10 / 22
友とは
しおりを挟む
ダッタン国の入口に着くと何やら騒がしい。街の人の話し声からするとエルフが城に乗り込んだようだった。
ほんとに正面突破してるのか。
城門に駆けつけると人だかりができていた。人だかりを押し退け前の方に出ると三人が門番と押し問答していた。
「サランを返せ!」
サラン、確かあまり喋ったことはないが隣のクラスにいた子か。
「ここを通す訳にはいかない」
「サランは私の親友。返さぬのならば力づくで通してもらおうか」
ファノが身をかがめた瞬間消え、気がつくと門番の後ろに砂埃を巻き上げ止まった。キンッと剣が鞘に収まると門番の鎧がバラバラと落ちた。唖然とした門番を横目に三人は城に入っていった。
その鮮やかさに見とれていたエルヒムは我に返る。
追いかけなきゃ。
「ファノ待って!」
「何故あなたが来るの?」ファノは眉をひそめる。
「何故って…自分でも分からないんだけど…」
「あなたには関係の無い事。そのまま大会に出ればよかったじゃない。多分優勝できたわよ」
「できたかもしれない…でもファノやマビルやピッツオのいない大会で優勝して意味があるのかなって」
ファノはエルヒムをじっと見つめ、後ろを向いた。
「ファノだって連続優勝を途切れさせていいのか?」
ファノは振り向きざま。「友も救えず何が優勝だ!私は私のために戦っているのではない!応援してくれる者、期待してくれている者の為に戦うのだ!その友が苦しんでいる。それでも大会に出ろと言うのなら死んだ方がましだ!」
ファノは奥へ進んだ。
圧倒されたエルヒムにマビルが近付く。
「あの子の傷。何かわかる?」
「え?戦って付いた…」
「違うの。あれは自分の修行で付いた傷。対戦して傷を負ったことなんて無いのよ。誰もあの子に傷なんて付けれなかった」
「そんな壮絶な修行を…」
「あの子はすぐ自分を追い込むの。きっと誰かの声に答えられない方が苦痛なんでしょうね。捕らえられてるサランや私たちの」
「マビルとピッツオはいいの?大会」
ピッツオが鼻を鳴らす。
「そりゃ初めはライバルだったさ。でも戦いを重ねる毎に心が通った。ただのライバルでは説明できない何かが生まれたのさ。だからここにいる。それだけだ」
マビルも隣でうなづく。
「そうね、ただこの子は思ったらその通りに行動するから危なかっかしくてね」と微笑む。
先の方で剣を交える音が聞こえた。
「そら、マビル行くよ!」とピッツオはすわと踊り出る。
駆けつけるとハヤノと戦っていた将がファノと鍔迫り合いをしていた。「させないよ!」ピッツオは間に切り込む。二人が離れたのを見計らいマビルが切り込む。
ナツァーキは間一髪のところで避けた。後ろに一飛び。「いい動きだ。見たところ、ファノ、マビル、ピッツオか。私はダッタン国のナツァーキ。大人しく投降しろ」
ピッツオが鼻で笑う。
「投降しろと言われて、はい分かりましたなんてバカどこにいるんだよ」
ファノは怒りを顕にしている。
「サランを返せ!」
「ふん、返せと言われて、はい分かりましたなんて言うバカがどこにいる。あれは取引として必要なのだ、返すわけにはいかない。ところで…後ろのやつ…」
ナツァーキはエルヒムを見据える。
「お前の知り合いか?」とピッツオが耳打ちする。
「いや、この前一回見ただけだ。あいつが村を襲った」
ナツァーキは少し考え「よし」と剣を収めた。
「中へ入れ」
ファノは面を食らう。「ちょっと!どういうこと?」
「いいから来い」
有無を言わさぬ言葉で進んだ。
ほんとに正面突破してるのか。
城門に駆けつけると人だかりができていた。人だかりを押し退け前の方に出ると三人が門番と押し問答していた。
「サランを返せ!」
サラン、確かあまり喋ったことはないが隣のクラスにいた子か。
「ここを通す訳にはいかない」
「サランは私の親友。返さぬのならば力づくで通してもらおうか」
ファノが身をかがめた瞬間消え、気がつくと門番の後ろに砂埃を巻き上げ止まった。キンッと剣が鞘に収まると門番の鎧がバラバラと落ちた。唖然とした門番を横目に三人は城に入っていった。
その鮮やかさに見とれていたエルヒムは我に返る。
追いかけなきゃ。
「ファノ待って!」
「何故あなたが来るの?」ファノは眉をひそめる。
「何故って…自分でも分からないんだけど…」
「あなたには関係の無い事。そのまま大会に出ればよかったじゃない。多分優勝できたわよ」
「できたかもしれない…でもファノやマビルやピッツオのいない大会で優勝して意味があるのかなって」
ファノはエルヒムをじっと見つめ、後ろを向いた。
「ファノだって連続優勝を途切れさせていいのか?」
ファノは振り向きざま。「友も救えず何が優勝だ!私は私のために戦っているのではない!応援してくれる者、期待してくれている者の為に戦うのだ!その友が苦しんでいる。それでも大会に出ろと言うのなら死んだ方がましだ!」
ファノは奥へ進んだ。
圧倒されたエルヒムにマビルが近付く。
「あの子の傷。何かわかる?」
「え?戦って付いた…」
「違うの。あれは自分の修行で付いた傷。対戦して傷を負ったことなんて無いのよ。誰もあの子に傷なんて付けれなかった」
「そんな壮絶な修行を…」
「あの子はすぐ自分を追い込むの。きっと誰かの声に答えられない方が苦痛なんでしょうね。捕らえられてるサランや私たちの」
「マビルとピッツオはいいの?大会」
ピッツオが鼻を鳴らす。
「そりゃ初めはライバルだったさ。でも戦いを重ねる毎に心が通った。ただのライバルでは説明できない何かが生まれたのさ。だからここにいる。それだけだ」
マビルも隣でうなづく。
「そうね、ただこの子は思ったらその通りに行動するから危なかっかしくてね」と微笑む。
先の方で剣を交える音が聞こえた。
「そら、マビル行くよ!」とピッツオはすわと踊り出る。
駆けつけるとハヤノと戦っていた将がファノと鍔迫り合いをしていた。「させないよ!」ピッツオは間に切り込む。二人が離れたのを見計らいマビルが切り込む。
ナツァーキは間一髪のところで避けた。後ろに一飛び。「いい動きだ。見たところ、ファノ、マビル、ピッツオか。私はダッタン国のナツァーキ。大人しく投降しろ」
ピッツオが鼻で笑う。
「投降しろと言われて、はい分かりましたなんてバカどこにいるんだよ」
ファノは怒りを顕にしている。
「サランを返せ!」
「ふん、返せと言われて、はい分かりましたなんて言うバカがどこにいる。あれは取引として必要なのだ、返すわけにはいかない。ところで…後ろのやつ…」
ナツァーキはエルヒムを見据える。
「お前の知り合いか?」とピッツオが耳打ちする。
「いや、この前一回見ただけだ。あいつが村を襲った」
ナツァーキは少し考え「よし」と剣を収めた。
「中へ入れ」
ファノは面を食らう。「ちょっと!どういうこと?」
「いいから来い」
有無を言わさぬ言葉で進んだ。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる