anything ~elf’s life~

むひ

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誰が悪いのか

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 「ゲンゲン様連れてまいりました」
ガタイのいい長身の如何にも偉い人という身なりの男広間の中央に座っていた。
「うむ、これが例の」
「はい」
ファノはもう我慢ができないようだった。
「どういう事か説明してちょうだい」
ゲンゲンは立ち上がる。
「その後ろにいる者」エルヒムを指さす。「その者と引き換えにエルフを返そう」
エルヒムは訳が分からなかった。
「俺?なんで俺なんだ?」
「お前は…おっと、余計な話だったな」
「よくわかんねーけどさ」ピッツオはエルヒムの前に出る。「すんなりと差し出すと思うか?」
エルヒムは少し考えピッツオを退ける。
「俺でいいなら交換に応じよう」
「本気で言ってんのか?」ピッツオが肩を掴む。
「本気だよ。ファノやマビル、ピッツオがここまでして取り返しに来たんだ。ましてや俺なんてここ数日の仲だろ。だったら俺が行けば丸く収まる」
ピッツオに掴まれた手を払い前に出た。

「待て」

ファノだった。
「確かにエルヒムはここ数日の仲だ。でも大会を放り出してまで関係の無い私たちに付き合ってくれた。エルヒムはもう仲間だ。月日なんて関係ない。エルヒムは」

息を吸う。

「仲間だぁ!仲間を売るくらいなら私は死んだ方がましだ!」剣を抜くと同時、ナツァーキは瞬足でファノの柄に手をかけた。
「出あえ!衛兵!」
合図と同時に衛兵が扉からなだれ込んできた。
「うひょー腕が鳴るぅ」ピッツオは指を鳴らすとマビルがたしなめた。
「もう、ピッツオは!遊びじゃないのよ!」
「分かってますって」
ピッツオ、マビル、ファノは衛兵を器用に躱しかわしながら切り付ける。エルヒムも体術は得意だ。あれよあれよという間に衛兵を片付ける。
衛兵が弱く、油断もあった。エルヒムの首筋に衝撃が走り意識が途絶えた。
「エルヒム!」
ファノが追いかけるがそのままエルヒムは衛兵に連れ去られてしまった。
ナツァーキは「やれやれ」と手首をさすった。「油断をするからこうなる。エルフは詰めが甘いんだよ。さっさと他も片付けろ」
多勢に無勢、数で押される。
三人とも息が切れてきた。強いとはいえこの数と戦えばそうなるだろう。
「ぐうううう!」ファノはエルヒムが連れ去られた扉の方に食らいつく。
マビルは危なさを感じた。もうファノは何も見えていない。
「ファノ!引くよ!」
「嫌だ!エルヒムとサランを取り返す!」
「今は無理よ!一旦引いて立て直すのがいいわ」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」ファノは衛兵の体当たりで倒れた。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!我に宿り…」
マビルはピッツオに目で合図。ピッツオはファノを抱え窓を破り飛び出した。

 深い森の中にすすり泣く声が響く。ファノだった。
「私が剣を抜いたばかりにエルヒムまで…うっ」
「まだ死んだわけじゃない。もう一度救出すればいいよ」マビルは涙を拭いてやるが次々に涙は溢れる。
「私のせいだ…私が…私はサランも救えなかったばかりか…行かなきゃ…助けに行かなきゃ」
はやるファノをピッツオが止める「ファノのせいじゃない!俺のせいだ!」
「ピッツオ?なんでピッツオのせいなのよ」ファノが泣き止む。
「俺がエルヒムを援護すべきだった。見たところ技にキレがあるが場数は踏んでないと前々から思っていたんだ。だから俺が悪い」
「いや、私が悪かった!」マビルは立ち上がる。
「マビル!?」二人が驚く。
「城の中は相手のテリトリー。敵陣で戦うのは良くなかった。そもそも中に入るべきではなかった。そう思ってたんだけど言い出せなかった。だから私が悪い!」
ファノは首を振る。
「マビルもピッツオも悪くないの!私が…」
「皆悪いの!!」ピッツオとマビル。
「だから三人で考えよ」マビルはファノの手を握ると上からピッツオが重ねた。
ファノは頷く。
「ありがとう。ピッツオ。マビル」
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