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森の誘惑
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昼も過ぎ、森はシトシト雨が降っていた。これくらいならそんなに苦でもない。木々が雨を遮ってくれる。
エルヒムは沢の近くに来るとポンチョを脱いだ。リュックを下ろし、広げると三フット四方のポンチョを木の杭で片面に打ち付け、蔓で片方を持ち上げ木にくくる。ポンチョを斜めに張った簡単な雨よけだった。その下にラグを敷き寝床は完成。下は枯葉で敷き詰められフカフカしているのでラグで十分だった。
持ってきた道具は全て盗賊から奪ったものだ。エルフはこんな人間の真似事はしない。
何故僕がこんな事するのかと言うと、人間の血が混じってるからに他ならない。やはりルーツという物は忘れようとすればする程、欲求となって出てくる。
人間の道具が使いたいのだ。人間の道具を使って生活してみたい。だから僕は村から離れた森に入って野営をしている。魔法道具の練習は口実に他ならない。
もちろん練習もしている。ただそれがメインでは無いって事。
今日手に入れたハンゴウというものを試してみたかった。
沢の水でゴメを洗う。ゴメと同じ分量だけ水をハンゴウに入れ少し時間を置く。その間に火をおこす。マグネシウムの塊出できた棒を金属で擦ると火花が散る。その火花で燃えやすいものに引火させ徐々に火を育てる。
ハンゴウを火にかけ、スヌーの肉を切った。5センチ角の塊を三つ切り出し枝に刺した。味付けはシンプルに塩コショウだ。枝を地面に刺し遠火でじっくり火を通す。
ハンゴウが吹きこぼれたので上に重石を乗せた。
吹きこぼれも無くなり香ばしい香りがしたら出来上がり。
ハンゴウを火からおろし少し蒸らす。
人間の書物も読み漁っていたからやり方は分かる。
ハンゴウの蓋を開けると甘い香りが辺りに漂った。ツヤツヤしたゴメが食欲をそそる。
肉もそろそろ焼けただろう。肉をナイフで少し削いで口に運ぶ。ジューシーな肉汁が口の中に広がる。そして甘い脂身がその舌を喜ばす。その勢いでゴメをかき込んだ。
「美味い」思わず声が漏れた。
そうなると無くなるのは早い。
あっという間にたいらげ、脂でテラテラになった指を舐め一息ついた。
このハンゴウという物はなかなか便利だ。ステンレスが一気に熱を伝え炊き上げる。
水を入れたケトルを火にかけた。
袋からヒーコーの炒った豆を取り出し、布にくるんで石で潰す。潰した粉をお湯の沸いたケトルに入れ煮出だした。ケトルの口から粉が出ないように杉の葉を突っ込みコップに注ぐ。脳を刺激する香り。黒く苦い芳醇な液体は口の中の脂を流した。
この一杯の為に食事をしているのではないかと錯覚する程、上質な時間を与えてくれる。
食事も終わり、シェルターの中に入る。
魔法化学の本を読んでいるうちに日が暮れた。本がパンッと、小気味良い音を立てて閉じられ石の上に置かれた。
エルヒムはラグの上に仰向けになる。
雨も上がったようで星が見えた。
星の瞬きが眠気を誘うのかいつの間にか寝ていた。
エルヒムは沢の近くに来るとポンチョを脱いだ。リュックを下ろし、広げると三フット四方のポンチョを木の杭で片面に打ち付け、蔓で片方を持ち上げ木にくくる。ポンチョを斜めに張った簡単な雨よけだった。その下にラグを敷き寝床は完成。下は枯葉で敷き詰められフカフカしているのでラグで十分だった。
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何故僕がこんな事するのかと言うと、人間の血が混じってるからに他ならない。やはりルーツという物は忘れようとすればする程、欲求となって出てくる。
人間の道具が使いたいのだ。人間の道具を使って生活してみたい。だから僕は村から離れた森に入って野営をしている。魔法道具の練習は口実に他ならない。
もちろん練習もしている。ただそれがメインでは無いって事。
今日手に入れたハンゴウというものを試してみたかった。
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ハンゴウを火にかけ、スヌーの肉を切った。5センチ角の塊を三つ切り出し枝に刺した。味付けはシンプルに塩コショウだ。枝を地面に刺し遠火でじっくり火を通す。
ハンゴウが吹きこぼれたので上に重石を乗せた。
吹きこぼれも無くなり香ばしい香りがしたら出来上がり。
ハンゴウを火からおろし少し蒸らす。
人間の書物も読み漁っていたからやり方は分かる。
ハンゴウの蓋を開けると甘い香りが辺りに漂った。ツヤツヤしたゴメが食欲をそそる。
肉もそろそろ焼けただろう。肉をナイフで少し削いで口に運ぶ。ジューシーな肉汁が口の中に広がる。そして甘い脂身がその舌を喜ばす。その勢いでゴメをかき込んだ。
「美味い」思わず声が漏れた。
そうなると無くなるのは早い。
あっという間にたいらげ、脂でテラテラになった指を舐め一息ついた。
このハンゴウという物はなかなか便利だ。ステンレスが一気に熱を伝え炊き上げる。
水を入れたケトルを火にかけた。
袋からヒーコーの炒った豆を取り出し、布にくるんで石で潰す。潰した粉をお湯の沸いたケトルに入れ煮出だした。ケトルの口から粉が出ないように杉の葉を突っ込みコップに注ぐ。脳を刺激する香り。黒く苦い芳醇な液体は口の中の脂を流した。
この一杯の為に食事をしているのではないかと錯覚する程、上質な時間を与えてくれる。
食事も終わり、シェルターの中に入る。
魔法化学の本を読んでいるうちに日が暮れた。本がパンッと、小気味良い音を立てて閉じられ石の上に置かれた。
エルヒムはラグの上に仰向けになる。
雨も上がったようで星が見えた。
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