黄金の王 〜俺は自由人になりたい!〜

海賊王

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第1章 努力は一瞬の苦しみ、後悔は一生の苦しみ

違和感

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 ここの世界の人間の肉体の成長速度は異様に早い。

 平均年齢1000歳で成人が100歳という意味のわからない文明。

 そのくせ、体の成長は20~30歳で最も成長し、その後は900歳ごろまで見た目が急激に老いることはほぼない。

 アレクも自分の親のデータを見たことがあったが若いギャルだと言われてもおかしくない見た目をしていた。

 そのせいか、ウェルロッド家の屋敷で仕事をしているメイドや執事、他の使用人たちはみんな20代~40代前半の見た目をしている。

 40代の見た目と言っても美魔女や美男子のような見た目だ。

 しかもこの屋敷はクロードが本気も本気で人選したためか仕事ができ、見た目も重視した人で構成されていた。

「なあ、クロード。人間多くない?」

「いえいえ。これでも少ない方ですよ。私といたしましてはもう少し増やしたいのですが」

「だめ」

 今日もアレクは熱心に自由を求めて仕事をしていた。

 まあ、仕事と言っても屋敷内の皆の仕事振りを見て回っているだけでほぼ散歩。

 アレクの横には定位置のように浮いているアイが自分の子機を使ってアレクのお茶菓子を持たせている。

「これうまいな!」

 アレクはお茶菓子で出されあるカステラを食べる。

「そちらはウェルロッド領内にあるカステラ屋から取り寄せたものになっております」

 クロードが笑顔で説明してくる。

 アレクはそれをお変わりして屋敷の縁側に座った。

「ここの庭も以前とは見違えるような庭になったよな」

 庭は日本庭園のようになっていて、落ち着いた雰囲気を出していた。

「この庭はウェルロッド領におられるスミスという者が手がけた庭になっておりまして、コンセプトは『大宴会』だそうです」

「この庭が大宴会か・・・全然雰囲気と合ってねェ。コンセプトだけ変えておけば?」

「そうですね。かしこまりました」

 アレクは満足していた。

 なんていい日常なのだろうか。

 これが贅沢、これが豪遊だ。

 アレクは1人で満足していたのだが、クロードの一言で自分がまだまだだと思い知った。

「アレク様は大変質素な生活を送っておられて、私、大変素晴らしいことだと思います」

 アレクのお茶を飲む動作が止まる。

「・・・え、俺贅沢してない?」

「はい。私もアイも少し驚いております。もう少し贅沢していただいてもいいと思われますが、アレク様が民の生活を思い質素になされていられるので、本当にすごいと思います」

 クロードがそれはそれは目を輝かせて話してくる。

 ーーいやいやいや、まじか・・・全然これ贅沢じゃないんだ。

「お、おう。まじか」

 アレクは少し落ち込んだ。

「というか、これ以上の贅沢ってなんだ?」

 その疑問にはアイが答えてくれる。

『旦那様。こちらは歴代の領主様の贅沢にございます。まず、惑星を一つプライベート惑星にします』

「なにそれ聞いたことない!?」

『はい。それをゴルフ場にしたり、ビーチにしたりします』

「惑星一つの中にいろんなことができるようにするのか」

『いえ、ゴルフ場を惑星一つ丸々使用したものになります』

「・・・意味がわからない!? それになんの意味があるんだ?」

 アレクが驚いていると、クロードが優しい目で言った。

「アレク様は贅沢が向いていないかもしれません」

「どういうことだ?」

「まず、普通は贅沢に意味など求めません。アレク様は意味を求めますので贅沢をするのに向いていないかと」

 アレクは唖然とした。

 ーー意味がないことが贅沢だと!?

 それになんの意味が!?

 領地の発展の方がよほどいいだろ。

 てか、そっちの方が大事なことだろ!?

「訳がわからない」

「私は意味を求めるのは大変素晴らしいことかと思います」

 クロードはアレクを慰めるように頭を撫でてくる。

 アイも同様にアレクの横で慰めてくる。

『旦那様、無理に贅沢しようとしなくてもいいのです。おかげさまで、領内の発展は目まぐるしい速度で発展しております。30年かかると言った私の言葉を忘れてください。20年で30年の発展をしてくれるでしょう』

「・・・まあ、そうだな。そう、発展のために俺は質素にしていたのだ。お前らも次からは俺ももっと贅沢するからな!」

「ははは、覚悟しておきます」

『はい』

 クロードは笑顔で、アイは特に感情がないように言った。

 ーー昔の俺なら考えられないような充実ぶりなんだけどな。

 アレクはまだ悩んでいた。
 
 贅沢といえば、俺の分家の5人が贅沢三昧していたような気がする。

 俺を差し置いて贅沢とは許せんことだ。

「そういえば俺の従兄弟?たちはどうしてるんだ」

『はい。第1区を納めているハラルド様の元に4名が集まっており、戦争を始めるための物資を集積している状態です』

「私といたしましては、早めに反乱の芽は紡いでおくべきかと思いますが」

「はぁ、クロードも諦めないな。俺は完璧な状態のあいつらを徹底的に潰すと決めたのーーそれに、今動いてもこの星を本当の意味で俺のものにするのはできない」

 アレクはお茶をひと啜りする。

 現在、ウェルロッド領の発展はまだ首都とその周辺、そして主要都市のみの発展となっている。

 まだまだ、アレクの政策が広がりきっていないのだ。

 それでは、完全にこの惑星の民全てがアレクの敵に回らない保証がない。

 ーー俺は不安要素は全て取り払った状態でしか戦わんからな。

「本当にそうでしょうか。私は、全ての民はアレク様に忠誠をちかっていると思うのですが」

「そんな訳ないだろ。俺は人の心なんて信じない。信じれるのは数字と俺の目で見た情報のみだ」

 それを聞いてクロードはアレクのことをかわいそうな子だと思った。

 ーーまだ、幼いというのに、もう人を信じないとおっしゃる。なんと悲しいことだろう。私だけでもアレク様の味方をして上げなければ。

 クロードは心の中で誓った。

「さて、俺も徐々に準備するとするか」

 アレクはそう言って執務室に向かった。





 その部屋で5人は円卓を前に会議をしていた。

「思ったよりもアレクのやつがやるようだ」

「そうね、年々、我々の収益が減っている。これは遺憾し難い問題だ」

「第3と第4兵器工場から兵器を買い集めているが、そろそろこちらの資金が底をつく」

 皆さそれぞれに難しい顔をして考え込んでいる。

 ここ最近、この本星全体にアレクの30年政策の影響が出始めていた。

 おかげで民は潤おうようになったが潤った資金は国の新たな開発政策に使用され、これまで仮にその地域を統治してきたウェルロッド家の分家の元に資金が来なくなっていたのだ。

 このことに加えて、内乱によりアレクを領主の立場を失脚しようと企んで武器を大量に発注したことにより資金難に陥っていた。

「そろそろ攻めんと、我々が潰されてしまいまっせ」

「少し兵力は心もとないが、まあ、これだけでも本家よりは兵力がある」
 
 そう言って、アレクの屋敷を攻め落とすのかの作戦会議を始まった。

 アレクの屋敷は大きな堀が屋敷を囲むように掘られており、屋敷内に入れるのは東西南北の門からだけだ。

 しかし、これにはあまり意味はない。

 この世界の戦争は基本的に宇宙戦艦や機動騎士による戦闘か、大気圏内であれば空中戦艦と機動騎士がメインとなる。

 そして戦車や戦闘兵士を使えば浸透攻撃により敵を殲滅することもできる。

 これらのことから空からも地上からも攻撃できるということだ。

 5人はアレクのことを完全に舐めきっている。

 そのためか、作戦も適当なものだった。

「ぶっちゃけ真正面から攻撃するのが最も効果的な作戦では思います」

「それは私も思おうわ。本家に正面からこれだけの兵力を受け止められるだけの力があるとは思えない」

「では、制空権をとってから地上侵攻を始めるという感じでいいでしょうか」

「俺はいいと思う。でも、どの方角から攻める?」

 円卓の上に地図を広げて、ある場所をさす。

「屋敷の南側は平原から最も近い距離にある。縦深が短いことと、平原が目一杯使えることから戦闘にも我々の有利に運べる。ここから攻めるのがいいと提案する」

 他の4名はうんうんと頷いている。

 こうして、作戦会議は踊るように順調に進んだ。





「もう屋敷とかじゃなくて、城だな」

 アレクは改築していた自分の屋敷を見上げていた。

 アイが横でこの屋敷の全体像をホログラムで映し出していた。

『今回、旦那様のご趣味と思われるものから私が計算し設計した結果、このような城になりました』

「うん。もう城って言っちゃったね」

 それは横にも、縦にも奥行きにも大きな建物になっていた。

 真っ白な煉瓦壁に黒の瓦。

 所々金色の装飾が施されて、目立つし派手だが、嫌な派手さではない。

 まさに城そのものとなっていた。

『こちらの城には私が計算に計算し尽くした大敵迎撃兵器も完璧に備えております。これで、この領地は安泰です』

「おお、そうか」

 アレクは少し引いていた。

 流石に投げやりにしすぎたかなと思ってしまう。

 でも、本当にこの城はいい城だと思った。

「まあ、これはいいとしてだーー領内発展状況はどうだ?」

『そちらにつきましては大変順調です。領地の約9割はもう以前の状態ではございません。各家庭の生活は向上し、皆日々飢えることは亡くなったそうです。また、インフラ等の整備により街全体の様子もガラリと変わりました』

 アレクはうんうんと頷いている。

 それもそうだ。

 ここに転生した当時はとても生きていけるような状況ではなかったのだから。

『滞納していた税金も現在、徐々に納めております。宰相も我々を見る目がお変わりになり、現当主は鳶が鷹を産んだかと申したそうです』

「なんだそりゃ。俺は鷹か」

『他にも』

「もういい。俺はもう満足だから」

 アレクはアイを止める。

 正直、ここまでうまくいくとは思ってなかった。

 アレクは日々、鍛錬と就業に勤しんで、仕事のほとんどはアイやクロードに押し付けているのだ。

 これなら、俺いらないんじゃないかと思ってしまう。

 まあ、いらないならいらないでとてもいい傾向である。

 このまま、民たちには賢くなってもらって俺の代わりをしてもらった方がいいのではと思えてくる。

「ーーいや、賢くなってもらおう」

『旦那様。どうかなさいましたか?』

「領民たちに学校に通わせよう」

『現在も3年の義務教育をさせておりますが』

 アレクは腕を組んだまま首を横に振った。

「3年じゃ足りない。6年は通うようにしよう」

『それではそのようにいたします』

 アレクは考えていた。

 自由になるためには俺がいなくてもしっかりとやっていける民ではないといけない。

 なら、しっかりと学力をつけて賢くなってもらわないといけない。

 これがうまくいけば、夢にまた一歩近づくということだろう。

『軍の縮小と再教育の報告書が上がっております』 

 アイがアレクの前に報告書を写した。

 アレクはそれを見た。

「ほう。うまくいっているのか」

『はい。以前とは比べ物にならないほどの練度に仕上がっており、現在、軍拡に転じている状況です』

「人員の補充はどうなっている」

『募集をかけた所。少々、高齢者ではありますが、皆練度の高いものばかりが集まっております』

「それは、また意外だなーーなぜだ」

 アイが他の資料を映し出す。

『この資料からすると、他の領地で肩身の狭い思いをしてきた者たちばかりです。皆、規律をしっかりと守る性格をしているためか、他の人に邪魔者扱いをされてきたようです。我々は現在軍備強化の時ですのでとても有用な人材かと思います』

「そんなことで移ってきたのか。まあ、ありがたいが、他の領地の軍はアホなのか」

 アレクはそのまま資料を一通り見て一息つく。

「まあ、今日はこんなものか」

『はい。お疲れ様でございました旦那様』

「軍拡はしっかり確かなものにしてくれ。だが、できるだけ早く進めておいてくれ」

『かしこまりました』

 そうして、着実にウェルロッド家は良い方向に向かっていた。

 

  
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