〜close friend〜 《mamaによるanythingスピンオフ作品》

むひ

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十話

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 森を抜けるかというところで見覚えのある赤髪が見えた。

「タバスちゃん…?」

ロッロが気がついて声をかけるが、タバスは何か歌を歌っているようでこちらに気がつかなかった。

「タバスちゃん、歌、すごく上手い…」

と近づくロッロをイールビが制した。

「待て。もう1人いる」

「え?」

タバスの歌を追うように男性の歌声が重なったのがわかった。

「この声は…」

「アッキだ」

聞き覚えのある声だった。
タバスを託した漁師のアッキだった。
アッキの力強い歌声をタバスがトーンを合わせてハモるなどして精度の高い洗練された歌声が響いた。

「わぁ…ふたりの歌、とっても素敵…」

「……」

イールビはイライラした様子を隠さなかった。

「イールビ様?」

「俺は聴きたくねぇ。アッキの野郎、スーザンヌとしか歌わねぇと言っておきながらこれだ。信じられん」

「え?スーザンヌさん?」

イールビは舌打ちをして早口で、

「お前スーザンヌ知ってんのか。アッキとスーザンヌは元々は一緒にバーで歌ってたんだ。恋人なんじゃねーかと思うくらいいい雰囲気でな。お互いがお互いとしか歌いたくねぇって言ってて、俺も応援してた。アッキは女癖が良いとは言えずフラフラとすぐ目移りしがちなヤツだったが、そこまで言うなんて珍しいと思ってな。だが2人ともいつの間にか歌うのはやめちまった。歌わなくても心はひとつだと思っていたんだがな。これだわ。俺の思い違いだったか」

と、ロッロに説明した。
ロッロは複雑な心境になった。
スーザンヌとロッロはスーザンヌが修道院で孤児の面倒を見始めた時からの友人であった。
元々物心つくまで孤児院でジースーと共に大きくなったロッロはスーザンヌと出会う以前の話は聞いておらず、バーで歌っていた事は知らなかったが、歌が上手いのは知っていた。子供達に歌って聴かせているのを何度か聴いた事があったからだった。
行き場が無く森を迷う孤児を見つけてはスーザンヌの所まで送り届けた事もあった。

アッキとスーザンヌはそう言う関係だったのか…と、思う一方で、タバスが初めてアッキを見ていた時の表情を思い出す。そして今楽しそうに歌う姿も。昔を良く知るイールビだからこそ、その姿は気に入らないのだろう。

「まずはアイツの声を奪ってやろーかいな」

と、冷たく言い放った。

「アイツって…タバスちゃん?!」

「そーだ。アッキも反省するだろ?俺のせいでヤツの声が消えたってな」

「や…やめて、やめてください」

「ロッロ」

弱々しく抗議の声をあげるロッロをイールビが冷たく制する。

「お前これからイヤザザの街に行ってお前の顔馴染みの声を奪おうってのに、タバスはダメなのか?それともこの先もアイツはダメ、コイツならいいって言うのか?そんなんなら着いてくるな。俺1人でやる」

「あ………。わ、わかり、ました…。いえ、…着いて、いき、ます」

「ふん」

悪事の為とはいえ、イールビと一緒に歌うのがとても楽しかったロッロは首にぶら下げた巻貝に入った2人の歌声を宝物のように感じており、それで満足していた。
イールビに冷たく言われ、これから自分のする事にようやく向き合ったのだった。
一時的、フリだけ、だとわかっていても、あんな素敵な歌声を奪うなんて、と若干怖気付いた様子を見せたロッロだったが、目をギュッと瞑り、少ししてゆっくりと開くとそこには魔族らしい冷たい表情が浮かんでいた。覚悟を決めたのだ。

「良い顔だ。やれ、ロッロ」

ごめんね。タバスちゃん…。

そう思いながら歌声の巻貝に魔力を込める。

楽しげな歌声が響いて、アッキとタバスの耳に届いたようだった。
聴いた人が歌いたくなるよう魔力を込めて空けたパートが来るとイールビは封印の巻貝に魔力を込め歌声を待った。

「さあ、歌え」

しかし歌ったのはタバスではなくアッキだった。

「「えっ」」

アッキの歌声が封印の巻貝に納まる。
アッキは続きを歌えども声が出なくなった。
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