〜close friend〜 《mamaによるanythingスピンオフ作品》

むひ

文字の大きさ
6 / 21

六話

しおりを挟む
 オーカマバレーへ行くには船着場の方角へ戻らなければならなかった。

多少回復したイールビだったが、歩き続けるのは困難で、ロッロは犬の姿になり背に乗せた。

船着場を横目に進むと、桟橋に小さな漁船が着いていたのが見えた。

「あ…!!!船!船だよ!あれに乗せてもらえば、帰れるんじゃないの!」

タバスが笑顔で言い、おーいおーいと漁船に向かって手を振った。

《あの大きさでは人の姿になっても私は乗れません…どうかイールビ様だけでも》

「お前な。俺一人帰ってもこの状態が回復するとは思えねーんだけど。てか俺から離れんな」

《あ…はい…》

タバスはひとりで桟橋まで駆けて行き、人影になにやら話をしていた。
イールビ達も近づくと、その顔に見覚えがあり、イールビはロッロの背から降りた。

「アッキ!アッキじゃないか!」

「へ?!あ!イールビ!」

「どうしたんだこんな所で」

「それはこっちのセリフだ。俺は今、各地で魚を捕って売りさばいてる商売をしてるんだ。今日はたまたまここに来てたってワケだが…なんだ?この赤いかわい子ちゃんも連れなのか?イールビは会う度いつも違う女の子を連れているなぁ…」

《えっ…》

ロッロが軽くショックを受けた声を出すので、肘で小突いて、
「人聞きのワリー事言うなよ」と笑いながら小声で「冗談に決まってんだろ。何マジにしてんだ」と言っておいた。
昔は、まぁ、そーゆー事も、あったがな。
と、心の中で呟いてから。

「そう。連れ…というか、さっきそこで拾った迷子だ。行く先ねーんだと。スーザンヌのトコで見てやれないかな」

「へぇ。こんな可愛い子落ちてるの。イマドキはすごいね…。うん、いいんだけどさ、ちょうどイヤザザ地区に向かう予定だったし。でもその、お前と後ろの…でっかいの、は連れてけないよ?見ての通り、船はこんなんだ。人間後一人が限界」

アッキはニシシっと笑いながら青い短髪をくしゃくしゃっと撫でた。
イールビとは幼馴染で、小さい頃は2人でよく連んでイタズラをする仲だった。大人になっても…だが。
ここ最近はどうしていたのか、イールビも気落ちして誰にも会わないでいたのでまさかこんな商売を初めていたなどとは知らなかった。

《……タバスちゃんの様子が変です》

ロッロに言われてイールビがタバスを見やると、タバスはポーっとアッキに見とれているようだった。

「おい、タバス。ボーッとしとらんでちゃんと挨拶せんかい」

「…あ!!タバスです…!辛い物と赤い物が好きです…!よ、よろしく…」

タバスはロッロやイールビと出会った時とは大違いで、少し照れくさそうにアッキに挨拶をする。

「ん~!かわいいね!俺はアッキ。よろしくね」

アッキはそんな様子も気に入ったようで顔が緩んでいるのがわかる。

「とゆーわけで。タバス。ここでお別れだ」

2人の様子に飽き飽きしたイールビが冷たく言う。

「え?!どーゆーこと?!乗るのはイールビおじちゃんだけでしょ?!」

「俺はいい。友人に会ってから4日後の船でロッロと帰る。タバス、お前だけでも先に行け。アッキにスーザンヌの所へ連れてってもらうんだ。お前みたいなやつがたくさんいる所だ」

「どこか怪我してるって言ってなかった?」

「大丈夫だ。それを治してもらいに行く」

「そっか…わかったよ。…ママ!」

タバスに呼ばれてロッロはタバスを見つめる。

「イールビおじちゃんと仲良くね」

《わかったよ》

と心の声がイールビには聞こえたが、2人には「ワン!」としか聞こえなかっただろう。

「じゃ、アッキ。頼んだ。手ぇ出すなよ。まだ子供だぞ」

「おいおい~。かわいいけど俺がチキンなの知ってるだろ~。大丈夫だってぇ」

アッキはまたニシシっと笑って、出航の準備をいそいそと始めた。
準備が整い、タバスとアッキを乗せた船が出る。
タバスが見えなくなるまでこちらに手を振って何かを叫んでいた。

「さて。行くか」

《はい。大丈夫ですか、体調は》

「あんまりよくねぇ」

アッキとタバスの手前、無理して元気そうに振舞っていたのがロッロにはわかっていた。
2人が船に乗ったあたりからイールビの顔色が悪い。

《急ぎましょう。お乗りください》
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※AIイラスト使用 ※「なろう」にも重複投稿しています。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...