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龍神ダムの決戦
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「3・2・1キュー!」
「皆様こんにちは」と轟キャスターは前置きする。
「日曜討論特別企画。龍神ダムの真相を暴くべく、ここ龍神ダムへやって参りました!」
氷室にパンされる。
「今日という今日はね。インチキ霊媒師の戯言を一蹴して科学こそ至高のものだと解らせてやりますわい」
染夢子にパン。
「恐ろしや恐ろしや。そんなこと言ってバチが当たらなきゃいいがね。なんまんだぶ、なんまんだぶ」と手を合わせブツブツ呟いた。
と、早速スタッフの一人が肩が重いと言い出した。
染夢子はすかさず駆け寄る。
「これは霊障だね。遊び半分で来るからこうなるんだ。臨兵闘者…」
九字を切り活を入れるとスタッフは軽くなったのか「先生ありがとうございます」と、安堵の表情を浮かべた。
じっと訝しげに見ていた氷室は説明する。
「これはねー、自己暗示の一種ですな。この方は共感覚が強い。だから体のちょっとした異変を無意識で増幅し『重い』と感じておるのだ。そこに婆さんの九字切り。よく目にする祓いの方法ですな。そしてこのスタッフさんは婆さんの事を『先生』と呼んでおった。どちらかと言うと婆さんの霊能力を信じておるんじゃろ。だから九字切りが効いたんです。無論、九字切りではなくとも何でも効いたはずだ」
染夢子はやれやれと九字切りで浪費した体を持ち上げる。
「確かにね、そういう祓いもあるさ。でもそれの何が悪いのかわからんね。苦しみから開放される、そこに何の悪があるのさね。人々はなぜ神棚に手を合わせる。仏壇に手を合わせる。それが心の平穏を保つからじゃないのかね」
氷室もすかさず反論した。
「そんなものに頼っているから弱くなるんだ。自分こそ真理、この世の化学現象こそ全て。もっと自分に自信を持つべきでは無いのかね!………婆さん、どうした」
染夢子の顔から表情が消えた。
「ほら、あんたが騒ぐから………来ちまったようだよ…」
「わしを脅かそうったってそうはいかんぞ、幽霊なんぞ……」
氷室は言いかけたが背中に違和感を感じた。鳥肌の経つような感覚を覚えたがここまで言っておいて引き下がれない。
「お、おらんのじゃ、そんなもん、わ、わしは信じん…」
腰が抜けて動けない氷室を染夢子は押し退けた。
「あんたが…龍神様…」
『ほう、我が見えるとな。何やら騒がしいのでな、様子を見に来た』
龍神と呼ばれた男は長い白髪を風に靡かせ目を細めた。
正直、染夢子も恐ろしくて逃げ出したい気持ちもあった。だがここには番組スタッフが大勢いる。ここで話がわかるのは自分しかいないという思いに突き動かされる。無論スタッフは何も見えていないので染夢子が何も無い所に向かって話している光景が見えているだけだ。ディレクターは「はっ」と我に返りカメラに「早く回せ」と指示する。
『人間風情が…』と龍神はキッとカメラを睨んだ。
カメラマンは「おかしいな…」とカメラをチェックする。
「おかしいな、じゃないんだよ。仕事しろ仕事!」
「いや、でも、急に電源が入らくなったんですよ」
「ちゃんと事前にメンテナンスしとかないからだろうが、あーもう」
「静かに!!」
染夢子はスタッフを諌めた。スタッフも何かただ事では無い雰囲気に飲み込まれた。
「龍神様、本当にご迷惑をお掛けしました。まさか本当においでになるとは思いませんでしたので。我々はこのまま退散致しますので…」
染夢子はスタッフに「帰るよ!」促し退散しかけた。
『待て』
染夢子は金縛りにあったかのように固まる。
龍神は染夢子の中を見据える。
『お主何を飼っておる。いや、飼われておるのか』
染夢子の汗が止まらない。
「こ、これはですな…うっ」
染夢子は胸を抑え倒れ込んだ。
「婆さん!」と氷室は駆け寄り背中を擦った。
荒い息がなかなか治まらない。何がそうさせたのか氷室は考える。婆さんは何も無い所に向かって話しかけていた。初めは何かの演技かと思った。だが説明のつかない威圧感と合わせると何かがそこにあると判断せざるを得なかった。
氷室は立ち上がる、その空間目掛けて怒鳴り、石や枝、その辺にあるものを投げた。
「何があるんじゃ!婆さんをこんなんにしおって!出てこい!出てこんかい!」
チリン…
鈴の音。これはどこかで…
『おじいさん、やめてあげて』
氷室の後ろから声がする。少女の声の様ではあるが後ろを振り向いてはいけない。そんな気がした。氷室は何故か理解できた。『鏡いなり』
氷室はその場にへたりこんだ。
龍神と呼ばれた男は染夢子に近寄る。鈴の持ち主もヒョイっと染夢子を覗き込み確認をした。
『ねえ、みずっち、このおばあちゃん…やっぱりそうだよね。初めて会った時から思ってたんだ。そしてここに来るってね』
『あかず、下がっていなさい』
龍神が何故『みずっち』と呼ばれているのかと言われれば、それは本当の名を蛟龍大明神。蛟が神となった名前である。それを鏡いなりが付けた渾名である。そして『あかず』とは昔むかしその霊力から恐れられた梓巫女あかずのこと。鏡いなりはあかずの生まれ変わりであった。
龍神が染夢子に近づいた時だった。
「皆様こんにちは」と轟キャスターは前置きする。
「日曜討論特別企画。龍神ダムの真相を暴くべく、ここ龍神ダムへやって参りました!」
氷室にパンされる。
「今日という今日はね。インチキ霊媒師の戯言を一蹴して科学こそ至高のものだと解らせてやりますわい」
染夢子にパン。
「恐ろしや恐ろしや。そんなこと言ってバチが当たらなきゃいいがね。なんまんだぶ、なんまんだぶ」と手を合わせブツブツ呟いた。
と、早速スタッフの一人が肩が重いと言い出した。
染夢子はすかさず駆け寄る。
「これは霊障だね。遊び半分で来るからこうなるんだ。臨兵闘者…」
九字を切り活を入れるとスタッフは軽くなったのか「先生ありがとうございます」と、安堵の表情を浮かべた。
じっと訝しげに見ていた氷室は説明する。
「これはねー、自己暗示の一種ですな。この方は共感覚が強い。だから体のちょっとした異変を無意識で増幅し『重い』と感じておるのだ。そこに婆さんの九字切り。よく目にする祓いの方法ですな。そしてこのスタッフさんは婆さんの事を『先生』と呼んでおった。どちらかと言うと婆さんの霊能力を信じておるんじゃろ。だから九字切りが効いたんです。無論、九字切りではなくとも何でも効いたはずだ」
染夢子はやれやれと九字切りで浪費した体を持ち上げる。
「確かにね、そういう祓いもあるさ。でもそれの何が悪いのかわからんね。苦しみから開放される、そこに何の悪があるのさね。人々はなぜ神棚に手を合わせる。仏壇に手を合わせる。それが心の平穏を保つからじゃないのかね」
氷室もすかさず反論した。
「そんなものに頼っているから弱くなるんだ。自分こそ真理、この世の化学現象こそ全て。もっと自分に自信を持つべきでは無いのかね!………婆さん、どうした」
染夢子の顔から表情が消えた。
「ほら、あんたが騒ぐから………来ちまったようだよ…」
「わしを脅かそうったってそうはいかんぞ、幽霊なんぞ……」
氷室は言いかけたが背中に違和感を感じた。鳥肌の経つような感覚を覚えたがここまで言っておいて引き下がれない。
「お、おらんのじゃ、そんなもん、わ、わしは信じん…」
腰が抜けて動けない氷室を染夢子は押し退けた。
「あんたが…龍神様…」
『ほう、我が見えるとな。何やら騒がしいのでな、様子を見に来た』
龍神と呼ばれた男は長い白髪を風に靡かせ目を細めた。
正直、染夢子も恐ろしくて逃げ出したい気持ちもあった。だがここには番組スタッフが大勢いる。ここで話がわかるのは自分しかいないという思いに突き動かされる。無論スタッフは何も見えていないので染夢子が何も無い所に向かって話している光景が見えているだけだ。ディレクターは「はっ」と我に返りカメラに「早く回せ」と指示する。
『人間風情が…』と龍神はキッとカメラを睨んだ。
カメラマンは「おかしいな…」とカメラをチェックする。
「おかしいな、じゃないんだよ。仕事しろ仕事!」
「いや、でも、急に電源が入らくなったんですよ」
「ちゃんと事前にメンテナンスしとかないからだろうが、あーもう」
「静かに!!」
染夢子はスタッフを諌めた。スタッフも何かただ事では無い雰囲気に飲み込まれた。
「龍神様、本当にご迷惑をお掛けしました。まさか本当においでになるとは思いませんでしたので。我々はこのまま退散致しますので…」
染夢子はスタッフに「帰るよ!」促し退散しかけた。
『待て』
染夢子は金縛りにあったかのように固まる。
龍神は染夢子の中を見据える。
『お主何を飼っておる。いや、飼われておるのか』
染夢子の汗が止まらない。
「こ、これはですな…うっ」
染夢子は胸を抑え倒れ込んだ。
「婆さん!」と氷室は駆け寄り背中を擦った。
荒い息がなかなか治まらない。何がそうさせたのか氷室は考える。婆さんは何も無い所に向かって話しかけていた。初めは何かの演技かと思った。だが説明のつかない威圧感と合わせると何かがそこにあると判断せざるを得なかった。
氷室は立ち上がる、その空間目掛けて怒鳴り、石や枝、その辺にあるものを投げた。
「何があるんじゃ!婆さんをこんなんにしおって!出てこい!出てこんかい!」
チリン…
鈴の音。これはどこかで…
『おじいさん、やめてあげて』
氷室の後ろから声がする。少女の声の様ではあるが後ろを振り向いてはいけない。そんな気がした。氷室は何故か理解できた。『鏡いなり』
氷室はその場にへたりこんだ。
龍神と呼ばれた男は染夢子に近寄る。鈴の持ち主もヒョイっと染夢子を覗き込み確認をした。
『ねえ、みずっち、このおばあちゃん…やっぱりそうだよね。初めて会った時から思ってたんだ。そしてここに来るってね』
『あかず、下がっていなさい』
龍神が何故『みずっち』と呼ばれているのかと言われれば、それは本当の名を蛟龍大明神。蛟が神となった名前である。それを鏡いなりが付けた渾名である。そして『あかず』とは昔むかしその霊力から恐れられた梓巫女あかずのこと。鏡いなりはあかずの生まれ変わりであった。
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