〜close friend〜 《mamaによるanythingスピンオフ作品》

むひ

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九話

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 「さて。ムヒコーウェル姐さんに約束した以上は守らないとな」

「は、はい…神力を、集めるのですか…」

一服終えたイールビが立ち上がって言った言葉にぴくっとロッロの耳が震えた。
その様子に気がついたイールビは安心させるようにいつもより優しい声でなだめる。

「気は乗らねぇが、フリだけでもしねーとな。せっかく貰った力も奪われかねんだろー。ま、あわよくば何か作ってもらえそうだし?どうするかな」

ワザと深刻げに話さない様子を見てロッロも少し安心して話に乗ってくる。

「神力は美しい歌声に含まれている、とか…」

「だな。あー。お前さ、船でもタバスとも歌っていたあのアイドルの歌みたいなヤツは何なんだ、流行ってるのか」

「あれは、小さな女の子に人気の歌なのですよ。身近に小さな子がいる機会があって覚えていて」

「それだ。それに魔力を込める。俺とお前で魔力を込めて歌ってひとパートあけておくんだ。釣られてそこを歌った歌声を頂戴する」

突然の発案に目を丸くしたロッロは抗議の声を出す。

「えええー。そんな事…」

その様子にバカか、とピシャリ遮って、

「子供の歌で女の歌という事は歌う奴の神力が最も高いだろう。1番手っ取り早く、血を見ないやり方だと思うが。殺して奪うなんて面倒くせーしグロいのは苦手だわ。何なら期限付きでもいい。数年その魔法陣に歌声を閉じ込める事もできるし別の場所に封印しておいて封印を解除すれば戻る、なんてのも可能だな」

この一瞬でそこまで考えたのか、という驚きと、いずれは戻す前提で声を奪うあくまで“フリ”をする作戦にロッロは少しの沈黙の後、

「イールビ様って、真面目で優しいんですね…」

とイールビに尊敬の眼差しを送ったのだった。

「…お前…。二度と俺に向かって真面目なんですねとか言ってみろ。死なすぞ」

「えぇ…褒めたのに…」

「優しくもねぇ。俺はフィクサーなんだよ。優男は他に求めろい」

「十分お優しいかと…」

「もう黙ってろ。とっととやるぞ。反論は許さん」

「もぅ…はいはい」

「はいは一回!」

「はいっ!!」

イールビとロッロは早速魔力を込めて歌を歌った。
ロッロが良く知る歌なので先導して歌い、イールビはそれに合わせて魔力で女性の声を作り器用に合わせた。
その歌声をロッロがオーカマバレー側の海辺で拾っていた巻貝のひとつに詰めて、魔力を込めると聴かせたい相手に聴こえるよう細工をした。
もうひとつの巻貝には歌声を奪い、封印するよう細工し、歌の巻貝をロッロが、封印の巻貝をイールビが持ち、ひとまずイヤザザ地区の街へと向かったのだった。
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