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むひ

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翼をください

18話 ピューピュー

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 祠へ向かう途中「ピューピュー」と小さく音がする。どうやらジースーが発しているらしい。エニスは気になり聞いてみた。
「ジースー、何やってるの?」
「え?あ、これはいつ敵に襲われてもいいようにシュミレーションしてるんだ。ほら、あそこの窓から敵が出たとして、この角度、この発射スピードなら当たるってね。射撃は感覚が落ちたらダメになるんだ。でもエニス、なんでわかったの?」
「なんでって、ピューピュー言ってたよ」
「えーほんとに!?気づかなかったー」
ポッツは呆れて言う。
「ジースーはいつも言ってんで。わしら慣れたからなんにも言わんけど」
ジースー顔を赤らめる。
「そうなの!?言ってよ!恥ずかしいじゃん!」
ジースーの目が変わった。
「そこ!」
銃声と共に木の上から大きなコウモリが落ちてきた。
「今敵意を感じた」
エニスが呆気に取られる。
「伊達にイメトレしてるわけじゃなかったんだね。流石だよ」
チュラーは「行くぞ」言うと。
「だいたいジースーが先に殺ってしまうから俺らの出番がないんだよな」
ポッツも頷く。
「ほんまやで、このままだと視聴者さんが納得してくれへん!ジースー!次は手を出すなよ!」
「わ、分かったよーでも条件反射なんだよー」
チュラーは立ち止まる。
「ここが入口だ。みんな、心してかかれ」
一同は頷き中に入った。
祠の中はひんやりしていて背筋が凍りそうだった。
チュラーが人が倒れてるのを見つけた。
「チピ!」まだ息はあった。
同時に「ゔぅぅぅ」という唸り声と共にロッロが飛び出す。
「危ない!」
ポッツが剣で牙を止めた。
「ジースー!撃たんかい!気づいとったやろ!」
「うん、だけど手を出すなって…」
「場合を考えや!」
ポッツはロッロを払い除け間髪置かず切り込む。ロッロはひらりと交わし横から爪で襲いかかった。
「チュラー!はよ詠唱してや!」
「今やってる!話しかけるな気が散る!チピ!今助けるからな!」
ナツァーキとセイクも「助太刀する」とロッロの爪を弾いた。エニスはロッロの後ろに回り込み切りかかる。ナツァーキとセイクのガードが崩れエニスの剣は宙を切った。
「みんな離れろ!」詠唱を終えたチュラーがロッロに照準を合わせる。
「火の精霊よ我に力を!焼き尽くせ!」
火の玉がロッロ目掛け飛んでいく。ロッロに当たる寸前で火の玉が曲がり壁に激突した。
「危ないところだったな、ロッロ」
いつの間にかイールビが現れた。
「貴様ー!」とポッツがいきり立つ。
「なんでこんなことするんや!人の声奪っておいて何する気や!」
「声がなんだ!だからどうした!命まで奪ってはおらん!私の気持ちが分かるか?妻を殺され国は犯人を探しもしない。だから私はムヒコーウェル様に魂を売った。自分の力で犯人を探し出し制裁を与える。ムヒコーウェル様を復活させるために声が必要なのだ。それも美声をもつ少女の声が。まだ足りぬ。邪魔をするな!」
イービルは手を前にかざすと黒い霧が集まる。エニスは嫌な予感がした。
「みんな逃げろ!!!!」
言い終わらないうちに黒い霧は塊となり飛んできた。
「任せろ!」とチュラーは炎の壁を作り出した。
「嫌な予感がしてな。予め詠唱しておいた」
炎の壁は黒い霧を弾き宙に散った。
パーンという乾いた音が鳴り、弾がイールビを掠める。
ジースーが首をかしげ。
「おかしいなー。ちゃんと狙ってるのにズレるんだ」
イールビが笑う。
「馬鹿め。そんな弾なんぞ私には当たらんよ。ムヒコーウェル様に守られておるのだ。そろそろ邪魔者は死んでもらおう」
「そうはさせん!」とセイクが切り込む。横からロッロが体当たりで剣筋をずらした。
「さあ、終わりだ」イールビが手をかざす。
「チュラー!はよ詠唱!」ポッツが急かす。
「ダメだ間に合わない!」
「俺が時間を稼ぐ!」とエニスも飛び込むも、またもやロッロの体当たりでよろめいた。
「こんな時にあの力があれば…」
願いも虚しくイールビの黒い霧はエニス達を襲った。
「分かるか?これが妻の受けた苦しみだ」
「わぁぁぁあ!熱い!」焼けるような苦しみの中、意識が遠のく…







「情けないのぉ。これで終わりかえ?」
インインだった。これは夢なのか。
「これじゃぁつまらぬ。一回だけじゃぞ」





闇に包まれた。
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