人生の行き先

Hanakappa!

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第十五話 最後の役目

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  4日間に渡る旅行も終焉に差し掛かっている。
私と優奈が従兄弟であるということが証明できた。けど、私の命は明日までに尽きてしまう。
今日しか、優奈と一緒にいることができない。
3日目になったが、私の体がどんどん細くなっていることに気がついた。

 なんと初日から7キロも減少していた。
いざ鏡に映る自分を見ると、頬骨がはっきり浮き出ているのがわかった。
私は大丈夫どころではなかった。
死ぬ前の標識(サイン)ということになる。
洗面台で顔を洗い、化粧水をつけて、準備をした。

「もうこれで最後なんだ。」
と言い残して旅館を去っていった。
大体想像はできている。
私の周りにたくさんの人がいるくらい。棺桶の中から見下している大勢の人が。

  この日は、行動班ではなく、友達や好きな人などで観光してもいいという許可が降りたので、私と優奈の2人でお互いの行きたい場所に行くことになった。

午前9時。函館に向かう私たち。
優奈がこんなことをずっと言っていた。
「函館の市場に行って海産物食べまくりたい!」
その願いを叶えるために、函館に向かうのだが、新幹線で札幌から4時間かかるそうだ。

最初は私も消極的になった。スケジュールがとても忙しいからだ。函館に滞在できる時間は1時間と言われていたからだ。

優奈からは、
「秘密だよ。」
としか言われていない。
私はこの日程通りに従うしか道はなかった。

  新幹線の座席に座った私たちは、長旅を楽しんでいた。
窓からの風は感じられないけれど、気がついたらビル群がそびえ立っている都会だったり、壮大な畑、酪農が盛んなので牛さんたちがたくさんいる牧場などの景色に私は心を打たれながら、窓の外を眺めていた。

  隣をふと見てみると、優奈は爆睡していた。
「だって4時間だもん。疲れるよね。」
と、小言を口に挟んだ。
優奈の頭が私の肩に触れていた。
  今まで添い寝なんてしたことがなかったけれど、友達にされるのならば何も問題はないと思った。

4時間の長旅が終わり、気がつけば正午になっていた。函館に到着した。
駅のアナウンスにより、人々が一斉に電車を出る。まるでショッピングモールにいるような感覚になっていた。

優奈は海産物が食べられることにとても興奮していた。回転寿司を探していた。

「やっぱりお寿司だよ!」
「そうだね。嫌になるまで食べようよ。」
私たちはこんな会話をして、一軒一軒探した。

すると、優奈が驚くように言った。
「ねえ!ここいいんじゃない?誰も並んでないよ!やったー!」


  子供みたいに喜んでいた優奈に対して、
私はだんだん怖くなってしまった。
自分がこの世界から急に消えてしまうということを。運命のカウントダウンが今、動いているかもしれないからだ。急に電車の中で倒れても、最後に先生やみんなの顔を見ることができないことを恐れていた。
  しかし、こんなことは頭の片隅において最後の日を楽しむって決めていた。
  だからもう全てを忘れるように、又はあの頃の自分になった気分で観光ができたらいいと私は思ったのだ。

お店に入った。
よくみる光景が頭に浮かぶ。
開店レーンに並ぶお寿司たち。それを楽しんでいる家族連れ、職人さんの手作りもある。

「やっぱりお寿司と言ったらマグロだよね。」

  席に座った私たちだが、優奈の興奮が止まらなかった。私は好きなものに興奮したことなんてないのに。人間は本当に不思議な生き物だ。

「由香里何食べるの?」
「私、かっぱ巻きがいい。」

  メニュー表を見ると、私が食べられそうなものは少なかったが、サイドメニューの品揃えがあったので、それを中心に食べることにした。
「あとは・・・玉子かな!」

私たちはお寿司を食べている間、
笑顔が1秒も絶えなかった。
こんなに人を笑顔にさせるものは存在していたのだ。私も久しぶりに誰かと笑い合った。

従兄弟の関係なので、お互いの親について話を聞く機会ができたので、聞くことにした。

「恵さんってどんな人なの?」
「うちのお母さんは、結構無愛想かな。あんまり笑ってるところを見たことがないけど、たまに見える微笑みが、私は好きかな。」
「由美さんは?」
「うちはすごく心配性なの。旅行の時も必ず持ち物を15回ぐらい確認してくれたかな。」
「そんなに?」
「私も正直呆れてるわけ。」

笑い声が絶えなかった。
私が本当に今まで求めていたものはこれだったのかもしれない。


私たちは40分食べて、たくさん話した。
「優奈、結構食べたね。」
優奈は15皿、私は10皿だった。ほとんどサイドメニューだったけど、とても楽しくて、美味しかった。
「最後の晩餐」っていう気分に心の片隅では思っていた。
でも、友達、いや従姉妹と一緒に食事ができるだけで私は十分だ。何も後悔してない。

「やばい!電車まであと5分だ!早く行こう!」
「優奈、どこに行くの!」
「内緒って言ってるじゃん!ここから6時間かかるの。夜になるかもね。」

  私はどこに行くのかわからなかった。
まさか、東京まで帰るとかそういうのではないかと考えていた。

  お会計を急いで済ませて、私は優奈に引っ張られながら、駅に向かった。
出発のベルが鳴っていたが、ギリギリ間に合うことができた。

「よかったー。」
「間に合ったね。」

  私たちは安堵した。

  前に見た景色が同じに見える。
けど、電車の方向に因って何箇所か違うところがある。
行きでは見つからなかったタワーとか、雪が残っている山などを見つけて、私は驚いた。

「見方を変えれば違う答えが出てくるんだ。」
と考えて横を見たら、行きと同じで眠っていた。私もあくびをするほど眠かった。

  時速200キロの新幹線を6時間。
ただただレールに向かって急発進していく。

  新幹線は敷かれているレールを歩けばいいけど、私たち人間は行き止まりのレールを自分自身で敷かなければいけない。でも私はもう作ることはない。脱線して線路から落ちると人は死ぬ。ということを私は窓の景色を眺めて思っていた。涙が溢れた。止まらなかった。
一滴の水滴が水面に反発して波紋ができる瞬間のように手の甲に静かに落ちた。

「私何泣いてるんだろう。」
「いついなくなるのかな。教えてよ。」
「でもまだ生きたい。生涯を終える1秒前でも一生懸命生きたい。」

  私は笑うことをなくそうとした頃に戻って人生をやり直したかった。後悔している。
私の望みは全て叶えてくれるわけではなかった。頭の中で過去の出来事が交錯している。
瞬間移動している物体が私を付き纏うように追いかけるように感じた。

私は眠っている優奈を見てこう思った。

「私が死んだら、この子はどうなるの?初めて私の死を悲しむ友に出会えた。従姉妹だからそうなのかもしれないけど、本当にありがとう。楽しかった。今まで。私が死ぬまで少しだけどよろしく。」

  気がついたら辺りは暗くなっていた。
漆黒の闇に包まれたかのようにすぐに日が暮れた。駅のアナウンスによると、目的地に着くそうだ。
目的地に着いたら私の旅が終わる。
  そして旅館に帰ってきたら私はどうなっているのだろう。
涙が止まらなかった6時間はあっという間に終わった。


私たちは駅を降りた。
本当の終着駅だった。
「旭川駅」と書いてあった。
「優奈本当にここであってるのか?周りに何もないぞ。」
「少し歩けばわかるよ。」
「こんな遅くに?もうみんな旅館に戻ってるでしょ?」
「先生に許可してもらった。携帯で連絡するようにって。」

  先生には本当に感謝しなければならない。もし彼がいなかったら、私は一匹狼となり、いつか自殺をするかもしれないという状態に陥っていたのかもしれないのだ。
優奈のいう通りに私は歩き続けた。
私の体全体がさらに細くなっていく。
もう寿命が短くなっていくようだ。
旅館に戻れるかどうかもわからなかった。


歩いて30分が経った。
すると、大きな施設があった。
「え?ここは?」
「そうだよ。由香里旭山動物園に行きたいって言ってたでしょ。だからきたの。」
「まさか、最後に行けるとは。思わなかった。」

サプライズかと思っていた。私の願いなんて今まで聞いてくれた人なんていなかったのに。というか、他人に言わなかった。

  もしできるのなら、と言ったはずなのに。
なぜ行けたのかはわからない。優奈が好きな函館の海産物の時間を割いてここまで計画してくれたんだ。結構ハードなスケジュールだと思っていたが、何も異論はなかった。

「なんで夜にしたの?」
「行けばわかるよ。」

早速園内に入場した。
すると、私はある動物に恋をしてしまった。
「きゃーー!シロクマ可愛い!」
私はガラスゲージの中にいるシロクマに手を合わせた。
  水の中に生きている生物は羨ましいと思う。なぜなら人間界みたいにいじめなどが存在しないからだ。ただひたすら水と共に行けていればいい。他の生物に食べられてしまうというリスクはあるけど。

希少価値の高い小魚が数百種類存在していた。

「何これ?こんな名前初めて聞いたよ。なんかかわいい!」
「由香里!これどう?見て。綺麗な青色してる!」

  私たちは動物たちに癒される時間がいつまでも続けばいいと思っていた。

  午後の9時になった。
そろそろ帰ろうとしていた。
先生には遅くなると優奈が報告してくれたが、大人がいないとこんなに怖くなってしまうのも事実だ。

  しかし、妙だった
朝に感じたあの気配。一体なんだったのだろうか。私はずっと気になっていた。

早く旅館に帰りたい。

私に残されているのは、天に召されるのを待つだけだ。

第十六話に続く。
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