても途中何度ももどしてしまった。こんな道を通るくらいなら、もう二度と王都になど戻らなくていいと思うほど酷かった。
初顔合せということもあって、伯爵家の少し手前の町で一晩明かして体調を整えてから翌朝早くに伯爵家へ到着した。
初めて見た伯爵は、何と言うか綺麗な人だった。
「男色家が美形って本当なんですね」
「よく知ってるじゃないか」
これが、彼と初めて交わした言葉だった。
一緒に出迎えに出ていた使用人達は顔を引きつらせた。ここまで送り届けてくれた我が家の使用人達は、顔色を青くしていた。
しょうがないじゃない。本当に綺麗な顔をしているんだから。
最近寄ってくるのがお世辞にもかっこいいとは言えない人達ばかりだったせいで、余計にそう思っちゃったんだから。
伯爵と家令について、屋敷の中へと入る。
私の部屋として案内されたのは、二階の陽当たりのいい居心地の良さそうな部屋だった。
広くて白を基調とした、女性が好みそうな細かな装飾がところどころに施された部屋で、奥の寝室には大きくて丈夫そうな天蓋付きのベッドが置いてあった。
家令曰く「旦那様の部屋とは離れており部屋自体に防音も施してありますので、お気兼ねなく励んでいただけます」とのこと。
そう言えばそういう目的でこの家に来たんでしたね!お気遣いどうも!!!
一時間後に迎えを寄越すのでサロンに来るように、と言い置いて伯爵と家令は部屋を出て行った。
執事を一人残そうかと言われたけれど、気疲れしそうなので遠慮した。うちは男爵家の中でもお金がない方だったので、使用人がずっとそばに居るような暮らしには馴れていないのだ。
昨日一晩宿屋でぐっすり眠ったけれど、それでも疲れを感じてソファに座り込んだ。連日の長時間の移動で、痛いし怠い身体をふかっとしつつもしっかり支えるよい座り心地だ。
ソファ横のローテーブルに水差しが置かれていたので、コップに注いで口をつける。よく冷えた爽やかなハーブティーが、少し疲れを癒してくれた。
改めて部屋を見回すと、シンプルながらも品のよい調度品で調えられていた。このソファもテーブルも水差しも、うちの男爵家の物とは質が違うのが、なんとなく感じ取れた。
窓は大きく、広い庭が見渡せる。美しく整えられた散歩道のところどころには、季節の花が程よく植えられている。腕のいい庭師なのだろう。
「よい部屋を与えられちゃったわね」
思わず呟く。
正直、もっと小さい部屋で冷遇されると思ってた。子どもさえ産めばいいと。
けど、これではまるで
「本当の正妻のよう」
ちょっと恐縮してしまうほどだ。
でも、まだわからない。見せかけだけ立派で、ゴミみたいな扱いを受けるのかもしれない。
この話がまとまるまでに山ほどきた妾勧誘のせいで、私はすっかり疑い深くなっていた。
しばらく考え事をしていたら、コンコンとノックの音がして執事服姿の男が入って来た。
「そろそろ宜しいでしょうか」
もう一時間経ったらしい。
私は頷いて彼の後に続いた。
ちょっと道の状態が悪すぎて、休憩をかなり多めにとっても途中何度ももどしてしまった。こんな道を通るくらいなら、もう二度と王都になど戻らなくていいと思うほど酷かった。
初顔合せということもあって、伯爵家の少し手前の町で一晩明かして体調を整えてから翌朝早くに伯爵家へ到着した。
初めて見た伯爵は、何と言うか綺麗な人だった。
「男色家が美形って本当なんですね」
「よく知ってるじゃないか」
これが、彼と初めて交わした言葉だった。
一緒に出迎えに出ていた使用人達は顔を引きつらせた。ここまで送り届けてくれた我が家の使用人達は、顔色を青くしていた。
しょうがないじゃない。本当に綺麗な顔をしているんだから。
最近寄ってくるのがお世辞にもかっこいいとは言えない人達ばかりだったせいで、余計にそう思っちゃったんだから。
伯爵と家令について、屋敷の中へと入る。
私の部屋として案内されたのは、二階の陽当たりのいい居心地の良さそうな部屋だった。
広くて白を基調とした、女性が好みそうな細かな装飾がところどころに施された部屋で、奥の寝室には大きくて丈夫そうな天蓋付きのベッドが置いてあった。
家令曰く「旦那様の部屋とは離れており部屋自体に防音も施してありますので、お気兼ねなく励んでいただけます」とのこと。
そう言えばそういう目的でこの家に来たんでしたね!お気遣いどうも!!!
一時間後に迎えを寄越すのでサロンに来るように、と言い置いて伯爵と家令は部屋を出て行った。
執事を一人残そうかと言われたけれど、気疲れしそうなので遠慮した。うちは男爵家の中でもお金がない方だったので、使用人がずっとそばに居るような暮らしには馴れていないのだ。
昨日一晩宿屋でぐっすり眠ったけれど、それでも疲れを感じてソファに座り込んだ。連日の長時間の移動で、痛いし怠い身体をふかっとしつつもしっかり支えるよい座り心地だ。
ソファ横のローテーブルに水差しが置かれていたので、コップに注いで口をつける。よく冷えた爽やかなハーブティーが、少し疲れを癒してくれた。
改めて部屋を見回すと、シンプルながらも品のよい調度品で調えられていた。このソファもテーブルも水差しも、うちの男爵家の物とは質が違うのが、なんとなく感じ取れた。
窓は大きく、広い庭が見渡せる。美しく整えられた散歩道のところどころには、季節の花が程よく植えられている。腕のいい庭師なのだろう。
「よい部屋を与えられちゃったわね」
思わず呟く。
正直、もっと小さい部屋で冷遇されると思ってた。子どもさえ産めばいいと。
けど、これではまるで
「本当の正妻のよう」
ちょっと恐縮してしまうほどだ。
でも、まだわからない。見せかけだけ立派で、ゴミみたいな扱いを受けるのかもしれない。
この話がまとまるまでに山ほどきた妾勧誘のせいで、私はすっかり疑い深くなっていた。
しばらく考え事をしていたら、コンコンとノックの音がして執事服姿の男が入って来た。
「そろそろ宜しいでしょうか」
もう一時間経ったらしい。
私は頷いて彼の後に続いた。
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