時透

真田

ところでさ、あんたらはどう思ってんの？今回の失踪事件．

唐突に真田はつぶやいた．その場にいた誰もが凍りついた。

オレは知らないぜ、ほんとうに

あんたの意見は聞いてない。そっちの坊や、どう？

僕は…口をつぐんだ後、真田はニヤリと笑った。

あんたには金がたくさんある。だから、色々騙されているんでしょうけどね？

それを言われて、その幼い顔立ちの青年は堪らず、吐息を漏らした。

ナニ？

…いえ、僕には本当に今回のことは見えないんです。一体、なんで僕はこんなことに巻き込まれたのか、皆目見当がつかない。

…フン、カンタンよ。あんたには厳正な処罰が降りなかった。だから、あんたはその地位に居座っている、ただの金魚の糞よ。

…！！

ナニ？文句ある？いくらでも愚痴なら聞くわよ？あるならね？

…ないです．僕にできることはありますか？

…ナイ。残念ながらナイワ。

では、貴方は一体全体ナニをしようとしているのですか？もう、罪は償ったでしょう？

わからないわ、なんのこと？

…いえ、これ以上は…

一つ教えてあげる。私が殺した男は過去に、ある高みまで上り詰めた。けれど、その時にある事件に巻き込まれたのよ。あんたとは天と地ほどの差があるね？

…深入りは避けたいです。貴方の問題です。知りません．知りたくもない。

知りたくない？ふぅん、じゃあ消えて？

エ？

女は刃渡り6センチのナイフを取り出し、その男を刺した。

私の話を聴きたくない人は必要ない。余計なことさせないでよ？裏切ったあんたが悪いんだから。

な、な、なんのコトだよ？！？ハ？ラ？全然訳わかんねーよ…

殺されたかったクセに…

ボソッとオンナは呟き、彼は死んだ。人は、カンタンに死ぬんだなと女は想う。

殺されたかったの？死にたかったの？どっち？危険な思考が交錯する。

誰が殺されるかわからない。女の覚えている数だけ、人はその場に登壇する。その女に呼ばれた人間は、誰も抵抗する術なく、消される。なんで逃げないのか、わからない。しかし、彼は今消された。

オンナは心底思った。私がしたいことはこんな、茶番なんかじゃない…。

自分が嘘なんだとオンナは心底こんな人間になりたくなかったと言った。

私には生きるしか先がない。だから、許せないのよ。


"偽物のワタシをコロシテ…"

オンナはsignalを出していた。壊れていく自分を止めるナニカを探していた。


最後の敵は、私が愛した人を見捨てた、あの漢…

彼の声は今でも消えない。

"だからさ、ね？僕の言う通りにして。本当に良いことが起きるからさ？"

口裏を合わせるのが上手い漢だった。最低な男に彼は、見捨てられそして、破滅した彼は私の腕に寄って、消した。

私が生きる為に…サヨナラ二度とワタシを見捨てないで。


次にアイツに会ったら私は間違いなく引き金を引く。

彼を助けて欲しい…今でも私に泣き叫んでいる彼は、私に悪夢を見させる。


コロシテクレヨ

そう彼は私に纏わり付き、私を引き摺り込もうとしている。


悪夢を祓いたい…

殺してくれよ？ハ？嗤わせないで…アンタは全然純朴な真面目なただのノッポだったじゃない…

なんで…

泣き崩れる私は、今を生きているのかわからない。

破滅の道を歩む彼は一人、知ったことがある。

偽善者にはならない方が良かった、って事。

唸されるように何度も何度も、頭を抱えて、震えていた。誹謗中傷され、追い詰められた彼はある日、私の手に寄って、消された。私は最低なんだ…今でも手の震えが止まらない…。


ここは、地獄だった。