時透

尾崎カデxヱ

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「あなたの書いたものはね?すごく価値のあるものよ。人間は沢山の物語を作り過ぎた。だから、私は想うの。あなたの作ったものは間違いなく、必要なものだって。」人をおだてるのは昔は得意だった。
「そんな事を言われてもな…僕は作家である事に対して、一種の諦観があるからな?」

そんなやりとりがあるホテルの一室で繰り広げられていた。

作家であることは間違いない。だが、まるで普通の人間に見える。こんな男が、そんな偉大なものを作った等と、誰が想うだろう?そう思ってるのは、疑わしい。女は続ける。

「あなたが今見ているものや、聴いていること、それに対してどう思うか、皆んなが聞きたがっている。それは世界を根底からひっくり返すぐらいの破壊力がある。」
すると、彼はえげつない目でその女を睨んだ。

「本当かなぁあァ?そんな事を君が信じているだなんて、微塵も感じないガァねえぇ?」
男は部屋の周りを隈なく、見廻して彼女をじっと見据えながら話した。
「どうせ、監視されている。俺の発した発言はすぐさま、全世界に公開される。すると、その著作権が問われるんだよ?わかってんのか?!」

「僕のアイディアを誰かが盗んで美味しい想いをするって事なんだよ?!??」

「俺の発した発言はすぐさま全世界に漏れて筒抜けだ。それがどう言う事か、わかるか?イラつくんだよ!俺が考えたアイディアを他人が真似る。そう言う姑息で卑怯な奴らが年収800万稼いでいるんだってよぉ!嗤えるぜ、ハハ、本当まじクソだ。そいつらは、まるで乞食だな?怖くて何も言えない奴の代わりに言う代行業をして荒稼ぎして居るらしいぜ、へへ、ほんとクソ殺したくなってくるわッ!!!ツイキャス配信している奴らのそんなブクブク太ったツラ見てると無性に苛立ってくるんサ!!!あ、怖い?わかる?こいつら俺が提示した情報から、おこぼれ貰ってるクソ鬼畜なんだよ、死んじまえ、金にたかる蠅がぁァア!!!」

「ツイキャスで金が儲かると口走ったのは、ある著名なmusicianだった。オレは、そいつのことをかっこいいと思っていた。だが、ソイツは気持ち悪い臭いがした。」


「普通の人間にそれが出来るとはとても思えない。彼は夢を売っている。そんな人間に騙されて、馬鹿な夢を見る。騙されるのは勝手だし、好きな奴を否定するつもりもサラサラなし。許せないのはそれが著名人だと言う事だ。」

「自殺を否定しない、寧ろそれを受け入れろと言う。寛容な(マジウケ、ネェよ、そんな世界)時代に其れを受け入れろと言う。"神聖かまってちゃんと"いうどこぞの馬とも知れない、ポールマッカトニーが聴いても、ボブディランが聴いても貴方誰?という様な日本人男性だった。腕には無数の切り傷があり、私はこれを見た時に、なんだこれはと思ったりしたもんだがねぇ」ヒヒと下卑た笑い声が溢れてくる。

「自殺する事を悪い事だと捉えず、致し方ない事だと片付けるのは、諦観以外の何者でもない。想像する事を諦めた人間が、買い続けるsystemに、既に飽き飽きとしている最中に、無数に才能が現れた。天才だと自分で自画自賛。やかましい奴らだ。周りもそれに疑う事なく、天才と連呼する、異常集団。ケッ反吐がでら。僕は天才だなんて、微塵も感じなかった。寧ろ、劣っていた。そして、それはこの世界に存在を認められている、ネットのsystemそのものが、僕らにではなく、俺の気に食わない奴らが考えなくなった時から既に、貴方がたは、私に遠く及ばないぐらいの格の差が出来てしまった事が既に不愉快だ。彼は別に嫌いじゃないです。最近じゃカラオケで僕の好きな大森靖子さんとコラボしていた歌を歌ったぐらいですからねェぇ?別に一向に構わないんですよね?ワラワラ。だけど、金はそう簡単には稼げないと思いますよ。アンタだって今の地位にのし上がるのに10年を費やした。だから、言っておきますが、貴方こそ気をつけた方が良いですよ。ずっと、あの定点カメラは、貴方の醜態を監視してますカラねェ」ヒヒ、と相変わらず気味の悪い笑い方をする。

「で?言いたいことはそれでもう、終わり?」

「ハ?おまえ、人の話聴いてないの?」

「アンタの話なんて皆んなとっくの昔に知ってるわよ、わからないやつねェ?アンタが監視されてんでしょうが。その、私が誰か知らないかまってちゃんに。ププッ」吹きこぼしそうになったその笑みを見た漢の顔がみるみる怒気を帯びて、紅くなるのがわかった。

その男を私は潰した。二度と文壇に上がれないだろう。文学界から永久追放される。私が認めない限り、彼は死んだも同然。

「格の違いを思い知れよ、クソ野郎」一瞥し、中指を突き立て、私は彼を部屋からでる様に指図する。

フッ、と笑って私は煙草に火をつけ、煙を啜った。久しぶりに吸う煙草は、存外に悪くなかった。
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