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鏡よ鏡、鏡さん
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「あなたは誰?」
「私はファノよ」
「そんなはずはないよ、私がファノだから」
「そう、だから嫌いなの。私はあんたが大っ嫌いなの。このまま早く死になさい」
「ちょっと何言ってるの、そんなの嫌だよ」
「ずっと私はあんたを呪ってきた、早く死ねって。その度にあんたは自分を傷付け私を追い払う」
「私が何したって言うのよ!」
「私がいるのに…私がいるのにあんたは無視した!見ようともしなかった!私を押し込めて外に出さないようにした!それが憎い!」
「あなたは…なに?一体何なのよ」
「言ってるでしょ!私はあんた!もう忘れてるでしょうね。相当昔の事だから…私はあんたの感情そのもの。隠してきた感情。怒り、憎しみ、悲しみ…あんたは私を捨てた」
「………確かに…忘れてるのかもしれない。ずっと私の中に何かがいるような気がしてた。でもそれが何か分からなかった。ただ…怖かった。その怖さと戦うために自分を痛めつけるような修行をした。……それが貴女だったのね。ようやく会えたのね」ファノの瞳から涙が流れ落ちる。
「辛かったね…ごめんね…苦しかったよね…ごめんね…」
「……………」
「そっちに行ってもいい?」
「……………」
「私は………過去を受け入れる……」
ファノはファノの手を握った。
光が満ちた。
───────☆───────
ドクン…ドクン…
「い…生きてる…」ピッツオがゆっくりと目を開けると、ぼんやりとした視界の中で皆が光に包まれているのが見えた。そして祈りを捧げている…天使が…
気力が戻ってくる。暖かい…
エルヒムはゆっくりと立ち上がった。
「ハヤノ。ありがとう。お前の婆ちゃんの言ってることが正しかったって証明するよ」
目を覚まし、ぼーっとしているハヤノに微笑みを投げた。
「エルヒム…?」
エルヒムの胸に光が灯る。
剣を拾い振り向きざまムヒコーウェル目掛けて走る。
「いでよ!我の名の元に姿を現せムヒコーウェル!」
「ふん、無駄だと言っておろうが!」
エルヒムはムヒコーウェルの右肩を切り落とした。
「グギャアアアアアアアアア!何故だ!何故あたしが切れる!」
ブンッと血の着いた剣を払う。
「僕の魔法は具現化魔法。言うことが全て本当になる。現実化する魔法だ」
マビルは驚いた。「そんな魔法聞いた事ないわ!」
マビルは魔法においては全て精通しているつもりだったがそのマビルすら知らない魔法であった。
ムヒコーウェルは鼻息が荒くなる。何故か興奮していた。
「そんな力があるなんて…欲しい…ますます欲しくなったわ!手に入れればあたしは完全!いや、それ以上!!ハァン///」
「終わりにしよう。ムヒコーウェル」エルヒムは構える。
ムヒコーウェルも構える。「片手があれば十分よ。鶴丸乱舞うううううう!」
エルヒムは手を前にかざす。
「何物も通さぬ盾よ、我の名の元に現れ守り給え」
ブンッとエルヒムの手から弧を描いて盾が現れ刃の嵐を防いだ。
「あたしの刃が…負けてる…」
「この世に絶対は無いが…お前は絶対許さない!」
刃の嵐の中、さらにエルヒムは歩みを詰める。「だがな、お前を殺るのは俺じゃないんだ」
チラッと後ろを見る。
「行け!ファノ!」
ファノは立っていた。
ゆらゆらと体に炎を纏いながら。
怒り、悲しみ、憎しみ、全ての感情を燃やし。
「我に宿りし宿命の炎…私は教わった通りに詠唱していただけ…でも、今その意味が分かった。私は…全てを受け入れ過去を燃やす。私は………」
「前を向く!」
ファノはムヒコーウェルに向かって飛んだ。速度を上げる度に剣に纏う炎も大きくなった。
ファノはエルヒムの盾をするりと抜けムヒコーウェルの目の前。
エルヒムは叫ぶ。
「断ち切れ!」
「うぉぉおおおおおお!」
ファノの剣は炎の柱と化した。
「紅蓮撃!!」
暖かい炎が辺りに散った。
それはまるで、真っ赤な華の様に。
.
「私はファノよ」
「そんなはずはないよ、私がファノだから」
「そう、だから嫌いなの。私はあんたが大っ嫌いなの。このまま早く死になさい」
「ちょっと何言ってるの、そんなの嫌だよ」
「ずっと私はあんたを呪ってきた、早く死ねって。その度にあんたは自分を傷付け私を追い払う」
「私が何したって言うのよ!」
「私がいるのに…私がいるのにあんたは無視した!見ようともしなかった!私を押し込めて外に出さないようにした!それが憎い!」
「あなたは…なに?一体何なのよ」
「言ってるでしょ!私はあんた!もう忘れてるでしょうね。相当昔の事だから…私はあんたの感情そのもの。隠してきた感情。怒り、憎しみ、悲しみ…あんたは私を捨てた」
「………確かに…忘れてるのかもしれない。ずっと私の中に何かがいるような気がしてた。でもそれが何か分からなかった。ただ…怖かった。その怖さと戦うために自分を痛めつけるような修行をした。……それが貴女だったのね。ようやく会えたのね」ファノの瞳から涙が流れ落ちる。
「辛かったね…ごめんね…苦しかったよね…ごめんね…」
「……………」
「そっちに行ってもいい?」
「……………」
「私は………過去を受け入れる……」
ファノはファノの手を握った。
光が満ちた。
───────☆───────
ドクン…ドクン…
「い…生きてる…」ピッツオがゆっくりと目を開けると、ぼんやりとした視界の中で皆が光に包まれているのが見えた。そして祈りを捧げている…天使が…
気力が戻ってくる。暖かい…
エルヒムはゆっくりと立ち上がった。
「ハヤノ。ありがとう。お前の婆ちゃんの言ってることが正しかったって証明するよ」
目を覚まし、ぼーっとしているハヤノに微笑みを投げた。
「エルヒム…?」
エルヒムの胸に光が灯る。
剣を拾い振り向きざまムヒコーウェル目掛けて走る。
「いでよ!我の名の元に姿を現せムヒコーウェル!」
「ふん、無駄だと言っておろうが!」
エルヒムはムヒコーウェルの右肩を切り落とした。
「グギャアアアアアアアアア!何故だ!何故あたしが切れる!」
ブンッと血の着いた剣を払う。
「僕の魔法は具現化魔法。言うことが全て本当になる。現実化する魔法だ」
マビルは驚いた。「そんな魔法聞いた事ないわ!」
マビルは魔法においては全て精通しているつもりだったがそのマビルすら知らない魔法であった。
ムヒコーウェルは鼻息が荒くなる。何故か興奮していた。
「そんな力があるなんて…欲しい…ますます欲しくなったわ!手に入れればあたしは完全!いや、それ以上!!ハァン///」
「終わりにしよう。ムヒコーウェル」エルヒムは構える。
ムヒコーウェルも構える。「片手があれば十分よ。鶴丸乱舞うううううう!」
エルヒムは手を前にかざす。
「何物も通さぬ盾よ、我の名の元に現れ守り給え」
ブンッとエルヒムの手から弧を描いて盾が現れ刃の嵐を防いだ。
「あたしの刃が…負けてる…」
「この世に絶対は無いが…お前は絶対許さない!」
刃の嵐の中、さらにエルヒムは歩みを詰める。「だがな、お前を殺るのは俺じゃないんだ」
チラッと後ろを見る。
「行け!ファノ!」
ファノは立っていた。
ゆらゆらと体に炎を纏いながら。
怒り、悲しみ、憎しみ、全ての感情を燃やし。
「我に宿りし宿命の炎…私は教わった通りに詠唱していただけ…でも、今その意味が分かった。私は…全てを受け入れ過去を燃やす。私は………」
「前を向く!」
ファノはムヒコーウェルに向かって飛んだ。速度を上げる度に剣に纏う炎も大きくなった。
ファノはエルヒムの盾をするりと抜けムヒコーウェルの目の前。
エルヒムは叫ぶ。
「断ち切れ!」
「うぉぉおおおおおお!」
ファノの剣は炎の柱と化した。
「紅蓮撃!!」
暖かい炎が辺りに散った。
それはまるで、真っ赤な華の様に。
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