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【よりは戻さないけど離婚もしない。夫が永遠の生殺し状態でヤンデレ化】
【夫ヤンデレ化バッドエンド】
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※このお話はバッドエンドです。
バッドエンドが読みたくない方は閲覧注意です。
**
ある日、気がつけば私は馬車の中にいた。
霧でもかかったように頭がぼんやりしていて、身体に力が入らない。
「ローザ、大丈夫?」
「……デイ、ヴィス?」
どうやら私は馬車の中で眠ってしまったようで、隣に座っているデイヴィスが私の身体を支えてくれている。
どうやって馬車に乗り込んだのかわからない。
今日は、公爵夫人マチルダと会う約束をしていた。
「デイヴィス、グラジオラス公爵邸へ……」
行ってほしいと伝える前に、デイヴィスは私の唇にそっと人差し指をそえた。
「心配しないで。公爵夫人には、ローザは体調が悪いと伝えておいたから」
「え? どうして?」
私は体調なんて悪くない。むしろ、日々楽しく健康に過ごしている。
デイヴィスは、やさしく私の髪をなでた。
「ローザ、君は病気なんだ。今から療養のために、僕と一緒にファルテール領内に帰るんだよ」
「あなた、何を言って……?」
少しずつ意識がはっきりとしてきた。
そういえば、今朝、デイヴィスに「新しいワインを入荷したんだ。味見をしてほしい」と言われて飲んだあと、急な眠気を感じてそこから記憶がない。
「もしかして、あのワインに睡眠薬を?」
デイヴィスは穏やかな笑みを浮かべていた。
「そうだよ。だって、ローザが一緒に来てくれないんだもの」
「あなた……何を考えているの?」
デイヴィスを押しのけるように腕をのばすと、その腕をつかまれた。
「何って、僕が考えるのはいつだって君のことだよ」
デイヴィスは、つかんだ私の腕に愛おしそうにキスをする。
「ローザ、君の予想どおり、離婚しないだけの関係はつらくてずっと苦しかったよ。でも、君の予想に反して、僕は君から離れたいとは思わなかった。だって、君を愛しているから」
そういうデイヴィスの瞳には、暗く狂気じみた光が宿っている。
「正気じゃないわ」
「そうだよ。僕は君への愛に狂っている」
デイヴィスの手を振り払い、逃げ出そうとした私をデイヴィスは押さえつけた。男女の力の差は歴然で私は身動きすらとれない。
「もう少しだけおやすみ、ローザ」
デイヴィスは、小瓶を取りだすと、その中身の液体を無理やり私に飲ませようとした。苦しくてほとんど吐いてしまったはずなのに、次第に意識が遠くなる。
「だれか、たす、けて……」
私の声は、だれにも届かなかった。
*
強制的にファルテール領に連れていかれた私は、病弱な伯爵夫人として屋敷内に囲われている。
デイヴィスは、私をまるで女神のように崇め、日々、愛をささやく。
何度も逃げ出そうとしたけど捕まってしまい、そのたびに、私ではなく、屋敷内の使用人たちがデイヴィスによって厳しく処罰された。
「やめて! お願いだから、私を罰して!」
私が涙ながらにそう伝えると、デイヴィスは「僕がローザにそんなひどいこと、できるわけがないよ」と悲しそうな顔をする。
私は以前、逃げようとしたときに偶然手に入れて、スカートの下に隠し持っていたナイフを取り出した。
「わ、私をここから出しなさい! さもなければ、あなたを、こ、殺すわ!」
ガタガタとふるえる手でデイヴィスにナイフを向けると、デイヴィスはいつものように優しく微笑む。ここにきてからの彼は、終始穏やかで、声を荒げることすらなくなっている。
「いいよ。ローザに殺されるなら本望だ」
デイヴィスは、ナイフを持つ私をためらいなく抱きしめた。
「そのかわり、僕を殺したこと一生忘れないでね。一生後悔して苦しんで、一生君の心の中に僕を住まわせてね」
その声は切実で、これがデイヴィスの心からの望みなのだとわかって、私は涙があふれた。
いつまでたっても、私は、ナイフを振りおろすことはできなかった。
「……デイヴィス、私たちはいったいどこで何を間違ってしまったの?」
「さぁ、僕にもわからないよ。ただ……」
――僕は今、すごく幸せだよ。
満面の笑みを浮かべるデイヴィスの腕の中で、私は静かに涙を流した。
【夫ヤンデレ化バッドエンド】おわり
バッドエンドが読みたくない方は閲覧注意です。
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ある日、気がつけば私は馬車の中にいた。
霧でもかかったように頭がぼんやりしていて、身体に力が入らない。
「ローザ、大丈夫?」
「……デイ、ヴィス?」
どうやら私は馬車の中で眠ってしまったようで、隣に座っているデイヴィスが私の身体を支えてくれている。
どうやって馬車に乗り込んだのかわからない。
今日は、公爵夫人マチルダと会う約束をしていた。
「デイヴィス、グラジオラス公爵邸へ……」
行ってほしいと伝える前に、デイヴィスは私の唇にそっと人差し指をそえた。
「心配しないで。公爵夫人には、ローザは体調が悪いと伝えておいたから」
「え? どうして?」
私は体調なんて悪くない。むしろ、日々楽しく健康に過ごしている。
デイヴィスは、やさしく私の髪をなでた。
「ローザ、君は病気なんだ。今から療養のために、僕と一緒にファルテール領内に帰るんだよ」
「あなた、何を言って……?」
少しずつ意識がはっきりとしてきた。
そういえば、今朝、デイヴィスに「新しいワインを入荷したんだ。味見をしてほしい」と言われて飲んだあと、急な眠気を感じてそこから記憶がない。
「もしかして、あのワインに睡眠薬を?」
デイヴィスは穏やかな笑みを浮かべていた。
「そうだよ。だって、ローザが一緒に来てくれないんだもの」
「あなた……何を考えているの?」
デイヴィスを押しのけるように腕をのばすと、その腕をつかまれた。
「何って、僕が考えるのはいつだって君のことだよ」
デイヴィスは、つかんだ私の腕に愛おしそうにキスをする。
「ローザ、君の予想どおり、離婚しないだけの関係はつらくてずっと苦しかったよ。でも、君の予想に反して、僕は君から離れたいとは思わなかった。だって、君を愛しているから」
そういうデイヴィスの瞳には、暗く狂気じみた光が宿っている。
「正気じゃないわ」
「そうだよ。僕は君への愛に狂っている」
デイヴィスの手を振り払い、逃げ出そうとした私をデイヴィスは押さえつけた。男女の力の差は歴然で私は身動きすらとれない。
「もう少しだけおやすみ、ローザ」
デイヴィスは、小瓶を取りだすと、その中身の液体を無理やり私に飲ませようとした。苦しくてほとんど吐いてしまったはずなのに、次第に意識が遠くなる。
「だれか、たす、けて……」
私の声は、だれにも届かなかった。
*
強制的にファルテール領に連れていかれた私は、病弱な伯爵夫人として屋敷内に囲われている。
デイヴィスは、私をまるで女神のように崇め、日々、愛をささやく。
何度も逃げ出そうとしたけど捕まってしまい、そのたびに、私ではなく、屋敷内の使用人たちがデイヴィスによって厳しく処罰された。
「やめて! お願いだから、私を罰して!」
私が涙ながらにそう伝えると、デイヴィスは「僕がローザにそんなひどいこと、できるわけがないよ」と悲しそうな顔をする。
私は以前、逃げようとしたときに偶然手に入れて、スカートの下に隠し持っていたナイフを取り出した。
「わ、私をここから出しなさい! さもなければ、あなたを、こ、殺すわ!」
ガタガタとふるえる手でデイヴィスにナイフを向けると、デイヴィスはいつものように優しく微笑む。ここにきてからの彼は、終始穏やかで、声を荒げることすらなくなっている。
「いいよ。ローザに殺されるなら本望だ」
デイヴィスは、ナイフを持つ私をためらいなく抱きしめた。
「そのかわり、僕を殺したこと一生忘れないでね。一生後悔して苦しんで、一生君の心の中に僕を住まわせてね」
その声は切実で、これがデイヴィスの心からの望みなのだとわかって、私は涙があふれた。
いつまでたっても、私は、ナイフを振りおろすことはできなかった。
「……デイヴィス、私たちはいったいどこで何を間違ってしまったの?」
「さぁ、僕にもわからないよ。ただ……」
――僕は今、すごく幸せだよ。
満面の笑みを浮かべるデイヴィスの腕の中で、私は静かに涙を流した。
【夫ヤンデレ化バッドエンド】おわり
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初めまして、なろうの短編が面白かったので書籍も拝読しました。
バルドルートとても良かったです、複雑な環境の中ゆっくりと無事結ばれていく様子に始終にこにこでした。
ただ、短編はデイヴィスへのざまぁがすっきり!だったんですが、長編はもちろん罪の重さでは当然の報いであるものの、最後の見送りのところが涙腺にきてしまったので、こちらのデイヴィス救済ルートもとてもありがたかったです。彼の一生懸命さが伝わり家族増えててまた泣いちゃいました。
それがお伝えしたく書き込ませて頂きました、素敵なお話をありがとうございました。
くろ様
はじめまして!
なろうの短編、そして、書籍を購入してくださりありがとうございます♪
感想をいただけて、とっても幸せです!!
そして、デイヴィス救済ルートを見つけて読んでくださり本当にありがとうございます!
デイヴィスの幸せをくろ様に喜んでもらえて、とても嬉しいです!
こちらこそ、温かい感想をくださり、ありがとうございました!
面白かったです。約15万字を一気読みしました。
書籍化後に作品を知ったためと、書籍の結末に大変満足していたため、(恐らく書籍化前より酷いと思われるデイヴィスの行いを読んだため)『よりを戻すルート』は無いわ〜と思いつつも読んだ所…デイヴィスルートもアリ!イイ!と掌クルクルしました。
よりを戻すルートだと、デイヴィスが本当にローザを好きで、反省し努力し、尊重しているのが分かります。
反省したデイヴィスのローザへの言動、まるで心優しい少年の初恋のようで、読んでいてほんわかした気持ちになれました(*´ω`*)
知風さま
一気読みありがとうございます!
すごく嬉しいです!!
そして、デイヴィスルート……そうなんです、実はWEB連載時では、デイヴィスルートもバルドルートと同じくらい人気があったという(笑)
そちらも楽しんでいただけてとっても嬉しいです♪
素敵な感想をくださり、ありがとうございました!
書籍化おめでとうございます(* ̄∀ ̄)ノ
新しく書き足し⋯⋯楽しみです(*´艸`)
すずまる様
お祝いのお言葉をくださり、ありがとうございます!
文字数が足りなさ過ぎて、7万字書き足しました(笑)
楽しんでいただけると、とっても嬉しいです♪